「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

異次元緩和を「金融大実験」と評した前日銀総裁、それに文句をつける議員の狭量さ

 

 日銀黒田総裁の任期が4月8日に迫ってきました。黒田総裁最後の金融政策決定会合が今週9、10日で開催されるそうです。

 エコノミストの予測は異次元緩和の維持を予測しているそうですが、サプライズ好きな黒田総裁ゆえ未だ予断を許さないといいます。

植田日銀は金融引き締め方向、6月実施が所信聴取後強まる-サーベイ - Bloomberg

 また、次期総裁候補の植田氏の下では、これまでの金融政策が修正されるとの見方が広がっているそうです。

「黒田総裁の役割は既に終わっており、3月の決定会合では現状維持とし、全ての判断は新執行部に委ねるべきだ」と指摘する。「今後は緩和的な状態を維持したままで、いかにして金融市場のゆがみを是正し、正常化に向かうのかポイントとなる。(出所:ブルームバーグ

 多くの専門家、市場関係者が「正常化」に期待しているのでしょう。

 

 

苦境、それでも失敗といえない人たち

 一方、政府を支える与党自民党内では、アベノミクスは失敗でないとの声が根強く残り、政府・日銀の共同声明(アコード)について、「見直しをするとパンドラの箱を開けてしまう」と述べる議員もいるそうです。

政府・日銀の共同声明、見直してはいけない=世耕自民参院幹事長 | ロイター

パンドラの箱」とはどういう意味なのでしょうか。

 失敗を認めることは福音のはずです。しかし、それを認めなければ、いつまでも苦境のままになってしまうのではないでしょうか。

 現時点で、すぐに金融政策を見直すことはできないとしても、この苦境から如何に早期に脱するための前向きの議論を始めることが求められているはずです。

 また、この議員は、白川日銀前総裁がIMF国際通貨基金の季刊誌に寄稿し、「異次元緩和」を疑問視したことに対し腹を立てているようです。

白川前日銀総裁を痛烈批判 自民・世耕氏「自身の時代総括を」:時事ドットコム

 出演したテレビ番組で「まずご自身の時代をしっかり総括していただきたい」と語ったそうです。それでは狭量であることを自身でさらけ出しているように見えます

変化の時

 白川氏がIMFに寄稿した文書は「変化の時」と題され、黒田総裁の下で始まった大規模金融緩和を「金融大実験」と表現し、日銀のバランスシートは膨張したが、物価や成長に及ぼした影響は小さかったと分析したといいます。

日本では金融政策が「抜本改革を要する構造的問題に対する一時しのぎの策」になったとも指摘。金融緩和が長期化すれば、「適切な資源配分が行われないことによる生産性上昇へのマイナス影響は深刻になる」と懸念を示した。(出所:JIJI.com

 批判をされると、ついつい頭に血が上ってしまうのかもしれません。しかし、批判の声が大きくなっているときは、それが有益なアドバイスであることが往々にしてあるものです。見栄を張らずに、これを前向きな議論のきっかけにしてもよいのではないでしょうか。

 過去に執着していては、変化する環境に置いてけぼりになります。みなが望むことは苦しい過去から抜け出し、それを少しでも良くしたいということではないでしょうか。

   

論語に学ぶ

哀公 社を宰我(さいが)に問う。宰我対えて曰わく、夏后氏は松(しょう)を以てし、殷人は柏(はく)を以てし、周人は栗(りつ)を以てす、と。曰わく、民を使(し)て戦栗せしむ、と。成事(せいじ)は説かず。遂事(すいじ)は諫めず。既往は咎めず、と。(「八佾第三」21)

  魯の国の君主哀公が、宰我に社について質問し、宰我は「夏王朝では松、殷王朝では柏、現周王朝では栗を用います」と答えた。さらに宰我は「栗(りつ)は慄(りつ)に通じますので人民に畏怖させ戦慄せしめるためです」と答えた。後でこの話をお聞きになった孔子はこの宰我の応待を「できたことはしかたがない。すんだことは注意しない。過去は咎めない」と三度もいったといいます。

dsupplying.hatenadiary.jp

 孔子は弟子の宰我に、発言を慎めとの気持ちがあったのだろうといいます。その宰我、能弁家で、口才があって、弁舌がさわやかであったといいます。

 いずれにせよ、政治家が失敗の言い訳を、何もなかったかのようにさわやかにしゃべるようになったら、もうお仕舞いということなのでしょう。

 これでは日本の停滞ではなく、衰退に歯止めがかからなくなるのではないでしょうか。

 

 

「参考文書」

政策枠組み再考「機は熟した」 白川前日銀総裁がIMF誌に寄稿:時事ドットコム