「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

震災15年、失われた時間は「劣化」へと塗り替えられた

東日本大震災から15年。2026年3月11日、被災地は深い祈りに包まれました。 しかし、あの日、何もかもが押し流された大地を前にして私たちが抱いた「ここから日本は変われるはずだ」という希望は、今ややり場のない徒労感へと変わりつつあります。

機能不全の15年と「改善(KAIZEN)」の喪失

日本の強みであったはずの「改善」は、どこへ消えたのでしょうか。 いまだに「復興担当大臣」というポストが存続し続けていること、そして事故当事者である東京電力による柏崎刈羽原発の再稼働が、15年という歳月をかけて「ようやく」このタイミングで行われるという事実は、日本の意思決定スピードの絶望的な遅れを象徴しています。

「1強」首相、再稼働まい進 野党惨敗、消えた脱原発―東日本大震災15年:時事ドットコム

エマニュエル・トッド氏が『老人支配国家日本の危機』で予見した通り、既得権益と過去の成功体験に縛られた高齢層中心の意思決定(シルバー民主主義)が、この15年間の「改善」と「刷新」を阻み続けてきました。その結果、私たちは「脱原発」という逆境をバネにしたエネルギー社会の転換を放棄し、「原発回帰」、ただ「時計の針を昭和に戻す」ことだけに心血を注ぐようになっていないでしょうか。

深刻化する外交の劣化と「同盟の転機」

内政の停滞は、外交の劣化にも直結しています。処理水の海洋放出を巡る中国との対立は、科学の問題を超え、日本の孤立を浮き彫りにしました。 ジョシュア・W・ウォーカー氏が『同盟の転機』で指摘するように、トランプ政権の再来による「アメリカの変貌」は、もはや日本が米国の傘の下で無邪気に「昭和の形式」を維持することでは済まなくなるのかもしれません。

顕在化する「15年間のツケ」——イラン危機を前にして

この「変われなかった15年」の失敗のツケがイラン危機で、今、最悪の形で顕在化しようとしています。もし、この15年で真のエネルギー転換を成し遂げていれば、私たちは今ほど外圧に怯える必要はなかったはずです。しかし、現実は補助金で物価を粉飾し、出口のない原発政策に固執したまま。日本のエネルギー安全保障は、震災直後と同じ、あるいはそれ以上に脆弱なまま晒されています。


積み重なった「失われた30年」の果てに

震災からの15年は、日本が失われた時間を取り戻す絶好の好機でした。しかし、私たちはその力を「改善」や「発展」に向けることができませんでした。場当たり的な補助金で物価を粉飾し、企業献金と既得権益の円環を守るために、震災の教訓さえも「経済成長」の物語に回収してしまう。 この時間が止まった15年間は失われた時間は30年へと積み重なり、その間に日本は外交を含め、構造的な「劣化」を許してしまいました。

「信頼の欠如」「言葉の空虚さ」「自己責任の回避」。

失敗を直視すれば責任を問われる。だから「無謬性(間違いを犯さないこと)」という神話を維持するために、言葉を空転させ、改善の機会を15年も逃し続けてきた。この劣化の果てに待っているのは、外圧という嵐に耐えられない、脆く老いた国家の姿だったと言ことなのかもしれません。

規範と誠実への回帰

孔子は政治と社会の安定についてこう語りました。

終わりを慎み、遠きを追えば、民の徳、厚きに帰す (「学而第一」9)

「終わりを慎む」とは、一つの物事を最後まで責任を持って誠実にやり遂げること。そして「遠きを追う」とは、先祖や過去の教訓を忘れず、時間軸を長く持って未来への責任を果たすことです。

震災から15年、私たちは「終わりを慎む」できたでしょうか。 廃炉や最終処分という、最も困難な「終わり」を直視せず、安易な再稼働や輸出という「形式」に逃げてはいないでしょうか。 私たちは「遠きを追う」できているでしょうか。 あの日流された涙と教訓を、補助金で粉飾された経済成長という一時的な利益のために、忘却の彼方へ追いやってはいないでしょうか。

「無謬性の神話」という傲慢さを捨て、自らの失敗を誠実に認め、そこから「改善」の一歩を踏み出すこと。その誠実さ(徳)を取り戻すことなしに、真の技術革新も、強靭な外交も、そして自律した社会も訪れることはないのでしょう。

15年という月日が流れた今、私たちがなすべきは、空虚な言葉を積み上げることではありません。 この震災の教訓を「遠きを追う」精神で守り抜き、目の前の理不尽に対して「終わりを慎む」の誠を尽くすこと。その歩みこそが、劣化しきったこの国を復興へと導く唯一の道ではないでしょうか。

 

「参考文書」

東日本大震災15年「生きていくことが供養」 発生時刻に黙とう - 日本経済新聞

原発の「最大限活用」鮮明に―政府 足元ではエネルギー高騰―東日本大震災15年、課題山積:時事ドットコム

 


www.youtube.com