「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【直きを挙げて諸を枉れるに錯けば、能く枉れる者をして直から使む】 Vol.303

 

樊遅(はんち)仁を問う。子曰わく、人を愛す、と。知を問う。子曰わく、人を知る。樊遅未だ達せず。子曰わく、直(なお)きを挙げて諸(これ)を枉 (まが)れるに錯(お)けば、能(よ)く枉れる者をして直から使(し)む、と。

樊遅退き、子夏(しか)を見て曰わく、郷(さき)に吾 夫子(ふうし)に見(まみ)えて知を問うや、子 直きを挙げて諸れを枉(おう)に錯けば、能く枉者(おうしゃ)をして直から使むと曰えり。何の謂いぞや、と。

子夏曰わく、富めるかな言や。舜(しゅん)の天下を有(たも)つや、衆より選びてで皐陶(こうよう)を挙げ、不仁者(ふじんしゃ)は遠ざかる。湯(とう)の天下を有つや、衆より選びて伊尹(いいん)を挙げ、不仁者遠ざかる、と(「顔淵第十二」22)

 

 

 

  (解説)

樊遅が仁とは何でしょうと孔子に質問した。孔子は「他者を愛することだ」と答えた。知とは何でしょうかと質問した。孔子は「人間を知ることだ」と答えた。樊遅はよく理解できなかった。すると孔子は「まっすぐな者を任用し、曲った者の上に置けば、曲った状態を真直ぐにすることができる」と答えた。

孔子の前を退いてから子夏と会ってこう言った。「先ほど私は孔子にお会いして、知についてお尋ねしたところ、直きを挙げて諸を枉れるに錯けば、能く枉れる者をして直から使むとお答えになられた。これはどういう意味でしょうか」と。

子夏はこう述べた。「それは素晴らしいお言葉だな。舜が天子となられたとき、多くの臣下の中から皐陶を抜擢して任用されたので、人格者でない者は遠ざかってしまった。湯が天子となられたときも、多くの臣下の中から伊尹を抜擢して任用されたので、人格者でない者は遠ざかってしまったではないか」と論語 加地伸行) 

   

 哀公に「どのようにすれば、人民は心服するであろうか」と質問された孔子はこの章のことばで答えていた(「為政第二」19)。

「直きを挙げて諸を枉れるに錯けば、則ち民服す」と。

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 「樊遅」、姓は樊、名は須、字名は子遅。孔子の弟子。孔子より36歳年少。「季孫氏」に仕えたといわれる。同じく孔子の弟子の冉求の供として戦車に同乗し、勇敢に敵軍に攻め込む、勇士と称せられたという。

 しかし、「論語」ではいつも勘の悪い質問をして、孔子に「小人なるかな、樊須」(「子路第十三」4)と言われたりしていると桑原は指摘する。

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「関連文書」

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(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

 
論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫