「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【鳳鳥至らず。河図を出ださず】衆院選を前にしても、冴えない党首たちの主張 ~ 炉辺閑話 #52

 

 衆院選の公示日が明日に迫り、各党首があちこちに登場し、意見を述べている。

「成長と分配」、今回の選挙の争点は経済政策になるそうだ。皆が発するその内容からすれば、これまでの政治、経済活動に歪みがあったことを間接的に認めているのだろう。それにしても、どんぐりの背比べ、そんな有り様に見えてしまう。

 「鳳鳥(ほうちょう)至らず。河(か)図(と)を出ださず。吾已(や)んぬるかな」と、論語「子罕第九」9 にある。

「今は吉祥を予告する鳳鳥も至らず、黄河に竜馬が運び来る図も現れない」。

 孔子が生きた春秋時代、諸侯が各地に割拠して、聖王賢君は現われず、政治が廃れ、道徳は地を払うに至り、孔子がこう嘆いたそうだ。

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 自己主義の人ばかり多くなっている有様を見て、孔子が「吾已矣夫」と嘆息の声を発したと、渋沢栄一は解説する。

 戦国時代のような戦さこそないが、現代も孔子の生きた乱世の時代と大きな差がないのかもしれない。

 

論語の教え

「苗にして秀でざる者、有るかな。秀でても実らざる者、有るかな」と、「子罕第九」22 にある。

「苗の中には、花の咲かないものもある。花が咲いても、実をつけないで終わるものもある」とのことで、学業を成就する者が少ないことを嘆き、途中挫折する事なき様にしなければならないとの訓戒だと渋沢栄一は解説する。

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 栄一は、さらにこの章は、現代にあてはめる事が出来ると思うという。

「何事でも、倦まず惰らず勉めて止まずんば、必ず事を成就するに至るものであるが、多くの人は途中の障碍(しょうげ、さまたげ)に挫折してしまう。こんな決心の鈍い事では何事も成し遂げられるものではない、心すべきである」という。

 

 

 折角、先の政権で成長戦略に脱炭素が定まったかと思えば、それが蔑ろにされているかのような話ばかりに聞こえる党首たちの意見だ。

「歴史的にヨーロッパでの自然は大人しくて、災害も少なかった。だから地球温暖化問題が大きく感じられるし、一方で日本人にはあまり感じられないのかもしれません」と、養老孟司先生がいう。

養老孟司・斎藤幸平対談、「足るを知る」生き方が世界を救う 人はどうすれば「自然」に回帰できるのか(1/7) | JBpress (ジェイビープレス)

地球温暖化は、国連とか一部の科学者がどこかで議論している「思想」の問題であって、自分たちの日常生活とはおよそ縁がないと思っている人が多いんじゃないか。感覚的に判断するから、自分の現実とは無関係な、どこか偉い人がやっている「思想」なんだというふうに。

その代わり日本人は空気で動きます。環境破壊は許せないと血相を変えて叫ぶ人がたくさんいるけれど、それは空気の仕業であって、直接的な危機意識から唱えている人がどこまでいるのか、そこに確固とした思想はないんですよね。(出所:JBpress)

 養老先生の指摘がどこぞやの党首のことを言っているように聞こえてしまう。

 世界中が「脱炭素」と「ESG投資」に沸き返り、国内の産業界もその方向に動き始めたばかりだ。こうした活動で今すぐに地球の温暖化が止まり、気候変動が緩和することはないのかもしれないが、その活動は止めることはできないはずである。

 そうであるにも関わらず、選挙を前にすれば、みなが政権取りに躍起になるばかりで、主張することは当たり障りのないことばかりになってしまう。

「苗にして秀でざる者、有るかな。秀でても実らざる者、有るかな」

 日本の未来が気候変動によって脅かされているくらいの危機感をもって論戦してもらいたい。そうでなければ、また失われた○○年が続くことになりはしないだろうか。