「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【廏 焚けたり。子 朝より退く。曰わく、人を傷つけたるか、と。馬を問わざりき】 Vol.247

 

廏(うまや)焚(や)けたり。子 朝(ちょう)より退く。曰わく、人を傷つけたるか、と。馬を問わざりき。(「郷党第十」11)

 

  (解説)

孔子の邸の厩舎が焼けたことがあった。孔子が政庁より帰られたとき、「だれか怪我はしなかったか」とおたずねになった。しかし、馬のことは何もおたずねにならなかった。」論語 加地伸行

 

 桑原の解説

 孔子の家の馬小屋が火事で焼けた。孔子は朝廷から帰宅すると、まず「けが人はなかったか」と聞いただけで、馬のことは言わなかった。

 この章は孔子人間主義を端的に示していて面白いという。馬はどうでもいいというわけではないが、人間と動物の間に一線を画して、まず人間と考えるのが孔子の人間尊重の立場であり、この点、むしろ西洋風といえる。

 

 

 ただ、「憲問第十四」34は、いささか気になるという。「驥(き)はその力を称せず。その徳を称するなり」と孔子はいっている。驥とは一日に千里を走る名馬だというが、それをほめるのは脚力ではなく、その徳である、とはどういうことか。馬にも道徳があるというのか。もしそうなら、道徳をもちうる馬が焼け死んでも平気だ、とするのは矛盾ではなかろうかという。

 

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(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

  
論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫