人事院によれば、2014年度に採用された国家公務員の幹部候補である総合職(キャリア官僚)の23.2%が、この10年間で退職したそうです。
若手官僚、10年で23%退職 待遇不満、早期転身視野も | 共同通信
給与水準や長時間労働への不満が理由といいます。終身雇用の時代ではないのでしょうが、官庁がこのような状態で行政を正しく実施していくことができるのでしょうか。それでも、色々な問題解決を国に求めます。無理な要求ではないかと思えたりします。官僚機構も改革が求められていそうです。誰がそれを責任をもって遂行できるのでしょうか。
国に政策提言する経団連が昨年末、2040年を見据えた政策提言「フューチャー・デザイン2040」を発表しました。目指すべき未来の姿だといいます。現役世代の社会保険料の負担増を抑える税と社会保障の一体改革や原子力を最大限活用するエネルギー政策を柱にしています。
経団連・十倉雅和会長「税・社保改革逃げるな」 2040年見据え提言 - 日本経済新聞
デフレから完全脱却し「成長と分配の好循環」を軌道にのせ、個人消費を伸ばすためにも、現役世代の社会保険料負担の増加を抑える税・社会保障の改革を急ぐ必要があると訴えているといいます。
「現状の日本に対して抱く、強い危機感があったからです。世界で対立が深まってきている中で、日本はエネルギー自給率が低く、資源小国であるという宿命的な課題を抱えている。少子高齢化も進んでいます。こうした多くの課題を一度、俯瞰して見て、日本のあるべき姿を示そうとまとめたのが今回の提言です」と十倉会長は語っています。
さらに「特にお伝えしたいのは、複数の課題が絡み合っていることです。イノベーションに社会保障、教育、経済外交や地域経済などの課題が互いに関係し合っている。1つの課題を解消するために1つの政策だけを打ち出せばよいわけではありません。ある結果が別の原因を生み出して、またその原因が次の結果を生み出しているのです」と指摘しています。
経団連:FUTURE DESIGN 2040 (2024-12-09)
多くの大企業が参加する経団連がまとめる提言なのですから、よくまとまっているのでしょうでし、それなりに説得力もありそうです。しかし、はたして提言先の国は実行できるのでしょうか。いまだに裏金事件に揺れる政府自民党、人材不足の官僚機構です。それよりは提言をまとめた経団連、大企業主導で、責任をもって実行してもよさそうなものです。もうそろそろ古くさい慣習から抜け出るときではないでしょうか。
論語に学ぶ
邦に道有れば、言を危(みが)き行ないを危(みが)く。邦に道無ければ、行ないを危くも言は孫(したが)う。(「憲問第十四」3)
道理に従って政治がなされているときは、正しい主張、正しい実践を。もし道理に従って政治が為されていないときは、正しい実践はするものの、主張は控えめにしておくのがいいと孔子言いました。
正しい議論ができない環境下で、主張を通そうとすれば、その言葉があだとなって炎上し、舌禍となりかねないからなのでしょう。経団連の人たちにも学んで欲しい言葉です。今なすべきことは大風呂敷を広げることではなく、自ら正しく実行し、また道理のない政府に忖度したり献金するのではなく、諫言することではないでしょうか。
経団連の会長が今年5月に交代となるそうです。住友化学出身の十倉氏から日本生命保険会長の筒井氏へ。金融機関から初の登用で、製造業偏重からの転換を示す象徴的な人事といいます。
「筒井経団連」5月発足 日本生命出身の筒井義信新会長、製造業偏重から転換 - 日本経済新聞
経団連自らが変わる機会にして欲しいものです。賃上げなど解決しなければならない問題が山積みです。その多くが企業の力で解決できることではないでしょうか。そのために必要な時に政治を動かすくらいになってもらいたいものです。問い直す、考え直す力が求められていそうです。
日本経済の衰退、社会の荒廃を止める、そういう視座に立ち、科学的、疑問的態度で臨めば、やるべきこと、できることがまだまだたくさんあると気づきが得られるのではないでしょうか。
「参考文書」
経団連・十倉会長「日本は大切な財産を失う」 核融合炉規制の早期整備を要望:日経ビジネス電子版
十倉雅和経団連会長、任期切れ前に「消費税増税」への布石? 「金持ち増税」を打ち出した政策提言の中身と狙い:東京新聞デジタル
成長・分配の好循環つなぐ 経団連次期会長に日生・筒井氏 「機関投資家経験生かす」 - 日本経済新聞
経団連会長に日生の筒井義信氏 金融機関から初、5月就任 | 共同通信


