「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【一箪の食、一瓢の飲、陋巷に在り。人は其の憂いに堪えず。回やその楽しみを改めず】 Vol.132

 

子曰わく、賢なるかな回や、一箪(いったん)の食(し)、一瓢の飲、陋巷(ろうこう)に在(あ)り。人は其の憂いに堪えず。回やその楽しみを改めず。賢なるかな回や。(「雍也第六」11)

  

(解説)

孔子の評価。聡明である。顔回は。その食物はわずか、飲みものもわずか、そして貧乏な裏町暮らし。ふつうの人ならとてもそのつらさに堪えられない。ところが、顔回は、そこにある楽しみを改めない。聡明だな、顔回よ」論語 加地伸行

 

 

 

「回」は、顔回(顔淵)のこと。姓は顔、名が回、字名が子淵。魯の国のひと。孔門十哲の一人、孔子最愛の弟子とされる。好学の士。

 孔子より30歳年少で、孔子61歳のとき、32歳で亡くなったという。これが通説だが、孔子71歳のとき、41歳で死んだという説もあるという。加地は29歳で亡くなった説を採用し、すべて白髪だったという。 

 桑原の解説。

 顔回が単純生活をしながら学問を楽しんでいることを、孔子が称賛したという。

 孔子は文化生活の尊重者であって、文化は生理的に生きながらえることだけを目標とする極度の単純生活の中には存在しにくいであろうという。孔子は衣食の面で単純主義に立っていないともいう。それでは古来の礼法は守れないだろうという。

 

 

 しかし孔子には、その反面、特権者たちの虚飾やぜいたくに対する倫理的反感が強いものとして常にあった。顔回の単純生活には「其の楽しみ」といいうるだけの独特のスタイルが単純のうちにあったに違いないと指摘する。 

 

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 コロナ渦で、不便な暮らしを強いられるようになった。桑原の指摘とは逆になるかもしれないが、こんなときだからこそ、そうした不便な暮らしの中に、ありがたみや楽しみを見出すべきなのかもしれない。便利になり過ぎて無駄が多いのかもしれない。

 そうすることで、文化についてもその有難みが認識できるのかもしれない。

 このコロナ渦を経験してそう思うようになった。

 

(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

  
論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫