「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【学は及ばざるが如くせよ。猶之を失わんことを恐れよ】 Vol.204

 

 子曰わく、学は及ばざるが如くせよ。猶(なお)之を失わんことを恐れよ。(「泰伯第八」17)

  

(解説)

孔子の教え。学問をするとき、自分はまだ十分でないという気持ちをいつも持て。しかも、得たものは失わないと心掛けよ。」論語 加地伸行

 

桑原の解説。

 「及」とは逃げていく者を追いかけて追いつくこと。勉強をするには、逃げる者をつかまえようとするときのように、一瞬の油断もなく努めなければならないが、それでもまだつかまえきれないことを恐れる、学ぶものの態度はこうでなければならない、という意味であろうと桑原はいう。

 この場合の「学」とは「まねび」すなわち学習であって、真理の追求という意味での学問研究を指さない。本当の意味での学問研究とは、一応の作業仮説はもつにしても、鬼が出るか蛇が出るか、結果を予測せずに、あるいは予測することができぬままに、研究することでなければならない。

 もっとも初心者がいきなり研究などというのは生意気なのであって、それまでに師について基礎的な訓練を重ね、学問の道に習熟しなければならない。礼楽を重視する孔子学団においては、学習が大切とされてのは当然で、この章は孔子がおそらく若い弟子たちにさとした言葉なのであろう。そうでなければ、孔子教条主義者に利用されることになるだろう。

 

 

 桑原は、「及」にこだわり過ぎているのかもしれないと自問する。孔子は歳月が人を待たず、一瞬の光陰も軽んじられてはならない、ということを、走る人のイメージで強調しただけかもしれないともいう。 

 

(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

  
論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫