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【SDGsは欺瞞になるのか】COP26を前に慌ただしさ増す、日本の対応はどうなるか ~ 論語と算盤 #22

 

 COP26 第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議を前に、動きがあわただしくなっているようです。

 国内では、G20サミットへの参加を見送る意向を示している首相が、COP26には参加する方向で調整しているといいます。

 EUでは、昨今のエネルギー価格高騰を受け、東欧諸国がEUの脱炭素化政策を批判しているといいます。

 

 

 BBCが、IPCCの報告書作成過程における各国政府によるレビューで、サウジアラビアや日本、オーストラリアなどが、化石燃料からの急速な脱却の必要性を控えめするようを求めたと報じています。

COP26の主要報告書の変更求め、多くの国がロビー活動 流出文書で判明 - BBCニュース

こうした「ロビー活動」は、10月31日に開催予定のCOP26をめぐって問題を引き起こすものになっているとBBCは指摘します。

 地球温暖化を憂い、気候変動と対峙し、その対策を真摯に考える人々にとっては、こうした動きは残念なものに映り、また、COPがイベント化しているように感じたり、はたまたSDGsを欺瞞と感じたりすることがあるのかもしれません。

論語の教え

「我知る莫(な)きか」と、孔子が嘆くと、弟子の子貢(しこう)が、「何為(なんす)れぞ其れ子を知る莫し」と、そう嘆くのかといったそうです。

 すると孔子は、「天を怨(うら)みず、人を尤(とが)めず、下学(かがく)して上達す。我を知る者は其れ天か」と答えたと、「憲問第十四」35 にあります。

孔子はこれ天命であるから、天を怨むこともなければ、人を尤めるにも当らない。むしろ学問をして上達するに越したことがない、我を知る者は唯天のみである」との意味だと渋沢栄一が解説しています。

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 栄一は自己を振り返り、次のように言っています。ときに、正しく理解されないこともあったのでしょうか。

私が実業界に入り、富を増すことに微力を致したことは世間周知のことである。しかしながら、その富は自己の富を増すことでなく、国富を増すと云うふことであった。

もっとも国富を増しつつ自己の富をも得たことは事実であるけれども、自己の為に図って国の為に図ることがないのは、大なる誤りであることを信じて居るものである。

すなわち、国家社会を主としてやると云うような働きに長じなければならぬ。ところが世間の多くは、自己の為の働きのみやって、国家社会の為と云うことは至って少い。自己の富を増すと云うことも、決して自分のみの力でなく国家社会のお蔭によつて出来るものである。 (参考:「実験論語処世談」渋沢栄一記念財団

 栄一も誤解されることがあったのでしょうか、さらに「自己一人の富を増すと云うことでなしに、国全体の富を増すと云うことに努力しなければならぬ」と強調しています。

 

 

 栄一が、「浅野総一郎」という人物の評価をしています。

浅野総一郎」とは、栄一の知遇を得て官営深川セメント工場を獲得し、日本のセメント王となった人物です。現在の太平洋セメントの祖となった人物で、この他に、旧日本鋼管(現JFEスチール)や京浜工業地帯の埋立に関わっています。

 栄一は、浅野総一郎の先見性を評価していたようです。しかし、世間の多くの人たちは「浅野氏が如何にも強慾の人であるかの如く、危険な人物であるかの如くに誤解するのは、何事にも他を益するというよりも自分を富まそうとの観念が先きに立つからである」といいます。

自分を富まそうとする事も、他人を益そうとする事も、結局実際に臨めば同じになつてしまい、利他は自富となり自富は利他にもなるのだが、自富を先きにするのと利他を先きにするのとでは、同じ事を営んで同じく自ら富むにしても、それまでになる筋立に違った処のあるものだ。

その筋立の差によって、強慾で危険な人物であるかの如く世間から想われたり、あるいは思われずに済んだりするのである。(参考:「実験論語処世談」渋沢栄一記念財団

 当時、浅野は世間から強欲とみられていたようですが、そうした人物を栄一が援助していたことに少々興味を覚えます。

 現代でいえば、SDGsやESGに対してウォッシュしている企業を支援するようなものなのかもしれません。ウォッシュに見えることでも、それが結局は社会のためになるのか否かを見極めることが肝要と栄一は言いたかったのでしょうか。

 

 

 日本は、IPCCの報告書のレビューで、「化石燃料による発電の廃止の必要性は、他の分野からの排出量や発電設備の稼働率二酸化炭素を回収・貯留する技術(CCS)の進展状況にも左右される」と主張して、報告書にある「石炭火力発電所を9年以内、ガス火力発電所を12年以内に廃止する必要がある」という文言の削除を求めたといいます。

 毎日新聞によれば、これに対し、グリーンピースは「一部の国が、国内の経済的利益を脅かす内容となる報告書をつぶそうと企てている」と指摘したといいます。

 グリーンピースの表現は過激すぎるように感じる一方で、政府対応の非合理性も感じます。

 首相がCOPに参加することになれば、この問題にどう対処するのか、また、会合の場で何を主張するのか、注目したいと思います。

 

「参考文書」

脱炭素化政策に異論噴出 エネルギー価格高騰で―EU首脳会議:時事ドットコム

国連の気候変動報告書草案、日本などが修正要請 環境団体が発表 | 毎日新聞

【独自】脱炭素社会へ国際社会リードを…首相が初の外遊へ、COP26出席で調整 : 政治 : ニュース : 読売新聞オンライン