「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【事を先にして得ることを後にするは、徳を崇くするに非ずや】 Vol.302

 

樊遅(はんち)従いて舞雩(ぶう)の下に遊ぶ。曰わく、敢えて問う、徳を崇(たか)くし慝(とく)を脩(おさ)め惑いを弁ぜんことを、と。

子曰わく、善いかな問いや。事を先にして得ることを後にするは、徳を崇くするに非(あら)ずや。其の悪を攻(せ)めて人の悪を攻むること無きは、慝を脩むるに非ずや。一朝(いっちょう)の忿(いか)りに其の身を忘れて、以て其の親に及ぼすは、惑えるに非ずや、と。(「顔淵第十二」21)

 

  (解説)

樊遅が孔子に従って舞雩壇附近へ遊覧に出かけたときのことである。樊遅が質問した。「この際、おたずねしますが、どのようにしますと、私めの人格を高め、心の中の悪を正しく、迷いを分別することができましょうか」と。

孔子は言った。「なかなかいい質問だ。まず実行、その酬いは後、これが人格を高めることではなかろうか。己の悪は責め、他人の悪を咎めない。これが心中の悪を正しくすることではないであろうか。嚇(か)っとなって怒り、我を忘れて争い禍いが親にまで及ぶ。これが迷いではないであろうか」と。論語 加地伸行)  

 

 「慝」とは心の中に匿(かく)れているもの。 

 

子張も、「顔淵第十二」10で、「徳を崇くし惑いを弁つ」と質問している。

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 「雍也第六」22で、「仁」を問うた「樊遅」に、「難きを先にし獲るを後にす」と孔子は答えていた。 

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 「樊遅」、姓は樊、名は須、字名は子遅。孔子の弟子。孔子より36歳年少。「季孫氏」に仕えたといわれる。同じく孔子の弟子の冉求の供として戦車に同乗し、勇敢に敵軍に攻め込む、勇士と称せられたという。しかし、「論語」ではいつも勘の悪い質問をして、孔子に「小人なるかな、樊須」(「子路第十三」4)と言われたりしていると桑原は指摘する。 

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 「為政第二」5では、「樊遅」は孔子の馬車の御者をつとめ、孔子と会話をする。「孟孫 孝を我に問う。我対(こた)えて曰わく、違うこと無かれ」と話す孔子に、樊遅は、「何の謂いぞや」と質問する。 

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(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

 
論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫