特別職の国家公務員の給与を引き上げる法案をめぐって、首相は自らの増額分を返納する方向で調整に入ったといいます。野党側から適切ではないと批判されてのことのようです。
岸田首相 特別職の給与引き上げ法案 自身増額分を返納で調整へ | NHK | 国会
国会で論戦があれば、問題が浮かび上がり、時にそれが是正されていく。それが民主主義のよいところなのでしょう。これまで首相が国会での論戦を避けようとしてきたのもわかる気がします。
「批判より対案」、批判することが悪いようなそんな風潮も改まっていけばいいのかもしれません。問題指摘と追求があってこそ、是正改善できるものあるということなのでしょうから。
原資なき還元
「国民への還元」については政府与党内でも発言が相次いでいるようです。鈴木財務相は国会で、「還元」に原資がないことを認めたそうです。
また、自民党の宮沢税制調査会長は「税収増の還元」との立場はとらないと明言し、厳しい財政状況のもと国債発行に頼る姿勢に警鐘をならしたそうです。
所得税減税「還元ではない」 宮沢洋一・自民党税調会長 - 日本経済新聞
「国民への還元」、首相の語彙力の問題だったのでしょうか。それとも誠実さの欠如、上に立つ者としての器量に欠けるものだったのか....
言葉が不適切に使われれば誤解を生み、コミュニケーションも成立しなくなるということのようです。
論議に学ぶ
子貢問いて曰わく、賜(し)や何如、と。子曰わく、女(なんじ)は器なり。曰わく、何の器ぞや、と。曰わく、瑚璉(これん)なり、と。(「公冶長第五」4)
弟子の子貢が孔子に「私をどのように評価されますか」とたずねます。孔子は「器」だと答えます。「器」は道具であって、しかもその用途は色々ある。子貢は不安になって、「どんな器ですか」と聞き返すと、孔子は「瑚璉」最高ということだと答えたといいます。
「瑚璉」、祭事など非日常に使用される貴重華美な「器」とされます。政治における最高の器量人という比喩といいます。
「子貢」、孔門十哲の一人で「言語には子貢」と評された人です。論語の中でも素晴らしい言葉を遺しています。その弁舌で、衛や魯の国で外交手腕を発揮し、魯や斉で宰相を務めたともされます。
孔子は子貢のその「器量」を評価していたようです。しかし、もう少し鋭鋒をかくしたほうがよいという忠告を含んでの比喩だったのではないかとの意見もあります。いずれにせよ、子貢は言葉を「器用」に使いこなし、その語彙力は長けたものがあったということにはまちがいがなそうです。政治において、あったほうがよいスキルのひとつなのでしょう。
誤りがあった認める日銀総裁
日銀の植田総裁が衆院財務金融委員会で答弁し、物価上昇率は下がるとの見通しを示していたことについて、「上方修正を続けてきた」とし、「見通しの誤りがあったということは認めざるを得ない」と述べたそうです。
日銀の物価見通し、誤りがあったことは認めざるを得ない-植田総裁 - Bloomberg
過ちを素直に認めた方が誠実さがあるように映るのではないでしょうか。また率直に語れば、コミュニケーションは成立し、論戦にもなるのでしょう。
「参考文書」
財務相「税収増分は使用済み」 首相の「還元」原資なし認める | 共同通信