COP26で地球温暖化防止のための1.5℃目標が確認され、地球規模での2050年のカーボンニュートラル達成に向けての行動が求められるようになった。まずは2030年までの10年余りの歳月が決定的な意味を持つと意識され、この10年でどれだけ脱炭素を進めることができるのか、それが問われている。
国や企業、覇権や思惑、様々なことが入り混じって進んでいくのかもしれない。
ベトナムにもEVメーカ誕生
ベトナム製のEV電気自動車が、ロサンゼルス・オートショーで発表された。年内にベトナムと海外で予約受付を開始するという。
【ベトナム】ビン、年内にEV充電所4万カ所設置[車両] | NNAアジア経済ニュース
NNA ASIAによれば、このEVメーカ ビンファストは、充電スタンドをベトナム国内63省市の計4万カ所に、年内に設置する方針を明らかにしているという。
EVシフト
雨後の筍のように世界中でEVメーカが誕生すれば、EVシフトは加速するのかもしれない。 市場がEVシフトに注目し、新興EVメーカの株価が爆上げになり、EVシフトが本流ではないかとの雰囲気を後押しする。こうした思惑でEVシフトは進んでいくのだろうか。
米GMやフォード、独メルセデス、スウェーデン ボルボはEVにかけ、COP26では、2040年までに二酸化炭素を排出しない「ゼロエミッション車」へ転換する宣言に賛同した。もしかしたら、産業覇権をかけた勝負なのかもしれない。そうした強欲主義で地球環境を救うことはできるのだろうか。
論語の教え
「まず、道理上起すべき事業であるか、盛んにすべき事業であるかどうかを考え、利損は第二に考える」、と渋沢栄一はいう。
さらに、「事業を起したり盛んにしたりするには、多くの人々より資本を寄せ集めねばならず、資本を集めるには事業より利潤をあげるようにせねばならぬもの故、事業を起すに当っても、素より利潤を全く度外視するわけにゆかず、利潤のあげるようにして事業を起し、或いは盛んにする計画を立てねばならぬに相違ないが、事業には必ず利潤の伴うものと限ったものでは無い」という。
「君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る」と、「里仁第四」16にある。
君子は、何事に臨んでもそれが果して義しくあるか、或いは義しく無いかと云う事を考え、それから進退の如何を決するもので、義しきに従って処置するのだが、小人は利害を目安にして進退を決し、利にさえなれば、たとえ、それが義に背くことであらうと、そんなことには一向頓着せぬものである。つまり、万事を利益本位から打算するのが小人の常で、正義の標準に照らし万事を処置するのが、君子の常である。
故に同じ一つの事柄に対しても、小人はこれによって利せん事を思い、君子はこれによって義を行わんことを思い、その間の思想に天地雲泥の差がある。(参考:「実験論語処世談」渋沢栄一記念財団)
EVシフトは急ぐべきなのか
脱炭素を考えれば、EVシフトにも義はあるのだろう。ただ使用する電力が化石燃料由来なら、ガソリン車よりも排出量が多い場合もあることがあるという。
アングル:意外と低いEVのCO2削減率、電源構成で大きな差 | ロイター
「電力は、内燃機関では絶対にできない方法で運輸業を脱炭素化する力を持っている」が、「ただ、電化による脱炭素化の効果は、その国のエネルギー構成によって大きく異なる」と、ロイターは指摘する。
「EVへの移行を成功させるには各国が、信頼性が高く、達成可能な脱炭素化戦略を導入する必要がある」。
もしかしたら、EVシフトは十分な時間をかけて、進めていくのがいいのかもしれない。まして、その製造にはバッテリーや半導体の供給や価格の問題も存在する。必要な要素技術を育成しながら、普及させるべきなのだろう。
利益本位で事業を起したり、これに関係したり、その株を持ったりすれば、利潤のあがらぬ事業の株は売り退いてしまうようになったりなぞして、結局必要なる事業を盛んにすることも何もできなくなるものである。(参考:「実験論語処世談」渋沢栄一記念財団)
EVシフトをはじめとする脱炭素を単なる投資対象やビジネスにしてはならないのだろう。そこには、地球温暖温暖化を絶対に許さないという「義」があることを忘れてはならない。