日銀が金融政策を正常化に向け舵を切りましたが、先行きに対して強気の投資家たちが安心感を持ち続けているため、株価は好調維持しているようです。政策変更を好感とする意見がある一方で、厳しい評価もあるようです。止まらない円安と膨れ上がった日銀のバランスシートへの懸念がその理由のようです。
植田日銀の「バターナイフ利上げ」、市場は無視し円安・株高進む | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
評価とはそんなものなのでしょう。何を視点とするかにもよるのでしょうが、清濁併せて吞みこんでいかなければならないのかもしれません。いずれにせよ、当面は円安が続き、株価は好調を維持しそうです。
足元においては投資家の期待にこたえて改革を進め、結果を出し続けることが好調さを維持していくために求められているようです。一方、長期的には確認されている諸問題をどう解消していくかが課題になっています。
ETF処分、見えぬ出口 37兆円、株価急落リスクも―日銀:時事ドットコム
今回の日銀の政策転換も単に改革の端緒についた過ぎないということでしょうか。見えてきた多層的な課題からして、この先、政府も企業も改革を継続していかなければならず、大胆にそして細心の注意を払いながら行動することが求められているようです。それだけの胆力と実力向上は不可避なのでしょう。
再利上げ
そんな中、投資家は早くも日銀の追加利上げに踏み切るタイミングを気にしているといいます。エコノミストらの予想は10月までに日銀が再利上げに動くと読んでいるようです。
日本株ブームは終わらない、企業業績信頼で17年ぶり利上げにもめげず - Bloomberg
仮に日銀が再利上げに踏み切り、円高に転じたとしても、注目株が外需関連株から内需関連株に移るとの楽観論もあるようです。実質賃金が早ければ夏頃にはプラス転化するという見通しで、実質購買力が上がれば、内需企業に大きなメリットが出てくるといいます。それゆえの強きということでしょうか。
ただ政府見通しの通りにCPI 消費者物価指数が低下せずに、インフレが定着すれば、内需について懐疑的になる可能性もあるようです。内需が振るわなくなれば、賃金上げが厳しくなり、無理に上げれば、労働分配率は低下し、企業の収益や利益が圧迫されることになるといいます。
さて、日銀の再利上げはあるのでしょうか。想定以上に物価が上昇したり、円安が過度に進行するときがそのタイミングになるのではないかとみる専門家もいるようです。いずれにせよ、経済が好循環を阻害することがあってはならないのでしょう。多少の浮き沈みはあることは自然なこととして許容しても、二度と「失われた時間」に舞い戻ることだけは避けなければなりません。投資ブームが巻き起こっているのですからなおさらです。
リスク
いつのときもそうなのかもしれませんが、この先のリスクはやはり政治になのかもしれません。弛緩しきった財政運営、膨れ上がった国債残高と金利負担、進まない歳出改革、例を挙げたらきりがありません。その上、国民の感情に影響するであろう「デフレ脱却宣言」も政治利用しようとしているともいいます。
マイナス金利解除で円安、なぜ? 「債券市場への優しさ」あだに(唐鎌大輔氏):時事ドットコム
政府がデフレ脱却宣言を出せば景況感の明確な好転にお墨付きを与える印象を与えるだろう。(出所:時事ドットコム)
解散総選挙がいつ行われてもおかしくないと言われる2024年だけに、実質賃金のプラス転化・デフレ脱却宣言・解散総選挙はセットで考えるべきではないかと専門家はいいます。ただ、デフレ脱却を宣言することになれば、その唯一の解決手段であった「アベノマスク」リフレ思想から脱却することになりかねず、その推進役であった安倍派議員たちがどう反応するかがリスクになりそうだといいます。
経済を好転させその恩恵を国民が享受できるように図るのではなく、結局は自分たちの都合のために経済を利用しようとするのが今の政治なのでしょうか。
論語に学ぶ
子貢(しこう)、政を問う。子曰わく、食を足らし、兵を足らし、民 之を信ず、と。子貢曰わく、必ず已(や)むを得ずして去らば、斯(こ)の三者に於いて、何をか先きにせん、と。曰わく、兵を去らん、と。子貢曰わく、必ず已むを得ずして去らば、斯の二者に於いて、何をか先きにせん、と。曰わく、食を去らん。古(いにしえ)自(よ)り皆死有り。民 信無くば立たず、と。(「顔淵第十二」7)
弟子の子貢が「政」とは問いました。孔子は「民の生活の安定、十分な軍備、そして政権への信頼である」と答えます。すると子貢は「三者のうち、どうしても棄てなければならないとしましたならば、まずどれでしょうか」と更問します。孔子は「軍備だ」と答え、子貢はさらに「では残った二者のうち、どうしても棄てなければならないときは、どれでしょうか」と質問しました。孔子は「生活だ。古来、人間はいつか必ず死ぬ。「信無くば立たず」民の信頼がなければ、「政治」国家も人も立ち行かないのだ」と教えました。
首相の口癖「信無くば立たず」、孔子の言葉の引用でしょうか。孔子は国民生活を安寧を求め、その上での軍備と説き、そうあって「信無くば立たず」国民の信頼といいます。
4月に入ると首相は国賓待遇で訪米し、色々の行事をこなすようですが、どうにもきな臭い話ばかりが話題になるようです。
日米が「軍事協力」を強化、中国の脅威に備え新協定に調印へ | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
わざわざ訪問して、こんな話を今する必要があるのでしょうか。確かに、中国と台湾の間の緊張が高まり、北朝鮮はミサイル発射実験を繰り返しています。しかし、野放図に「軍備」を優先されることになれば、「信無くば立たず」という首相の言葉が空回りして、国民の不信を買うことにならないのでしょうか。
第二次世界大戦後、米国の後押しを受けた日本国憲法は、平和主義を打ち出し「日本国民は、国権の発動たる戦争を永久に放棄する」と明記し、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と付け加えた。しかし、安倍晋三元首相は2015年に日本の軍隊が「集団的自衛」に参加することを認める画期的な法案に署名。日本は、2015年以降に着実に軍事費を増やしており.....(出所:Forbes)
先の大戦で日本と中国がぶつかり、中国における犠牲は兵士約400万人、民間人2000万人から5000万人といわれます。
首相の信念なのでしょうか、それとも自民党の意向なのでしょうか、よくわかりませんが、党内決定事項を第一とし一致団結する自民党の強みが、「信無くば立たず」の弊害となっていないでしょうか。それは、政治改革の遅れにおいても同様に思えてなりません、それが首相の弱みになっていないでしょうか。
「参考文書」
アングル:日銀QTの思惑、円安のブレーキ役に ドル152円目前で足踏み | ロイター
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