パワハラ、おねだり疑惑の斎藤前知事が当選した兵庫県知事選の余韻が続いています。様々な報道がなされています。それだけ大きな衝撃だったということなのでしょうか。国政、国会議員たちにも少なからず影響があるようです。
兵庫県知事選のSNS影響に与野党が危機感「党全体でネット対策を」「既得権益への嫌悪」 - 産経ニュース
「民主主義の根幹として表現の自由がある中、有権者に多様な情報の中から自らの意思に基づき判断をしていただくことが重要だ」、政府 林官房長官もそう述べる事態です。
この選挙で示された民意を読み解き分析し、危機感をもって、国政に活かす努力があるといいのかもしれません。そうすればこの国の苦境ももう少し改善が進みそうです。
「これは『旧態依然』『既得権益』に対する嫌悪や、それに剝奪されてきたと感じる人たちがあげる狼煙なのではないか」と国民民主の伊藤参院議員は感想を述べています。
知事選で当初優勢とみられながら落選した元尼崎市長の稲村氏は、「どのような情報に基づき投票行動を決めるのか、課題が残った選挙戦だった」と述べ、「何が争点だったのか。斎藤候補と争ったというより何と向き合っているのか違和感があった」と語ったといいます。 稲村氏は自民党の一部県議の支援や県内の首長との連携を深め支持固めを図って、序盤リードしていたそうですが、SNSなど幅広く支持を集めた斎藤氏の猛追をかわしきれなかったそうです。
兵庫県知事に斎藤元彦氏、不信任覆し異例の逆転 「前に進める」 - 日本経済新聞
『旧態依然』『既得権益』に対する拒絶のようなものを感じます。この傾向はトランプ氏が当選した米国大統領選挙でも指摘されたことです。
利己主義の美徳
「自分自身の幸福を人生の目的として、生産的な成果を最も崇高な活動とし、理性を唯一の絶対的なものとする英雄的な存在としての人間を理想とする」思想があるといいます。帝政ロシアに生まれ育ったアイン・ランドによるもので、個人の権利を最大限尊重する自由な資本主義が理想的な唯一の社会体制との主張です。
イーロン・マスクとスティーブ・ジョブズが読んだ「危険な思想書」:日経ビジネス電子版
米国の政治思想の潮流を理解するには、ランドの思想が助けになるといいます。第一次トランプ政権の幹部はこの思想を信奉していたといわれ、自由主義的な立場から資本主義を正当化したい保守派の政治家がランドの思想に共感するようになっているそうです。今回の大統領選トランプ氏を熱烈に支援したイーロン・マスク氏もこの影響を受けているのではないかといわれます。
ランドの思想の特徴のひとつとして、利他主義の否定があるといいます。「人は自分自身のために存在する」「自分自身の幸福を追究することが、人にとって最高の道徳的目的である」「自分を他人の犠牲にしてはならない」との考えをランドはもっていたようです。個人の自由や利益を否定する集団主義、極端な共産主義や全体主義を憎み、利他主義は集団主義の道徳的基盤であり、あらゆる独裁制の道徳的基盤とみなしていたといいます。
論語に学ぶ
博く学びて篤(あつ)く志し、切に問うて近く思う。仁 其の中に在り。(「子張第十九」6)
広く学んで志を篤くする。知らないことを身近な問題として取り上げ、説に問い考える。 「仁」はその中にあるんだなと弟子の子夏はいいました。
ランドの生い立ちがその思想に大きく影響したのでしょうか。ランドが生きた旧ソビエト連邦は共産主義国家で、集団に奉仕することが優先され、思想も統制され、言論の自由など個人の自由も極端に制限されていました。
一方で私たちが住む世界には、古くから「篤志家」という人たちが存在します。「篤志」とは、他人への特別の思いやりなど、志が篤いことで、社会奉仕や慈善事業などを熱心に実行・支援する人たちのことを「篤志家」と呼びます。現代のビジネス界ではビル・ゲイツやウォーレン・バフェットなどが篤志家といわれ、日本でも孫正義さん、柳井正さんらにもそうした一面があるといいます。
日本はどうなのでしょうか。米国と同じようにランド思想の影響があるのでしょうか。いずれにせよ、今回の選挙結果をよくよく分析し、民意を正しく知るべきなのでしょう。もしそこに『旧態依然』『既得権益』に対する嫌悪がほんとうにあるのなら、抜本的に改革していくことが求められそうです。ただそこでは単一思想に走り極端になることなく、子夏の言葉にあるように、「博学篤志、切問近思」の考えがあってもよさそうな気がします。今の日本に求められているのそんな思考なのかもしれません。
「参考文書」
兵庫県知事再選の斎藤元彦氏「民意を受けた」 - 日本経済新聞
SNSの功罪映した兵庫県知事選挙 斎藤元彦氏が「主戦場」制す - 日本経済新聞

