「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【君子に九思有り】「得を見ては義を思う」 Vol.430

 

孔子曰わく、君子に九思(きゅうし)有り。視(し)には明を思い、聴(ちょう)には聡(そう)を思い、色(しき)には温を思い、貌(ぼう)には恭を思い、言には忠を思い、事(じ)には敬を思い、疑(ぎ)には問(もん)を思い、忿(ふん)には難を思い、得(とく)を見ては義を思う(「季氏第十六」10)

 

(解説)

孔子の教え。「君子 教養人には心を尽くす九つのことがある。見るときは明瞭に、聴くときはうわべだけでなく、顔色はやわらかに、態度は謙遜して、言葉はまごころこめて、仕事には慎み深く、疑問には問うて残すことがなく、腹立ちには他に難儀が及ぼないように、利得があるときは正、不正を見きわめ、というようにだ」。論語 加地伸行

 

 現代語訳にするより、「論語」にある文のまま読んだ方がわかりやすいような気がする。

 「困」は、「困る」ことではなく、「学ぶ時の努力」という。

  

 「之」を「道徳」すると、少し重い気がする。「学び」の大切さを説いているのであろうし、自分の歩む道に活かされれば、それは智慧となるのだろう。

 

子曰わく、君子は博く文を学び、之を約するに礼を以てせば、亦(また)以て畔(そむ)かざる可きか。(「雍也第六」27)

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「子罕第九」11では、 顔回が、同じ言葉を用いて孔子の教導について述べている。

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「之」、「文」ということなのだろうか、それともこの「論語」ということなのであろうか。 

 

 

 

「得を見ては義を思う」との言葉を聞くと、渋沢栄一が説いた「道徳経済合一説」を思い出す。

  栄一は、企業の目的が利潤の追求にあることは間違いではないといいつつ、「その根底には道徳が必要であり、国、人類全体の繁栄に対して責任を持つことを忘れてはならない」と説いたという。

 その「得(利益)」は常に人の為に役立った結果なのか。そう問うているのだろう。

栄一は「義」をみんなのために考えることだという。「義」、正しき道とはそういうことなのかもしれない。

 

(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

  • 作者:加地 伸行
  • 発売日: 2009/09/10
  • メディア: 文庫
 
論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫
 

 

【困しみて学ばざる、民 斯れ下と為す】Vol.429

 

孔子曰わく、生まれながらにして之を知る者は、上(じょう)なり。学びて之を知る者は、次なり。困(くる)しみて之を学ぶものは、又其の次なり。困しみて学ばざる、民 斯(こ)れ下(げ)と為す(「季氏第十六」9)

 

(解説)

孔子の教え。「生まれつき道徳を理解している人間が、最高である。学ぶことによって道徳を理解する者は、それに次ぐ。努力して道徳を学ぶ者は、さらにそれに次ぐ。努力はするものの道徳を学ぼうとしない、そういう人々、これは最低である」。論語 加地伸行

 

「之」を加地は道徳として解する。

 「困」は、「困る」ことではなく、「学ぶ時の努力」という。

  

 「之」を「道徳」すると、少し重い気がする。「学び」の大切さを説いているのであろうし、自分の歩む道に活かされれば、それは智慧となるのだろう。

 

子曰わく、君子は博く文を学び、之を約するに礼を以てせば、亦(また)以て畔(そむ)かざる可きか。(「雍也第六」27)

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「子罕第九」11では、 顔回が、同じ言葉を用いて孔子の教導について述べている。

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「之」、「文」ということなのだろうか、それともこの「論語」ということなのであろうか。 

 

(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

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  • 作者:加地 伸行
  • 発売日: 2009/09/10
  • メディア: 文庫
 
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  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫
 

 

【君子に三畏有り】Vol.428

 

孔子曰わく、君子に三畏(さんい)有り。天命を畏(おそ)れ、大人(たいじん)を畏れ、聖人の言を畏る。小人は天命を知らざれば、畏れず。大人に狎(な)れ、聖人の言を侮る(「季氏第十六」8)

 

(解説)

孔子の教え。「君子 教養人が畏れ慎むものに三つある。天命を畏れ、聖人を畏れ、「聖人」のことばを畏れる。小人 知識人は天命を理解しないのでそれを畏れない。狎れ狎れ(なれなれ)しく聖人を自分と同程度と思っている。また、「聖人」のことばを軽んじ侮っている」。論語 加地伸行

 

 加地は「大人」を聖人とし、「聖人」は完全な人格者とする。

  

 「述而第七」25で、加地は、生まれたとき、人間は何も持っていないが、知識・学問を学んで「小人」知識人となることができ、同時に道徳的修養を積んで教養人となる。それが君子であるといい、その君子から、さらに知識・修養を深め、その究極に至ったものが「聖人」であるという。

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「関連文書」

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(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

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  • 作者:加地 伸行
  • 発売日: 2009/09/10
  • メディア: 文庫
 
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  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
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【君子に三戒有り】Vol.427

 

孔子曰わく、君子に三戒(さんかい)有り。少(わか)き時は、血気未だ定まらず。之を戒(いまし)むるは色に在(あ)り。其の壮なるに及びては、血気方(まさ)に剛(つよ)し。之を戒むるは闘(たたか)いに在り。其の老ゆるに及びては、血気既に衰う。之を戒むるは得に在り(「季氏第十六」7)

 

(解説)

孔子の教え。「君子 教養人とて三つの戒めがある。青年期は身体の欲求が不安定で動物的である。その性欲を戒めよ。壮年期は身体の欲求が盛んであるので他者の負けまいとする。その競争欲を戒めよ。老年期は身体の欲求が衰え失うことを恐れる。その物欲を戒めよ」。論語 加地伸行

 

 時代背景はあってのことかもしれないが、渋沢栄一は道徳を口にするわりには女性関係にだらしなかったという。 

「婦人関係以外は、一生を顧みて俯仰天地に愧じず」と言ったとか。

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 人間の性、こればかりは本能にも通じなかなかコントロールし難いのかもしれないが、これを戒めとして、その力を何か別なことに転嫁できれば君子にも近づくのだろう。

 

(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

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  • 作者:加地 伸行
  • 発売日: 2009/09/10
  • メディア: 文庫
 
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  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
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【君子に侍するに三愆あり】Vol.426

 

孔子曰わく、君子に侍(じ)するに三愆(さんけん)あり。言(げん)未だ之に及ばずして言う、之を躁(そう)と謂(い)う。言 之に及びて言わず、之を隠(いん)と謂う。未だ顔色を見ずして言う、之を瞽(こ)と謂う(「季氏第十六」6)

 

(解説)

孔子の教え。「上位の人に付き従うときに、三つの過ちがある。まだ自分の番が回ってこないのに発言する、これはせっかち。自分が話す番になったのに発言しない、これは隠しだて。上位の人の気持ちを無視して発言する、これは勝手放題」。論語 加地伸行

 

 忘れがちなコミュニケーションの基本。

 自由闊達に話すというのはこうした基本あってのことなのではないだろうか。

 

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(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

  • 作者:加地 伸行
  • 発売日: 2009/09/10
  • メディア: 文庫
 
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  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫
 

 

【益する者の三楽あり。損なう者の三楽あり】Vol.425

 

孔子曰わく、益する者の三楽(さんらく)あり。損(そこ)なう者の三楽あり。礼楽(れいがく)を節するを楽しみ、人の善を道(い)うを楽しみ、賢友(けんゆう)多きを楽しむは、益するなり。驕楽(きょうらく)を楽しみ、佚遊(いつゆう)を楽しみ、宴楽(えんらく)を楽しむは、損なうなり(「季氏第十六」5)

 

(解説)

孔子の教え。「有益な楽しみに三種、有害な楽しみに三種ある。正統な礼楽のほどよきことを楽しみ、他者の善行や美点を褒めることを楽しみ、賢明な友人が多いことを楽しむ、これは有益である。しかし、贅沢な楽しみ、気ままに遊びに熱中しての楽しみ、酒色に溺れての楽しみは、有害である」。論語 加地伸行

 

 

 「疏食(そし)を飯(く)らい、水を飲み、肱を曲げて之を枕とす。楽しみ亦その中に在(あ)り。不義にして富み且つ貴きは、我に於いては浮雲の如し」(「述而第七」15)と孔子はいう。 

 単純生活をしていても、楽しみはやはりその中に見出される。それは学問をしており、そこでの進歩が日々に感じられるからであろうと桑原は解説する。 

後段は、これに対立するものとして、富貴の生活、豊かな生活があげ、もしそれが「不義」つまり不正を行うことによって得たものであるならば、この私には空に浮かぶ雲のようなものにすぎない、という。

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 孔子は、贅沢な生活をしている連中を否定はしないが、それでは真に「楽」楽しむという境地に達しないとでも言っているのだろうか。

 

 名宰相と言われる「管仲」に対する孔子の評価がそれを表しているのかもしれない。

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「知者は水を楽(この)み、仁者は山を楽む。知者は動、仁者は静。知者は楽しみ、仁者は寿もてす」(「雍也第六」23)と、孔子はいう。

孔子は水も美しい、山も美しい、とみているという。知者は楽しむ、の場合の楽しむには上品な意味での快楽、エピクロスが求めたようなものとしての快楽の語感がある。仁者は快楽を否定する禁欲主義者では決してないが、歓楽をたのしみにまで減速濾過することによって、生命を静かに永くするのであるという」と桑原は解す。

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 知者と仁者を高低なく、むしろ人間類型におけるふたつの優れたタイプとみたいと桑原はいう。

 

 「人にして不仁ならば、礼を如何せん。人にして不仁ならば、楽を如何せん」(「八佾第三」3)と孔子はいった。

  「礼節は仁の貌(表現)」であり、「楽は仁の和(ハーモニー)」であるという。

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 この章で孔子が指摘した益者の三楽には、仁の和、人と人のハーモニーといっている気がする。

 

(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

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  • 作者:加地 伸行
  • 発売日: 2009/09/10
  • メディア: 文庫
 
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  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
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【益する者の三友あり。損なう者の三友あり】Vol.424

 

孔子曰わく、益する者の三友あり。損(そこ)なう者の三友あり。直なるを友とし、諒(りょう)なるを友とし、多聞(たぶん)なるを友とするは、益するなり。便辟(べんへき)なるを友とし、善柔(ぜんじゅう)なるを友とし、便佞(べんねい)なるを友とするは損なり(「季氏第十六」4)

 

(解説)

孔子の教え。「自分にとって有益な三種の友がある。逆に、有害となる三種の友がある。まっすぐな友、義理固い友、博識の友、これは有益である。しかし、追従する友、裏表のある友、口先の巧みな友、これは有害である」。論語 加地伸行

 

 

  

 「忠信を主とし、己に如かざる者を友とする無かれ。過ちては則ち改むるに憚ること勿れ」(「学而第一」8)と孔子はいう。 

「忠」とはまごころ、「信」は約束を違えぬこと。

「忠信」とはそうしたよい性質をもつ人間を指す。

「まごころがあって嘘をつかない人と馴れ親しんで、自分より劣る者を友人とするな。過ちをおかしたならば、素直に改心して改めるべきである。こだわってはならない」と 桑原は解した。 

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 孔子は、友の選択の必要を説いているのだろう。まずは小さい範囲で忠信を尽し、さらにおのれの能力に応じて行動半径を広げてゆくことを求めていると桑原はいう。 

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「関連文書」

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論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

  • 作者:加地 伸行
  • 発売日: 2009/09/10
  • メディア: 文庫
 
論語 (ちくま文庫)

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  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
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