COP26 国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議が始まり、首脳級会合で世界各国のリーダーたちが演説しました。温度差が浮かびあがり、早くも暗雲が漂い始めているといいます。
気候変動対策、漂う暗雲 議長国・英の思惑外れる:時事ドットコム
JIJI.COMによれば、ジョンソン英首相が呼び掛けた石炭火力発電やエンジン車の廃止に呼応する首脳は少なく、議論はやや空回り気味だったそうです。
それでも「これから2週間の詳細な交渉が待っている。まだ長い道のりが続くが、私は慎重ながらも楽観的だ」と述べ、首脳級会合の成果をサッカーの試合に例え「5-1で負けていたのを、この2日間で1点か2点返した」と語ったといいます。
気候危機を目の当たりにしても、なおそれぞれの国がそれぞれの都合で語り、自国の利益に終始しているということなのでしょうか。
君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る
これは、「里仁第四」16 にある言葉で、「万事、利益本位から打算するのが小人の常で、正義の標準に照らし万事を処置するのが、君子の常である」との意味だと渋沢栄一が解説しています。
「同じ一つの事柄に対しても、小人は之によって利せん事を思い、君子は之によって義を行わんことを思い、其間の思想に天地雲泥の差がある」といいます。
しかし、孔子の指摘に反し、目先の「利」に喩るのが必ずしも不利益にならぬ場合があって、むしろ、それが利益になることがあると栄一は指摘します。
議長の責務を全うしようとジョンソン首相が「義」を語っても、総論賛成、各論反対になってしまう理由なのかもしれません。
化石賞受賞は不名誉なことか
そのCOPの場で、また「化石賞」をいただくことになったといいます。
この「化石賞」は、環境NGOのグループ「気候行動ネットワーク(CAN)」が、温暖化対策に消極的とする国をCOPの会期中に毎日選んでいるといいます。2日の「化石賞」にノルウェーと日本、オーストラリアが選ばれたそうです。不名誉なことではないのかもしれませんが、そう名指しされない方がよいのではないでしょうか。
環境団体、岸田演説に反発「ゼロエミッション火力妄信」 化石賞も | 毎日新聞
毎日新聞によれば、「ゼロエミッション(排出ゼロ)化」を前提としつつ、未確立の技術に頼って既存の火力発電を活用し続ける方針を首相が表明したことが受賞の理由だといいます。
CANは「石炭火力の段階的廃止が今回のCOPの優先課題なのに、日本は2030年以降も使い続けようとしている。
さらに岸田首相はアンモニアや水素を使った火力発電を『ゼロエミッション火力』として妄信している」と指摘。
水素などを活用する技術はまだ未熟でコストも高く、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」が掲げる「産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑える」という目標達成を危うくさせると批判した。(出所:毎日新聞)
議長のジョンソン首相の求めに応じずに、自国のことだけを主張したといえば、そういうことなのでしょう。それに加え、いまだ実用化のめどが立たたないことで対策とした根拠に乏しい夢物語では説得力を欠いたのかもしれません。
「忠恕」――論語の精神
世の中がゴタゴタするのは、忠恕の精神が欠けているからだと、栄一はいいます。
曾子曰く、「孔子の道は、忠恕のみ」と、「里仁第四」15 にあります。
「常に衷心に忠恕の精神を絶たず、更に配するに智略を以てさえすれば、世の中の事は総て円滑に進行し、お互いに平和に生活してゆけるものである」といいます。
「忠」とは衷心よりの誠意懇情を尽くし、何事に臨んでも曖昩加減な態度に出でず、曲らずに真つ直ぐな心情になることである。それから「恕」とは平たく謂へば「思いやり」と同じ意味で、事に臨むや先方の境遇――先方の心理状態になつて考えてやる事である。(参考:「実験論語処世談」 渋沢栄一記念財団)
この「忠恕」は、論語にして一貫する精神であると栄一は指摘します。
「対策に全力で取り組み、人類の未来に貢献する」、岸田首相がそう演説したといいます。一見、忠恕の精神にあふれていそうですが、実態が伴わなければ、容易く見透かされてしまうのかもしれません。偽りのリーダーシップと見られてしまったのでしょうか。
論語の教え
「徳孤ならず、必ず鄰(となり)有り」と、「里仁第四」25 にあります。
人格のすぐれている人は、けっして独りではない。必ず人が集まってくるとの意味です。
「利害関係によって民衆は利のあるところへ寄り集って来るもので、徳のある人も決して孤立の位置に立つようなことはない」と栄一はいいます。
「必ず精神的にその徳に共鳴し、その徳を崇敬して慕う人が生じ、隣があるようになると共に物質的にも、またその徳のある人の住んでる処へは、群衆が寄り集まって隣家も多くなるものである」といいます。
必ずしも理想国家ではないのかもしれませんが、米国や中国に人が集まるのはそういうことなのかもしれません。
さて、COP26で演説した岸田首相のもとにはどれだけの人が集まることになるのでしょうか。
「参考文書」