「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【君に事えては其の事を敬み、而して其の食を後にす】Vol.416

 

子曰わく、君に事(つか)えては其の事を敬(つつし)み、而(しか)して其の食を後にす。(「衛霊公第十五」38)

 

(解説)

孔子の教え。「主君に仕えるときは己の職務を着実に務めることだ。その待遇は後の話だ」。論語 加地伸行

 

子張が「」を得る方法を孔子に尋ねたのは「為政第二」18。

「多く聞きて疑わしきを闕(か)き、慎んで其の余を言えば、則ち尤寡(とがすく)なし。多く見て殆(あや)うきを闕(か)き、慎んで其の余を行なえば、則ち悔い寡なし。言尤寡なく、行ない悔い寡なければ、「禄」 其の中に在(あ)り」と教えた。

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 言葉に過ちが少なく、行動に悔いがなければ、その中に「禄」があるという。 
 

 

 弟子の樊遅が「人格を高め、心の中の悪を正しく、迷いを分別することができましょうか」と、孔子に質問したのは「顔淵第十二」21のこと。

事を先にして得ることを後にするは、徳を崇くするに非(あら)ずや。其の悪を攻(せ)めて人の悪を攻むること無きは、慝を脩むるに非ずや。一朝(いっちょう)の忿(いか)りに其の身を忘れて、以て其の親に及ぼすは、惑えるに非ずや」と、孔子は教える。  

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 赴任していたマレーシアの工場には季節になるとマンゴの実がたわわに実っていた。たった一粒の種子から育ったマンゴの木がやがて成長すると数えきれないくらいの果実をもたらす。

 米も同じ。一粒の米を蒔けば稲として育つ。新芽を苗床で育て、そして田植えをする。稲は水田で育ち、秋になるとその稲は黄金色の実をつける。たった一粒の米から育った稲が大きな実りをもたらしてくれる。

 仕事、労働があるから稲もたわわに実る。水田の草取りや水の管理が丹念に行わなければ、米は実らないのかもしれない。

 

 君に事えては其の事を敬み、而して其の食を後にす 、とはこういことなのかもしれない。

 

「速やかならんと欲する無かれ。小利を見ること無かれ。速やかならんと欲すれば則(すなわ)ち達せず。小利を見れば、則ち大事成らず」。

   筥父という地方の長官になり、「政」を問うた子夏に孔子が教えた言葉だ(「子路第十三」17)。

 

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 目先の利益・便益ばかり追うのでなく、日々、目的をもって精進すれば、その後の利益は計り知れないほど大きくなるということでもあろう。

 

(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

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  • 作者:加地 伸行
  • 発売日: 2009/09/10
  • メディア: 文庫
 
論語 (ちくま文庫)

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  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫