「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【仁者は必ず勇あり。勇者必ずしも仁有らず】 Vol.338

 

子曰わく、徳有る者は、必ず言あり。言有る者は、必ずしも徳有らず。仁者は必ず勇あり。勇者必ずしも仁有らず。(「憲問第十四」4)

 

  (解説)

孔子の教え。「人格の立派な人物ならば、その言葉はきっと優れている。しかし、いいことを言う者は、必ずしも人格は立派ではない。人格者は、必ず勇気がある。しかし、勇敢な者は、必ずしも人格者ではない」。論語 加地伸行

 

 「樊遅」勇士として称せられるという。 が、「小人なるかな、樊須(樊遅)や」と孔子はいう。その樊遅は、孔子によく「仁」を尋ねている。

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 孔門十哲が「先進第十一」3に登場する。

 徳行には、顔淵、閔子騫冉伯牛、仲弓あり。言語には、宰我、子貢あり、という。 

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 必要十分条件を兼ね備えることは、そうは簡単なことではないということであろうか。

 

 

 

 孔子は、「知者は惑わず、仁者は憂えず、勇者は懼れず」という。

そして、それがまだ十分にできていないともいう。(「憲問第十四」28)

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  学究、それに打ち込むということであろうか。

「芸」、その修練を通して身につけた技能や技術、わざ、学問ということであろうか。

 芸は身を助けるという。そして、その芸に遊ぶ、楽しむことができるということであろうか。

 

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「関連文書」

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 (参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

 
論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫
 

 

【邦に道無ければ、行ないを危くも言は孫う】 Vol.337

 

子曰わく、邦に道有れば、言を危(みが)き行ないを危(みが)く。邦に道無ければ、行ないを危くも言は孫(したが)う。(「憲問第十四」3)

 

  (解説)

孔子の教え。「道理を用いて政治がなされているときは、正しい主張を、正しい実践を。もし道理を用いて政治が為されていないときは、正しい実践はするものの、主張は抑えておくのがいい」。論語 加地伸行

 

 「危」とは、「厲(れい)」研ぐ、磨くとの意

 

 「当面の難を避けて順っておけ」というのがこの章の主張であると加地は解説する。

 

「公冶長第五」21に登場した「甯武士(ねいぶし)」の面持ちということであろうか。 

 「邦に道有れば、則ち知、邦に道無ければ、則ち愚。」

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 コロナの感染が拡大し、緊急事態宣言が発出された。

 「邦に道無ければ、行ないを危くも言は孫う」。

 政の問題もありそうだが、文句をたらたら述べるよりは「当面の難を避けて順っておけ」、緊急事態宣言に従ったほうが良いということであろう。 

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「関連文書」

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 (参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

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論語 (ちくま文庫)

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  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫
 

 

【士たるに居を懐えば、以て士と為すに足らず】 Vol.336

 

子曰わく、士たるに居を懐(おも)えば、以て士と為すに足らず。(「憲問第十四」2)

 

  (解説)

孔子の教え。「職務に精励すべきであるのに、己の生活の安楽を思うような者は、できる士とするに足らない」。論語 加地伸行

 

 

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 (参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

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  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫
 

 

【邦に道無くして穀するは、恥なり】 Vol.335

 

憲(けん) 恥を問う。子曰わく、邦に道有れば穀(こく)す。邦に道無くして穀するは、恥なり。

克(こく)、伐(ばつ)、怨(えん)、欲 行なわれざる、以て仁と為す可きか、と。子曰わく、以て難しと為す可し。仁は則(すなわ)ち吾知らざるなり、と。(「憲問第十四」1)

 

  (解説)

原憲が恥とは何でしょうかと質問した。孔子は、こう答えた。「邦に道義に基づいた政治が行われているとき、出仕するのがいい。しかし、道義なき政治で乱れているのに仕えているのが、恥である」

「勝ちたがり、自慢する、恨む、欲深、こういうことをしなければ、人の道を踏んだことになりますでしょうか」。孔子「難しい。それで「仁」人の道を踏んだことになるのかな」。論語 加地伸行

 

 「原憲」、姓は原、名は憲、字名が子思。魯の国の人で、孔子の弟子。孔子の知行地の宰になった人物。この原憲は貧しい学究で、孔子の死後、衛の宰相となった子貢が美々しく威儀をととのえて、陋屋の原憲をたずね、かえって辱しめられたという伝説があるという。

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 そんな原憲との問答でも、「仁」について語られる。

「克、伐、怨、欲 行なわれざる、以て仁と為す可きか」

 

 

 孔子は原憲の生活の不如意をよく知っていたという。それが「難しい」という言葉になったのだろうか。

「邦に道有りて、貧にして且つ賤(いや)しきは、恥なり」(「泰伯第八」13)

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 コロナで混乱する社会にあって、やはり経済を優先させることに無理があるのだろうか。まずは、「人心」「民心」の安定が何より先決なのかもしれない。 

 

 (参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

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論語 (ちくま文庫)

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  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
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【教えざる民を以て戦うは、是 之を棄つと謂う】 Vol.334

 

子曰わく、教えざる民を以て戦うは、是(これ)之を棄(す)つと謂う。(「子路第十三」30)

 

  (解説)

孔子の教え。「軍事を教えない民を用いて戦争するのは、民を棄てるというものである」。論語 加地伸行

  

 孔子は、慎む所は「斎」「戦」「疾」という(「述而第七」12)。 

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「戦」、「教えざる民を以て戦うは、是 之を棄つと謂う」

 

「疾」、疾病、このコロナの時代は慎むのときなのかもしれない。

 きちんと対処しないことは、武器を持たずに戦いに挑んでいることなのかもしれない。勝てるはずもなく、ただ無駄に命を棄てていることなのかもしれない。

 

 (参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

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  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫
 

 

【善人も民を教うること七年ならば、亦以て戎に即かしむ可し】 Vol.333

 

子曰わく、善人も民を教うること七年ならば、亦(また)以て戎(じゅう)に即(つ)かしむ可し。(「子路第十三」29)

 

  (解説)

孔子の教え。「善人でも人々を教えて七年も経てば、人々を兵役に従事させることができる」。論語 加地伸行

 

子路第十三」11では、「善人 邦を為(おさ)むること百年ならば、亦以て残(ざん)に勝ちて殺を去る可し」と、言っていた。 

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「善人」、「先進第十一」19で、子張が「善人の道」を問い、これに対し、孔子は、「迹(あと)を践(ふ)まず、亦(また)室(しつ)に入らず」と答える。

 

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 「善人」は君子に次ぐ人材であるが、正式な学習は少なく知識は乏しいと加地は解説し、道徳的な人だが、知識は我流という。

 

 善人の徳で感化はあっても、それには長い時間を要するということであろうか。

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 (参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

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  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
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【朋友には切切偲偲、兄弟には怡怡たれ】 Vol.332

 

子路(しろ)問うて曰わく、何如ぞ斯(すなわ)ち之を士と謂う可き、と。子曰わく、切切偲偲(せつせつしし)、怡怡如(いいじょ)たる、士と謂う可し。朋友(ほうゆう)には切切偲偲、兄弟には怡怡たれ、と。(「子路第十三」28)

 

  (解説)

子路が質問した。「どういうのをできる士と言うのでしょうか」と。孔子はこう答えた。「懇々と心をこめること、にこやかであること、これがそろえば、できる士だ。友人には懇々と心をこめてつきあい、兄弟にはにこやかであることだ」と。論語 加地伸行

 

子路第十三」20で、子貢が「士」について同じ質問したが、孔子の答える内容は異なる。

「己を行なうに恥ずる有り。四方に使いして、君命を辱(はずかし)めず。士と謂う可し」と。

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 子貢と子路の性格を踏まえてのアドバイスということであろうか。対比するとおもしろい。 

 由(子路)は果断。賜(子貢)は達、物事の道理に明るいこと

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子路」、本名は仲由、子路は字名。顔回(顔淵)とともに「論語」の二大脇役と桑原はいう。子路は晩年、衛の国に仕えるが、内乱に巻き込まれ殺される。  

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 「士」、曾子は、「士は以て弘毅ならざる可からず。任 重くして道 遠ければなり。仁 以て己が任と為す」(「泰伯第八」7)という。 

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「弘毅」とは、大らかで強い意志を持つこと。士の任務は、仁の達成とする。

 

 徳川家康は、この章をふまえて遺訓を遺したと桑原はいう。

「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし、急ぐべからず.....」

 家康も「仁」の達成を己の任務としていたのだろうか。 

 

 (参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

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論語 (ちくま文庫)

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  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
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