子曰わく、士の道に志すや、悪衣・悪食を恥ずる者は、未だに与(とも)に議するに足らず。(「里仁第四」9)
(解説)
「士がいったん志を立ててその道へ進むとき、貧しい服装や食事を恥ずるような者は、同志としてともに語るに足らない。」(論語 加地伸行)
桑原は、この章を清貧の奨励とみることには賛成したくないという。
『孔子は、この章を学者一般への戒律にようなものとして発言したのではなかろうか。一般命題としてでなく、特定の若い弟子に向かって、お前も学問に志すといったからには、着物や食物のことで肩身のせまいの広いのなどと、心をわずらわしていては駄目じゃないか、もっと深い問題をなんのこだわりもなく話し合えるようにならなきゃ駄目だよ、と諭した言葉に違いない。』と読む。
これをもって、インテリの生活向上の要求をおさえられたりしてはたまらないと桑原は言う。美しい着物、うまい料理に血道をあげるのは学者らしくないが、きりとてそういうものに鈍感なことを学者の資格であるかのように考えるのは、偽善への一歩だと指摘する。
「賢なるかな回や、(いったん)の食(し)、一瓢の飲、陋巷(ろうこう)に在(あ)り。人は其の憂いに堪えず。回やその楽しみを改めず。賢なるかな回や」。(「雍也第六」11)
公務員ランナーからプロに転向した川内優輝さん、世界陸上のドーハでは、前回ロンドン大会での9位の雪辱を誓うも、29位に終わった。
一市民ランナーとして、長年工夫して実績を積み重ねてきた川内さん、今年4月にプロに転向した。東京オリンピックの代表選考レースになるMGCを辞退してまで、挑戦した世界陸上ドーハ大会は無念の29位。
派手さはないけれど、世界陸上2回連続4度の出場など着実に成長し成果を上げている。長年の苦労があってこそ、見えるものもまたあるのではなかろうか。彼もいつかレジェンドと呼ばれる日がくるのだろうか。
(参考文献)