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オーバーツーリズム、日本人観光客離れ、「円安」が招いたインバウンドのひずみ

 国を挙げて歓迎したインバウンドが、今や「オーバーツーリズム」として批判され、一部で排外主義的な感情すら生むようにもなっています。

歓迎ムードから不満へ—「迷惑な客」がなぜ生まるのか?

 訪日外国人が短期間で急回復したことが、一部で観光客への反感を助長し、排外主義的な感情を生む一因となっているようです。政府政策が「量」を重視しすぎた結果、「住民生活」と「観光客」との間で利益と負担のバランスが崩れたことで生じる、社会的なひずみといわれます。排外主義的な感情は、人種や文化そのものへの嫌悪感だけでなく、生活環境の悪化という現実的な不利益が引き金となることが多く、インバウンドの急増はまさにこの状況を生み出んだようです。

 

 

  増加した観光客による公共交通機関の混雑、ゴミ問題、騒音、そして観光地周辺の宿泊費や物価の高騰といった「コスト」は、主に地元住民が負うことになりました。一方、観光による経済的な「利益」は、一部の観光業者、大企業、都市部の不動産所有者に集中しがちです。利益を受けていない、あるいはむしろ生活を脅かされていると感じる住民の間で、「なぜ自分たちが外国人のために我慢しなければならないのか」という不公平感が生まれ、それが外国人全体への反感へと転化しているようです。

 この急激な国民感情の変化の裏側には、単なるマナーの問題だけではなく、何か違う要因もありそうです。

為替が観光客を「爆買い」に駆り立てたメカニズム

 円安が、日本を外国人にとって「世界一安価な先進国」にしてしまいました。2012年頃は1ドル80円台でしたが、現在(2025年10月時点)では1ドル150円超となり、急激に円安が進んでいます。これは、外国人にとっては、日本の全ての価格が約半額になったという経済的なインパクトとなっています。この急激な円安が、価格に敏感な層まで日本へ呼び込み、「数」を爆発的に増加させることになりました。この「量」の追求(政府政策を含めて)が、一人当たりの消費単価の低さや、一部の観光客によるマナー問題を引き起こす土壌を作ったといってもよさそうです。

国民感情のひずみ—「円安が生んだ不公平感」

「オーバーツーリズム」、どうやら「為替(円安)」というマクロな経済要因が深く関わっていそうです。

 外国人観光客にとっては、「安く」旅行でき、「爆買い」もできるという利益(メリット)があるの対して、受け入れる側としては、公共交通の混雑、観光地周辺の宿泊費・物価の高騰、そして日本人自身の国内旅行離れを引き起こす問題になりました。つまり、外国人と日本人の間での負担のバランスが壊れているのです。こうした状況下では、利益を得ていない、むしろ生活が苦しくなっていると感じる住民は、「迷惑の元凶=外国人観光客」という認識をもちやすくなります。これは外国人や文化への直接的な嫌悪というより、経済的な不公平感と生活環境の悪化が引き起こした防衛感情のようなものなのかもしれません。

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 政府は現在、従来の「量」の追求から「質(高付加価値化)」と「持続可能性」に軸足を移し、排外主義的な感情の根本原因であるオーバーツーリズムの解決を目指しています。

政策の方向性 具体的施策 排外主義の抑制効果
負担の公平化 入域料・宿泊税の導入支援(財源確保) 観光客に地域インフラ維持や住民生活保全のコストを負担してもらい、住民の不公平感を軽減する。
混雑の解消 交通機関の分散、時間帯の分散、完全予約制の導入支援。 住民の「日常の快適性」を取り戻すことで、外国人への不満の根源を断つ。
住民との協働 地域住民の意見を反映したDMOによる観光計画策定を支援。 住民を「被害者」ではなく、「観光の担い手・管理者」として位置づけ、観光客との共存体制を築く。

 これらの政策は、「インバウンドを完全に止める」のではなく、「住民生活の質を維持しつつ、観光の利益を享受できる、持続可能な共存モデル」を構築することで、排外的な感情の助長を食い止めようとするものです。

 

 

為替(円安)からの脱却という仮説

 もし円安が是正され円高が進めば、短期的にインバウンドの「数」は減少するかもしれません。同時に国内の混雑も緩和に向かい、国民の不満を和らげる効果がありそうです。円高は、日本での宿泊費や消費コストが割高になるため、訪日旅行者数(量)の増加ペースが鈍化したり、減少に転じたりする可能性がありそうです。

 このインバウンド需要の鈍化に、新規ホテルの開業などによる供給の増加が重なれば、これまでインバウンドが牽引してきた宿泊費の高騰は落ち着きをみせ、地元住民や国内旅行者にとって宿泊しやすい価格帯に戻る可能性もありそうです。

 円高への是正は、「量より質」への転換を強制的に加速させる要因となり、排外主義的な感情の根本的な原因である「混雑」や「生活コストの圧迫」を和らげる効果が期待できそうです。

 もしかして、為替という経済の波に左右されない、国民が誇りを持て、そして地元住民が歓迎できる観光のあり方こそが、今後目指すべき「真の観光立国」ということなのかもしません。

真の「観光立国」へ

 そのためには、「観光客にもコストを負担してもらう仕組み(入域料など)」を整備し、国民の生活と両立させる必要がありそうです。さらにインバウンドがより持続可能なものにしていくには、「本質的な魅力(コンテンツ)」の整備も欠かせないのでしょう。それが混雑を嫌う富裕層やリピーターを呼び込むことになっていくのではないでしょうか。

論語でまとめ

君子は急なるを周くして、富めるに継がず。(「雍也第六」4)

 君子は、困窮している人を徹底的に助けるが、すでに富んでいる者をさらに儲けさせるようなことはしないと孔子は言いました。 

 弟子の子華が斉(せい)の国へ使いに行く際、弟子の冉求が母への手当として穀物を与えてほしいと願い出ました。孔子は、食糧2週間分にあたる「釜(ふ)」を与えなさいと指示しました。が、冉求はさらに増額を求め、孔子は3週間分の「庾(ゆ)」で十分だと答えました。しかし、冉求は勝手にそれまでの50倍もの大金を与えてしまいました。このことを知った孔子は、冉求を厳しく叱ります。「赤(せき:子華のこと)は立派な馬に乗り、高級な毛皮を着ている。すでに裕福なのだ」。「困っている人を助けるのが君子であり、すでに富んでいる人を助けるのは筋違いだ」といったといいました。

 救済の精神は本当に困っている人に向けるべきであり、利害関係によって人をえこひいきしてはならないと孔子は教えるのです。

観光客の哲学 増補版

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 円安が進んで、これまでのデフレがあっという間に消え失せ、物価は高騰を続けます。インフレの時代に様変わりのようです。この円安によるデメリットが色々顕在化しています。インバウンドもこのひとつといえるようになっています。これに反して、輸出型大企業などは円安のメリットを享受しています。インバウンド関連の大企業もまたそうなのでしょう。

 公平性が薄らいでいくようです。為替トレンドを反転させるべきなのかもしれません。そうできればいいのでしょう。しかし、そうならないのであれば負担のバランスをよくよく検討すべきときではないでしょうか。

 ☆

 高市トレード再ブーストなのでしょうか。日経平均株価が5万円を突破しました。円安も一段進んでいます。高市政権の「責任ある積極財政」政策のおかげでもあるのでしょう。

「君子は急なるを周くして、富めるに継がず」。政府政策のこの教えに反しているようですね。

 

「参考文書」

京都だけじゃない日本人観光客離れ 東京など35都道府県で宿泊者減少 - 日本経済新聞

社説:インバウンド過去最多 生活環境守る視点忘れず | 毎日新聞

 


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(今日の中国の歌:陳慧嫻さんの「千千闕歌」。近藤真彦さんの「夕焼けの歌」を広東語でカバーしています。広東語がよく使われるマレーシア クアラルンプールで聞いたのか、それとも違う場所だったかと記憶が途切れています。今週、外交の場にもなったマレーシア。多民族国家で華僑の人口が約25%占めます。地域地域で使われる中国語が異なります。私が駐在していたペナンでは福建語をよく耳にしました。トランプさんや高市さんが訪れたクアラルンプールでは広東語。共通語としては普通語(北京語)が使われます。広東語といえば、シンガポールに転勤後、私の部下だったシンガポール女性は広東語が世界で一番きれいな言葉といっていたと思い出します。発音が柔らかに聞こえるからなんですかね(個人の感想ですが)。)