子張(しちょう) 仁を孔子に問う。孔子曰わく、能(よ)く五者を天下に行なうを、仁と為す、と。之を請い問う。曰わく、恭、寛、信、敏、恵なり。恭なれば則(すなわ)ち侮られず。寛なれば則ち衆を得。信なれば則ち人 任ず。敏なれば則ち功 有り、恵なれば則ち以て人を使うに足る、と。(「陽貨第十七」5)
(解説)
「子張が仁とは何でしょうかと孔子に質問した。孔子はこう答えた。「五つのことを世に行うことができれば、それが仁である」と。この五者をどうか教えてくださいとたずねた。孔子はこう答えた。「それは恭、寛、信、敏、恵である。恭、己を慎み驕らなければ、人に侮られることはない。寛、度量が広ければ、人の心を得られる。信、言行一致であるならば、人は信任する。敏、すぐに実行するならば、功績があがる。恵、財物を惜しまず分け与えるならば、人を十分に使うことができる」と。(論語 加地伸行)
「子張」、姓は顓孫、名は師、字名が子張。陳の人で、孔子晩年の弟子。もっと若く秀才といわれる。「礼」の専門家。「史記」に、「師や僻なり」とあるように、時として正統を離れる異説を好んだようであるという。
人となり才が高く、意が広く、人の感情などに拘らないところがあったという。子路、子貢に次いで登場回数が多く、それだけ影響力もあったのだろうか。
なぜ、前章のあとに、秀才で「礼」の専門家である子張が「仁」について質問したのだろうか。大義であったり、戦かい終わった後の心得ということなのであろうか。
子游は「子張第十九」15で、子張を「及び難い優れた人材だとは思うが、仁には至っていない」という。
「関連文書」
(参考文献)