「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

緩んだ財政規律に疲弊する日本、アイフォン値上げ、止まらぬ円安に物価高

 

 米アップルのスマートフォンiPhone」などが一斉に値上げになりました。米国で値上げになっていないことより、急激な円安が要因といわれています。これほど円が弱い通貨になってしまったことにショックを受けます。

 それでも相変わらず日銀も政府も政策を変えることはないようです。

日銀総裁が緩和堅持表明、「世界的インフレの影響それほど受けず」 | ロイター

 足元での物価高騰はエネルギー由来によるとものとし、日銀が望む緩やかな物価上昇ではないとし、政策を変更する理由にならないとの説明のようです。

「経済発展のために金融政策で物価を安定させること」と、日銀の黒田総裁がスイスで開催された国際決済銀行セミナーで発言したといいます。望む物価の上昇ではないのかしれませんが、いずれにせよ物価は上昇しています。「金融政策で物価を安定させること」が日銀の使命であるなら、対応するのが筋のように思えます。

 

 

 全国銀行協会の会長に就任した三菱UFJ銀行の半沢頭取が読売新聞のインタビューに応じ、「日本経済に負の影響を与えているのであれば、金融政策の副作用かもしれない」と指摘したといいます。

半沢・全銀協新会長「効果と副作用のバランスとった政策運営を」…急激な円安で日銀に注文 : 読売新聞オンライン

 読売新聞によれば、半沢会長は日本銀行に対し「政策効果と副作用とのバランスをとった政策運営を期待したい」と求めたそうです。経済界も日銀の政策を疑問視しているということなのでしょう。

 それでも日銀は国債購入を続けています。6月の国債買い入れ額が、月間で過去最大に膨らんだといいます。日銀の政策修正に期待した海外投資家などによる国債の売り圧力が強まり、日銀の買い入れ額が急増したそうです。

国債買い入れ、過去最大 6月、金利抑制で急増―日銀:時事ドットコム

 世界の多くの国が金融引き締めに動く中で、日本だけが異質なものに見えてしまいます。投機筋が日本国債を売り出すのもわかるような気がします。

論語に学ぶ

子貢(しこう)問いて曰わく、師と商とは孰(いず)れか賢(まさ)れる、と。子曰わく、師や過ぎたり。商や及ばず、と。曰わく、然(しか)らば則ち師は愈(まさ)れるか、と。子曰わく、過ぎたるは猶及ばざるがごとし、と。(「先進第十一」16)

 弟子の子貢が「師(子張)と商(子夏)と、どちらがすぐれていますか」と尋ねたところ、孔子は「師は過ぎたり。商は及ばず」と答えました。子貢は「では師のほうがすぐれているのですか」と尋ねると、孔子は「過ぎたるは猶及ばざるがごとし」、「過」も「不及」も同格であって、多いも少ないも中庸を失っている点では、ともに良くない」と教えたといいます。

dsupplying.hatenadiary.jp

 頃合いを過ぎれば調整し、ちょうどよい塩梅を保つようにするのがいいことなのでしょう。異様にふくれ上がっている国債発行額、それに比例するかのような日銀のバランスシート、それが突出したものに見えれば、投機筋が仕掛けてくるのもわかるというものです。こうした格言をきちんと理解しているのでかもしれません。

 

 

 6月の消費動向調査からは、1年後に2%以上の物価上昇率を予想する世帯は約9割に達したといいます。一方、7月1日に発表された日銀短観では、大企業非製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は改善しプラス13となったといいますが、一方、製造業のDIは5ポイント悪化し、プラス9となったといいます。

日銀短観 大企業製造業の6月景況感、2期連続で悪化: 日本経済新聞

 また、企業の消費者物価見通しは、大企業製造業で1年後の見通し平均は前年比2.0%上昇、全規模全産業は2.4%上昇となっているといいます。一方、企業間が急激なコストの上昇分を製品やサービスの価格に十分に転嫁できていない結果も明らかになったといいます。値上げ圧力が収まっていないということでよいのでしょうか。

 統計データと日銀総裁の言葉に齟齬があるように感じてしまいます。こうしたことを無視し、円安による犠牲を強いてまで、金融緩和を続ける理由が別なところにあるということなのではないでしょうか。

中央銀行国債の)保有割合が増えるほど金利は上がりにくくなり、財政規律の緩みにつながりやすい(出所:JIJI.com)

 

 

 選挙前なので政策転換することが難しいのでしょうか。ポイント付与とかお金を湯水のように政権下では、財政規律を引き締めることは難しいことなのかもしれません。円安基調に当面変化はなさそうです。変化があるとすれば、良くも悪くも米国の景気次第ということでしょうか。  

 

「参考文書」

日銀短観 急激なコスト上昇 価格に十分転嫁できず 収益圧迫 | NHK | ウクライナ情勢

日銀短観に見る物価高の深刻度と物価高対策の検証 | 2022年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)