「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【学は及ばざるが如くせよ】気候変動問題と新政権の国際デビュー

 

 国連の気候変動枠組条約締約国会議「COP26」の準備会合が9月30日から、イタリア ミラノで開催され、米国のケリー気候問題担当大統領特使や各国閣僚が参加したという。

 NHKによれば、世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えることを目標にさらなる温室効果ガスの排出削減の必要性が確認され、10月末から英国グラスゴーで始まる本会合で、各国の立場で隔たりがある排出削減のペースや拠出額などで合意形成できるかどうかという。

 国内では今日にも新政権が誕生し、組閣人事が正式に発表となるそうだ。

 国内の政局に関わらず、国際会議は開かれ、ことを進め、次に向けての準備が進む。また出遅れにならないかと一抹の不安を感じたりする。首相はもちろんのこと、関係する閣僚が変わると聞けばなおさらなのかもしれない。

 

 

論語の教え

「学は及ばざるが如くせよ。猶(なお)之を失わんことを恐れよ」と、論語「泰伯第八」17 にある。

「学問をするとき、自分はまだ十分でないという気持ちをいつも持て。しかも、得たものは失わないと心掛けよ」。

「及」とは逃げていく者を追いかけて追いつくこと、勉強をするには、逃げる者をつかまえようとするときのように、一瞬の油断もなく努めなければならないが、それでもまだつかまえきれないことを恐れる、学ぶものの態度はこうでなければならない、という意味であろうと桑原は解説する。

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「善く走る者を一生懸命に追ひかけて、追ひつき能はざるの心を以て勉強しなければならぬ。急ぎ追ひかけても力足らざる時は、其の人を見失うて往く所を知らざるに至るであらう」(引用:実験論語処世談 渋沢栄一記念財団)

 渋沢栄一はこの章について、当時の学者のことを指して、「多くは一を知つて十を知つた振りをする広告的学者で、何事も誇張する人があるのは余り喜ばしい事ではない」といい、「古人の説などに就ても其の蘊奥(うんおう)を極めずして得々然として喋々する所謂半可通の学者の多いのは全く驚く」と指摘し、学問は、「専心一意勉強するも、猶ほ及び難きものであるから、須臾(しゅゆ)も怠つてはならぬ」という。

 気候変動問題に関係する閣僚には、ぜひこの心構えで進めて欲しい。

 

 

 その栄一は大隈重信と始めた大蔵省改正掛で、最も困難と感じたのは、租税を従来の現物、米穀から現金で納入するように改正したことだったと述懐する。

 改正掛で、様々な提案を行っては実行していく栄一の拠り所になった精神は、論語の「温故知新」の義を体し、所謂「為師(師と為るべ)」整然たる制度を立てんとするにあつたという。それも明治新政府の運転を円滑にするためだという。「如何に故例を壊さず新しきに進むといふ事が困難のものであるかが知り得られるだらう」という。

温故知新

「故(ふる)きを温めて新しきを知る、以って師と為るべし」、論語「為政第二」11にある。 

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「新しきを追ふも故きを忘れず、故きを温ぬるも進取の気性を失わず、故きに就て新しきを学ぶやうにせねばならぬものである」と栄一はその意味を説明する。

 自分より先に、この世の中に出て、この世の中に働き、自分よりも久しい経験のある人々に就て学び、新たに進まんがための資を得んとする趣旨に外ならぬという(参考:実験論語処世談

 

 

 COP26の準備会合があったミラノでは、世界中から活動家が集まるイベント「Youth 4 Climate」が開催され、イタリアのドラギ首相や英国のジョンソン英首相、サミットの準備に当たっている英国のシャーマCOP26議長が演説したそうだ。

伊首相がグレタさんと面会、気候活動家の要求に耳を傾けると約束 | ロイター

 ロイターによれば、ドラギ首相は活動家との私的会合を受け、「あなた方が説明責任や変化を求めることは正しい」と語り、「指導者は皆、素早い行動の必要性を絶対的に確信しているというのが私の印象だ」と述べたという。

 今月10月は、G20 主要20カ国・地域サミット関連の会議が目白押しで、月末には首脳会合がローマで開催される。そこでも、気候変動問題が議題にあがり、世界の気温上昇を1.5℃に抑える目標の維持と、その目標に沿った長期戦略の策定が話し合われることになる。

 新政権は上手に国際デビューできるのだろうか。