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円安、株高の「高市トレード」再び — 「資本家」の論理と「まいばすけっと」の生活防衛

日本のマーケットは再び「高市トレード」に沸いています。高市首相による利上げへの難色、そして日銀審議委員へのリフレ派2名の指名。これらは、国家が「円安・株高」という資本家向けのアクセルを全力で踏み続けるという明確な宣言です。

日銀審議委員に浅田統一郎氏・佐藤綾野氏 「リフレ派」起用、首相の緩和志向映す - 日本経済新聞

しかし、このマクロな「合理性」の裏側で、私たちの生活感覚はかつてないほど引き裂かれています。

1. 「資本家 vs 労働者」への回帰

東浩紀氏が指摘した「保守vsリベラル」の終焉。高市自民の圧倒的な信任を背景に、今や対立軸は「思想」ではなく「階級」へと移行しました。

高市自民圧勝に東浩紀氏「『保守vsリベラル』の時代が終わり、『資本家vs労働者』の対立軸がやってくる」「偏差値60以上しか相手にしない」リベラル知識人はいなくなる - みんかぶ(マガジン)

円安を「輸出産業のチャンス」と笑う資本の論理と、輸入物価高に喘ぐ労働者の生活。日銀人事に見える「高市色」は、もはや「物価の安定」という公共の利益よりも、「資本の成長」という特定の利害(租税特別措置を受けられるような大企業)を優先する姿勢が表れているようです。

2. 「まいばすけっと」という生活の要塞

この断絶した世界で、消費者は静かに、しかし強固に「生活防衛」へと舵を切っています。Newspicksが報じた「まいばすけっと」の爆速成長は、まさにその象徴です。

【徹底調査】まいばすけっとが爆速成長する「5つの秘密」

豪華なデパ地下や高級スーパーではなく、徒歩圏内で1円でも安く、効率的に暮らしを維持する。156円という円安の数値は、政府にとっては「輸出競争力」の指標ですが、消費者にとっては「スーパーの棚から消える商品」の予兆でしかありません。

3. 政府・企業が作り出す「思考停止」の共犯関係

ここで山口周氏の「ダメな顧客が世界をダメにする」という問いを、今の日本政府と企業の歪な関係に重ねてみましょう。

「ダメな顧客」が世界をダメになる|山口周

本来、企業は厳しい競争の中で「真の価値」を問い続けるべき存在です。しかし、高市政権が「租税特別措置」や「円安誘導」という強力な補助輪(下駄)を履かせ続けることで、企業は血の滲むようなイノベーションを避け、国家の庇護に甘んじる「依存体質」に陥っています。

この「甘やかされた企業」が提供するのは、円安や減税でコストを削っただけの「安さ」という麻薬です。政府と結託して株高に浮かれる企業は、顧客に対し「円安だから文句を言うな」「これが現実だ」という思考停止を迫ります。結果として、顧客は高い志や美意識を失い、ただ目の前の安価な商品に飛びつく「ダメな顧客」へと作り替えられていく。

政府が企業をダメにし、企業が顧客をダメにする。この三者による「知性の劣化」の共犯関係こそが、株高の狂騒の裏側に潜む真の危機です。私たちが「まいばすけっと」で1円を削る努力をしている隙に、国家レベルでの「理性の空洞化」が着実に進んでいるのです。

4.まとめ:義に喩るか、利に喩るか

銀行株が下落し、円が売られ、株価だけが史上最高値を更新する。この滅茶苦茶なロジックの中に、実は一本の筋の通った「非情な合理性」があります。それは、生活者の理性を犠牲にしてでも「資本の物語」を維持するという選択です。

子曰わく、君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る。(「里仁第四」16)

『論語』にこうあります。君子はそれが正義かどうかに照らして判断し、小人はそれが利益になるかどうかで判断する。

今の日本が進もうとしている道は、国家も企業も、そして私たち顧客までもが「利」のみに喩り、物事の正しさ(義)を二の次にする道ではないでしょうか。

偏差値の高い言葉で語るリベラルな知識人がいなくなり、生々しい「カネと生活」の対立が剥き出しになる時代。私たちは「まいばすけっと」のレジ袋を提げながらも、せめて自らの内側にある「義(自律した判断基準)」だけは手放してはなりません。156円の円安の向こう側にある「国家の火遊び」を凝視し、利の狂騒に飲み込まれない知性を保つこと。それが、この引き裂かれた現実を生き抜く、唯一の「品格」となるはずです。

(あとがき) 租税特別措置の適用企業名の公表検討は、ようやく「透明化」への一歩に見えます。どの企業が「利」にのみ喩り、どの企業が「義」あるイノベーションに挑んでいるのか。私たちが「ダメな顧客」を卒業し、この共犯関係から脱する道は、目の前の利の物語に回収されない、自律した知性を取り戻すことにあります。


「参考文書」

税制優遇、適用企業名の公表検討 租税特別措置の効果検証で―政府・与党:時事ドットコム

三菱UFJなど銀行株が安い 「高市首相が追加利上げに難色」報道 - 日本経済新聞