「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【君子は徳を懐い、小人は土を懐う】 Vol.80 話題の「桜を見る会」

 

 子曰わく、君子は徳を懐(おも)い、小人は土を懐う。君子は刑を懐い、小人は恵みを懐う。(「里仁第四」11)

  

(解説)

「君子 教養人は善く生きたいと願うが、小人 知識人は安泰を願う。君子は責任を取る覚悟するが、小人はなんとか逃れたいと思う。」論語 加地伸行

 

 桑原はこう解説する。

 『懐とは、それをいつも思っていること、それを懐かしみ、そこに安住するという意味であろう。君子がいつも心に心にかけていることは道徳のことだが、小人が常に心にかけるのは故郷の土地のことである』(論語 桑原武夫

  桑原はまた徂徠の解釈を紹介する。

 『支配者が有徳であれば、人民は安じて故郷の土地を離れない。逃散しない。支配者がもっぱら刑罰のみに頼ろうとすると、人民はこの虐政を嫌い恩恵にのみあこがれる。そしてそれが得られないと逃散してしまう。治政者への訓戒だとするのである。きわめて明快な解だが、それだけに孔子がなぜこうしたわかりきった訓戒を、ことわざのようにして述べたのだろうと、いう疑問が残る』と指摘する。

  『君子と小人を対比し、前者をあげ後者をおとしめる言い方は当時よく行われていたというが、ここでは徳と土、刑と恵が韻をふんでいてことわざのようになっている。しかし、含みのはっきりせぬことわざでは困る』とも指摘する。

 

 

 「桜を見る会」が話題のようである。  

 「桜を見る会」の招待客に安倍首相の地元後援者が多数含まれていたという。

 

 君子は徳を懐い、小人は土を懐う

 事務所の相談があれば「意見を言うこともあった」と述べ、私人であるはずの昭恵夫人による推薦枠があったことも判明。(出所:日刊スポーツ)

www.nikkansports.com

 

 君子、小人の別なくして、地方から選出され国の代表となる首相もひとりの人間である。地元のことだけを優先して考える人がいても不思議でない。

 ただそうした人物を君子と呼ばないと、論語は教える。

 

桜を見る会」の報道を見ていると、徂徠がいうことがよく理解できる。

 小人は恵みを懐う。

 加地は、知識人はなんとか逃れたいと思うと解する。

 そんな人物が一国のリーダーであってよいのだろうかとつくづく感じる。

 

(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

  
論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)