「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【思いて学ばれば、則ち殆(まど)う】変わる成長戦略、反応する株価、遠退く脱炭素とESG投資 ~炉辺閑話 #49

 

 東京株式市場で日経平均が6日連続して下落した。米国や中国のリスクなど外部要因も警戒されてのことのようだが、新政権について早くも「新鮮味が感じられない」などの声が漏れ聞こえはじめている。

 ロイターによれば、市場では買い材料と捉える見方が少なかったという。

 新政権が誕生すれば、前の政権との違いを際立たせるために新たな施策が披露される。平時なら兎も角、非常時ではないものの、まだ先行きに不安があるときに、新たな概念を強調し過ぎるのは如何なのだろうか。

 

 

 新型コロナの新規陽性者数が極めて低い水準に推移するようになってきた。もちろん第6波への警戒とその準備は欠かせないことであろう。ただ、それでは警戒モードのままで、いつまでも不安が解消されない。今の状態を維持、さらに抑え込む合理的な説明があれば、少しは不安がやわらぐのかもしれない。

コロナ感染の状況は現在、落ち着きを見せているとはいえ、先行きについては不透明です。多くの国民の皆さんが、いまだ大きな不安をお持ちです。一刻も早く大型で思い切ったコロナ対策、そして経済対策、実現してまいりたいと思います。

そのためには、いの一番に国民の皆さまに、この岸田にお任せいただけるのかどうか、このご判断をいただき、可能であるならば、国民の信任を背景に、信頼と共感の政治を全面的に動かしていきたいと考えます。(出所:産経新聞

 自己都合の説明では、変わり映えしないと感じる。株式市場から「新鮮味がない」との声が上がるのもわかる。

論語の教え

子路 聞くこと有りて、未だ之を行なうこと能(あた)わずんば、唯聞くこと有るを恐る」と、論語「公冶長第五」14 にある。

 「弟子の子路は真直ぐな人間で、知行合一を常に求めた。先生から教わったことはすぐに実行に移したい。しかし、まだそれが成果をあげていないうちに、また次の教えを聞くと、それも実行したくなり、あぶ蜂とらずになる恐れがある。だから、一つのことを成就するまで次の教えを聞くのが恐ろしい」。

dsupplying.hatenadiary.jp

 任期があることだから致し方ないのかもしれないが、折角、聞きて練り上げた施策なら、まずは実行し、少しでも不安解消に努めくれた方がよいのかもしれない。

 

 

学びて思わざれば、則ち罔(くら)し。思いて学ばれば、則ち殆(まど)う

 論語「為政第二」15 にある言葉で、「知識や情報を(たくさん)得ても思考しなければ、どうして生かせばいいのか分からない。逆に、思考するばかりで知識や情報がなければ(一方的になり)、独善的になってしまう」と意味する。

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 総選挙を憂えず、そこに答えを求めるのでなく、まずは己で考えた施策を実行すべきではなかろうか。

「思いて学ばれば、則ち殆(まど)う」も岸田カラーなのかもしれない。

 前政権が掲げたカーボンニュートラル政策とそれに付随する成長戦略は蔑ろにされたのだろうか。

 新政権の基本方針には、「新しい資本主義の実現」とあり、成長戦略として、「科学技術立国」、「デジタル田園都市国家構想」、「経済安全保障」、「人生100年時代の不安解消に向けた社会保障改革に取り組む」とある。コロコロと戦略が変わることも不安を助長する。

 

 

 昨日の記者会見でも「気候変動」に関しての言及が少なかったようだ。現実に、気候変動の影響によると思われる大規模災害が頻発しているというのに、その言及が少ないようであれば、不安が増していく。いつまでも国土強靭化という施策では不十分ではなかろうか。

 気候変動がテーマとなり、各国が集まり議論する場のCOP26も、オンライン参加で十分との発言もあった。それがすべてをあらわしているのかもしれない。

 投資の世界でもホットになっている、脱炭素やESGに言及があれば、株式市場での反応もまた違ったものになっていたのだろう。