「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【己を脩めて以て百姓を安んず。己を脩めて以て百姓を安すんずるは、尭 舜も其れ猶 諸を病めり】 Vol.376

 

子路(しろ) 君子を問う。子曰わく、己を脩(おさ)めて以て敬す。曰わく、斯(かく)の如きのみか、と。曰わく、己を脩めて以て人を安んず、と。曰わく、斯の如きのみか、と。曰わく、己を脩めて以て百姓(ひゃくせい)を安んず。己を脩めて以て百姓を安すんずるは、尭(ぎょう)舜(しゅん)も其れ猶(なお)諸(これ)を病めり、と(「憲問第十四」42)

 

(解説)

子路が教養人(君子)とは何でしょうかと質問した。孔子はこう答えた。「自分の修養に努め、敬(つつ)しみを信条とすることだ」と。子路が言った。「それに努めればよろしいのですか」と。孔子はさらに「自分の修養に努め、一族や友人を安心、満足させるのだ」という。子路は「それに努めればよろしいのですか」と質問する。孔子はこう答える。「自分の修養に努め、世の人々すべてを安心、満足させるのだ。この己の修養に始まって天下の人々を幸福にするに至るというのは、尭や舜のような完全な人格者であってもなかなか難しいとしているのだ」と。論語 加地伸行

 

「百姓」は、世のすべての人々との意。

 

「雍也第六」30で、子貢が孔子に、「如(も)し博く民に施して能(よ)く衆を済(すく)う有らば、何如。仁と謂う可(べ)きか」と孔子に質問し、

孔子は、「何ぞ仁を事とせん。必ずや聖か」と答え、

この章と同じように「堯(ぎょう) 舜(しゅん)も其れ猶諸(これ)を病めり」といい、

続けて「夫れ仁者は、己立たんと欲すれば人を立つ。己達せんと欲すれば人を達す。能(よ)く近くに譬(たと)えを取るは仁の方と謂う可きのみ」と答え、子貢に対して、あまり高遠なことを考えず、もう少し具体的に身に即した発想をすべきであると、さとしたという。

 

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尭 舜も其れ猶 諸を病めり

 孔子子路に対しては、「己を脩めて以て百姓(ひゃくせい)を安んず」という。

 

 

子路」、姓は仲、名は由、字名が子路孔子の弟子で、孔子より9歳年少。孔門では年かさの弟子。顔回(顔淵)とともに「論語」の二大脇役。

もとは遊侠の徒で、孔子にからみに来て論破され、心服して門に入ったという。率直勇敢な情熱家で、孔子に愛された。大国の軍政のきりもりを任せられる人材と桑原はいう。子路は晩年、衛の国に仕えるが、内乱に巻き込まれ殺される。彼が死んだとき、孔子は「天われを祝(た)てり」と嘆いたという伝説があるという。「祝」は「断」と同じ。 

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 子路が「政」を問うたとき、孔子は、「之に先んじ、これを労す。益(ま)さんことを請う」といい、さらに「倦(う)む無かれ」と答えた。(「子路第十三」1)

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 君子を問うた子路に、孔子は真っ先に、「己を脩(おさ)めて以て敬す」と答えた。

「敬」、他人を尊んで自分の挙動をつつしむ。うやまいとうとぶとの意味がある。

大国を治めることができる逸材と言われながらも、「敬」に欠けるところがあったのだろうか。

 

 

そんな子路孔子は、 「子路は行行(こうこう)如(じょ)たり」といい、「由が若(ごと)きは其の死然(しぜん)を得ざらん」という。

 孔子子路の勇壮さを愛した一方で、「由(子路)君は天寿を全うできるかな」と、その性格の危うさを心配していたのだろう。

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 (参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

 
論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫