米国によるイランへの先制攻撃から1週間。この1週間で起きたことは、単なる軍事衝突ではありません。「AIが標的を決め、シリコンバレーの思想が戦略を書き換え、国家の規範が消失した」、全く新しいフェーズの戦争です。
1. 「AI主導の斬首作戦」とシリコンバレーの思想
今回の攻撃(2月28日)で最も衝撃的だったのは、イランの最高指導者ハメイニ師を含む政権中枢を瞬時に無力化した「AI主導の斬首作戦」です。
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アンソロピックとパランティア: 報道によれば、AnthropicのAI「Claude」が膨大な通信データを解析して標的を特定し、ピーター・ティール氏率いるPalantirのシステムが攻撃シナリオを策定しました。
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ピーター・ティールの「平和」: ティール氏やパランティアのCEOアレックス・カープ氏は、「強力な軍事力に裏打ちされた抑止力こそが平和を作る」というリアリズムを標榜しています。彼らにとってAIは、曖昧な外交を排し、圧倒的な力で敵を無力化するための「道徳的義務」となっています。
2. トランプ米国の「暴走」と規範の消失
なぜ国際社会はこれを止められなかったのか。そこにはトランプ政権の徹底した「結果至上主義」があります。
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国際法の形骸化: 今回の先制攻撃は国連の承認も国際的な合意も経ていません。トランプ氏は「自国への差し迫った脅威(核開発の再開)」を理由に挙げ、事実上のレジーム・チェンジ(政権交代)へ舵を切りました。
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規範の回復は可能か: 「力こそが正義」という地経学的な論理が支配する中、既存の国際秩序は完全に沈黙しています。これは、かつての「対話と制裁」の時代の終焉を意味しています。
3. 戦争の「家電化」「低コスト化」とドローン戦
かつて戦争は国家の総力を挙げる一大事業でしたが、今やドローンとコードにより、ボタン一つで『家電』を操作するかのような手軽さで行われるようになりました。この戦争の低コスト化が、開戦のハードルを消滅させてしまったようです。大規模な地上軍を動かす代わりに、AndurilやShield AIといった新興企業の自律型ドローン技術が投入されたといわれています。
4. 日本への直撃:サプライチェーンと経済への衝撃
最も懸念すべきは、ホルムズ海峡の事実上の閉鎖に伴う**「複合的な供給断絶」**です。
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エネルギーと為替: 原油価格が急騰。これに伴い、安全資産としてのドル買い(あるいはリスク回避の円売り)が交錯し、為替の乱高下が企業の採算を直撃しています。
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ナフサ・エチレンへの波及: すでに化学原料であるナフサの価格が跳ね上がり、エチレンの供給網に影響が出始めています。これは、プラスチックから半導体資材に至るまで、あらゆる製造業のコストを押し上げる「インフレの津波」となります。
「規範なき暴力」が支配する時代です。二つの『論語』の言葉を指針として提示します。
「怪力乱神」の時代なのか
子は怪・力・乱・神を語らず。(「述而第七」20)
孔子は、「怪」、「力」武力・暴力、「乱」人の道に背く無秩序な反乱、「神」超自然現象については語りませんでした。これらは人間の理性を狂わせ、社会の秩序を根本から破壊するものだからです。
現代における「怪力乱神」とは何でしょうか。 それは、**「AIによる非人間的な標的選定(怪)」「圧倒的な軍事テクノロジーによる蹂躙(力)」「国際法を無視した先制攻撃(乱)」「アルゴリズムというブラックボックスへの盲信(神)」**ではないでしょうか。
トランプ政権の「結果至上主義」は、対話という「常道」を捨て、この怪力乱神に手を染めました。しかし、理性を欠いた力による解決は、さらなる混乱(エントロピー)を増大させるだけで、真の平和をもたらすことはありません。
ボブ・ウッドワードが描いたトランプ氏の**『RAGE(怒り)』**。それは己をコントロールすることを忘れ、衝動を世界の規範よりも優先させた結果、今の「怪力乱神」を呼び寄せた記録でもあります。
「過ちを指摘する」サンチェス首相の勇気と、思考停止した高市首相の「欠如」
「相手が過ちを犯したら指摘するのが同盟国である」
スペインのサンチェス首相は、暴走する米国に対しこう述べました。欧州が積み上げてきた国際法の歴史と、同盟関係を「公的規範(礼)」で律しようとする強い意志があります。
対照的に、高市首相の「法的評価をしない」という答弁は、「知力の欠如」を露呈していると分析せざるを得ません。レアアースなどの「物資」や「軍事技術」については饒舌ですが、いざ国際法や人道といった「理(ことわり)」を問われると、途端に口を閉ざします。 これは、彼女が「技術(テクノロジー)」には関心があっても、それを統御するための「哲学」を持ち合わせていないことを示しています。
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教養の欠如: 自分の言葉で「正義」を定義できないリーダーは、トランプ米国の暴走(怪力乱神)に対し、ただ圧倒されるしかありません。
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アイデンティティの消失: 日本という国が何を大切にする国なのかという「礼(規範)」を語れないため、国際社会(特に欧州勢)からは「魂のない経済機械」として軽蔑の対象になりかねません。
争いを止めるには
孔子の考えでは、無秩序「乱」は、規範「礼」が守られていない時に発生します。孔子は、「克己復礼(欲望をコントロールして礼に立ち返る)」、社会的には規範・礼を重んじることを強調しました。
己に克ちて礼に復するを仁となす。(「顔淵第十二」1)
自分勝手な私欲を抑え、社会の規範である『礼』に立ち返ることこそが仁であると孔子はいいました。
「戦争はかつてないほど安価で、効率的で、そして予測不能になった。」

