「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

気にかかる気候変動、カルビーの場合 【渋沢栄一が予見した未来】~ 論語の教え #6

 

 COP26 第26回気候変動枠組条約締約国会議が今月末からイギリス・グラスゴーで開催されます。今年の会議はたいへん注目度が高いそうです。異常気象が当たり前になり、世界のあちらこちらで大きな被害を出すようになっているからでしょうか。

 早急な対策が求められています。イギリスのエリザベス女王が、世界各国が行動しないことに「イライラする」との気持ちを漏らしたそうです。多くの人々にとっての関心事になっています。

 

 

 スナック菓子大手のカルビーが10月14日、「サステナビリティに関する記者懇談会」を開き、伊藤社長が出席したそうです。食品を扱う会社だけあって、カルビーもまた、気候変動の問題を他人事として扱えないようです。

私たちのビジネスではスナック食品など、ほとんど農産物を原料にしています。ベースになっている馬鈴薯については、生の馬鈴薯のままとっておいて、使える範囲で加工するやり方。原料の生育や気候変動の障害は大きい。(出所:ハフポスト)

 伊藤社長はさらに、「気候変動は自分たちの経済活動や生活によって起きたことであり、これをどう戻していくか。これは事実というか、義務です。それをやっていかなければ、次に進めないと感じている」と語ったそうです。

 また、若い世代の環境問題に対する意識の高まりについて、「情報は積極的にオープンにしていかないといけないですし、我々もイノベーションを起こしますけれども、ユーザーと一緒にイノベーションを起こしていき、ともに持続可能な社会を作っていくという関係が最適ではないかと思っています」と述べたといいます。

 理解が共感を生み、調和していく。その調和から、協働、共創が生まれ、持続可能な社会になっていくのかもしれません。

 

 

論語の教え

「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」と、「子路第十三」23 にあります。

君子は、人と交るに能く調和して相戻るやうなことはないけれども、衆と共に附和雷同するやうなことはない。小人は之れに反して、衆と共に雷同することはあるけれども、相調和することはないのである。(出所:「実験論語処世談」 渋沢栄一記念財団

「附和雷同」、自分にしっかりした考えがなく、むやみに他人の意見に同調することを意味します。

「人として社会に生存して居る以上は、自己の意見のみを行ふことは出来ない。故にある点までは相調和して、共同一致の実を現はす必要がある」と栄一はいいます。

ところが、小人は附和雷同するので、人を相手として騒ぐことになるそうです。

この雷同心なるものは、調和心と同じく多数一致することであるが、実は似て非なるものである。即ち、調和は義の為、雷同心は利の為にする。故にある時は多数と一致することがあつても、直ちにさうでなくなることがある。(出所:「実験論語処世談」 渋沢栄一記念財団

dsupplying.hatenadiary.jp

論語」を愛し、それを信奉する栄一は、「日本のごときは、なんらまとまった宗教心と云うものが一般にそなわっていないのに、ただ自己を主張する思想の盛になって来ると云うことは、誠に恐るべきことと言はねばならぬ」といい、「之れでは今後世の中が何う怖るべき結果を齎らすか知れぬ」といったといいます。栄一は今日の社会を予見していたのでしょうか。

今日のやうに単に自分さへよければ宜しい、他のものは何んなに難渋しても構はぬと云ふならば、只強い者勝ちと云ふことになつて、其結果は非常に怖るべきことであると思ふ。固より各自が其個性の拡充を主張することは少しも非難すべきことは無い。然し世の中と云ふものは、己れ独りで以て出来て居るものではない。非常に多数の人の集りで出来て居るのである。(出所:「実験論語処世談」 渋沢栄一記念財団

 

 

 栄一は、「多数の人が調和を計る為には、そこに是非とも責任や犠牲の観念がなければならない」といいます。

 「真心を尽くし、誠意をもって、自分以外の他者のために尽くすこと」。

論語」が説く、孝弟忠信がなければならないといいます。

 さらに、「修養を積むと云ふことは己れの為であつて、充分己れの修養が出来、徳が整うて来なければ、人と接して調和を取ることも難しく、到底世間の秩序と云ふものは円満に保てるものではない」といいます。

 そして、道徳の重要性を説いているのです。

 今日の困難である気候変動の問題も道徳なくして解決はないのかもしれません。