「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【鳳鳥至らず。河図を出ださず。吾已んぬるかな】 Vol.215

 

 子曰わく、鳳鳥(ほうちょう)至らず。河(か)図(と)を出ださず。吾已(や)んぬるかな。(「子罕第九」9)

 

  (解説)

孔子の嘆き。今は吉祥を予告する鳳鳥も至らず、黄河に竜馬が運び来る図も現れない。私はどうしようもない。」論語 加地伸行

   

 桑原の解説。

 「鳳鳥」とは、美しい羽根をもった空想の霊鳥で、聖王が出現するときにあらわれるという。「図」とは黄河の中から竜馬が背負ってあらわれて、聖王を歓迎するという神秘的な図形だそうだ。

 孔子がそうした瑞兆があらわれず、自分の運命もここにきわまったと嘆いたのだという。聖王が出現すれば、孔子はそのもとで、自分の理想を天下に実現することができる。ところが、そのことがないという絶望の言葉である。孔子が鳳鳥や河図の存在をどこまで信じていたか、わからない。しかし、そうしたものを全面否定していたとするのは、行き過ぎであろうという。「道行われず」(「公冶長第五」 7)のヴァリエーションと見てよいという。

 

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 この章には色々な説があるようだ。桑原はあくまで、道の行われないことへの絶望を美的に表現したものとよむという。文学者らしい桑原ならの視点なのかもしれない。

 

(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

  
論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫