「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

これって黄金時代なの? ~論語の視点から批判的思考を深めてみよう~

 トランプさんが来日し、高市さんと首脳会談が行われました。トランプ一色、注目度の高さがうかがえます。メディアはトランプさんを追っかけ、羽田空港到着から皇居までの移動を生中継したり、連日大忙しです。

高市首相、トランプ氏と初会談「日米の新たな黄金時代つくりたい」 - 日本経済新聞

「新たな黄金時代」、高市さんも負けず劣らずです。メディア各社の世論調査で高い支持率をたたき出し、若年層の支持が高いそうです。「高市トレード」で、日経平均株価は5万円を超え、ニュースは賑わいを見せます。

 

 

 しかし、現実社会は激動の時代を迎えて、世の中は次から次へと生じる問題に右往左往、ニュースが伝える高揚感とは異なっているようです。いったいこのギャップは何なのでしょうか。

論語でまとめ

季氏、泰山に旅す。子、冉有(ぜんゆう)に謂いて曰わく、女(なんじ)救うこと能(あた)わざるか。対(こた)えて曰わく、能わず。子曰わく、嗚呼、曾(すなわ)ち泰山を林放にも如(し)かずと謂(い)えるか。(「八佾第三」6)

 魯の国の実効支配者 季孫氏(きそんし)が泰山(たいざん)で祭祀を執り行おうとしました。孔子は弟子の冉有に「お前は止めさせることができなかったのか」といいました。冉有が「できませんでした」と答えると、「ああ、泰山は林放(りんぽう)にさえ及ばないというのか」と孔子はいい、礼儀にかなっていない祭祀を行った権力者の傲慢さを批判しました。

 この孔子は言葉は、権力者の横暴に対する孔子の憤りを象徴しているといわれます。また、弟子の冉有が主君の不正を止められなかったことを嘆き、指導者としての責任を問うています。

  孔子は、民を顧みない政治への批判も容赦がありません。権力者の勝手な振る舞いや重税によって民が苦しめられる政治の恐ろしさを、人食い虎に例えて、「苛政は虎よりも猛なり」といって厳しく批判します。この言葉は、『礼記』「檀弓(だんぐう)篇」に出てきます。泰山の麓で、虎に夫や息子を殺された女性が、それでもこの地を去らない理由を「苛酷な政治がないからです」と答えたのを聞いて孔子は、「厳しい政治は人食い虎よりも恐ろしい」と弟子に教えたといいます。

 孔子が生きた時代は、王権が衰え、有力な家臣が専横を極める「礼崩楽壊=儀礼や道徳などの社会規範が崩壊し、音楽や文化が堕落、社会秩序が乱れる状態」の時代だったといわれています。「礼」は、儀礼、礼節、規範、社会秩序を意味し、楽(がく/らく)は音楽、舞踏、文化を指します。

 

 

 こうした孔子流批判を現代に活かしてもよいのではないでしょうか。現代もまた「礼崩楽壊」のようなものなのですから。

トランプ氏「この女性は勝者だ」 高市氏、跳びはね右手突き上げ | NEWSjp

 孔子の思考は倫理的・規範的な原理に基づいているといわれます。孔子が生きた春秋時代は、形骸化した権力や制度で、社会が混乱していました。孔子は単純な現状追認を拒否し、権力が「力」や「地位」のみで正当化されるのではなく、「徳(仁)」という普遍的な倫理的原理に基づいて行使されるべきだと主張します。これは、情報や権威を無批判に鵜呑みせず、「権力の真の正当性はどこにあるのか?」という根本的な問いを立てようとした試みといわれています。

 また、孔子は、権力者が守るべき規範として「仁」「礼」「義」といった倫理的な枠組みを提示します。例えば、為政者は自ら「正(ただ)しい」行いをすることで民を導くべきであり、そうでなければ権力は腐敗し、統治は成り立たないと説きます(「為政第二」1)。これは、「徳」と「統治の成果」の間の論理的な関係を構築しようとする試みです。

 また、 弟子たちに「学びて思わざれば則ち罔し、思いて学ばざれば則ち殆うし(学びっぱなしでは道理がわからず、考えっぱなしでは独断に陥って危うい)」と説きました(「為政第二」15)。これは、知識(学ぶこと=他者の意見や文献)と、それに対する内省・検証(思うこと=批判的思考)の両方のバランスをとる重要性を説きます。独善を否定し、学習を重視します。現代の批判的思考の姿勢ということでしょうか。

 孔子は「論語」において、社会や権力のあり方を規範的・道徳的な原理に基づいて批判的に検討し、再構築しようとしていたようです。この批判的思考は、効率を追う現代社会でも十分通用しそうです。社会が混乱し、権力が「力」で正当化するこの時代においては、この「物事の前提や価値観を深く掘り下げて検討する思考」:批判的思考を積極的に活用すべきなのかもしれません。支配者への直接的な反逆ではなく、道から外れる権力者に対し「静かなる警告」との意味において批判の声をあげるべきではないでしょうか。

 

 

 孔子のこの「現状否定」の精神は、「人間として、組織として、本当に正しい、倫理的に妥当なものか?」という規範的な問いを持つべきだという視点を与えてくれます。

 現代においては、これをクリチカル・シンキング(批判的思考)と呼びます。この思考法は、情報過多で不確実性の高い現代社会(VUCA時代)を生き抜くための強力な武器となります。しかし、日本の組織文化の中ではしばしば摩擦を生む可能性もあります。このギャップを乗り越え、批判的思考を変革の推進力に変えるためには、単なる「否定」に陥ることなく、「提案」として言語化することが求められます。

 

 今週は、ASEAN首脳会議に始まり、APEC首脳会議、米中首脳会談と重要イベントが続き、アジアに注目が集まっています。この機会に、現状を無批判に受け入れるのではなく、孔子のように批判的なものの見方から、より良い未来を考えてみてもいいのではないでしょうか。これまでとは違った風景をみることが出来るかもしれません。

 

 

「参考文書」

「トランプ俺様東アジア外交」で高市首相に必要なトリセツとは | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

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(今日の中国の歌ではなく、日本の歌で。マレーシア ジョホールバルのホテルに滞在していたときのこと。夕飯時ののレストランにマレーシア人の流しが現れ、ギター一本で「長崎は今日も雨だった」(内山田洋とクールファイブ)を歌ってくれました。とっても上手で、長い滞在で疲れた心が癒され、印象に残りました。「花の時・愛の時」(前川清)はシンガポール駐在時の上長の愛唱歌です。よく聞かされて、前川清さんを見る目がかわりました。)

 

花の時・愛の時

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