トヨタ自動車の株主総会が開かれ、会社提案通りに豊田会長ら取締役10人が選任されたそうです。
トヨタ株主総会、豊田会長など取締役10人を選任 株主提案は否決 | ロイター
国の「型式指定」を巡る認証不正が発覚した直後の開催ともあって、株主が企業統治について問いただす場面もあった。豊田会長は再発防止の取り組みを主導するが、不正の責任を問う声も上がっており、企業統治には厳しい視線が注がれる。(出所:日本経済新聞)
米大手議決権行使助言会社2社が豊田会長の選任に反対を推奨し、一部の機関投資家が「安全と法令順守の観点」から事前に反対票を投じ、注目されていたといいます。
冒頭、議長を務めた佐藤社長は「豊田会長がグループの責任者として先頭に立ち、現場に根ざした改善を進めている。私も会長とともに現場で再発防止にしっかりと取り組む」と述べ、謝罪したそうです。
取締役選任反対の背景には、認証制度への責任転嫁など豊田会長の会見時の発言が他人事のような印象を与えことがあるようです。「問題を提起して解決を図る力を有する立場にありながら、全く主体性をもって行ってこなかったことへの反省がみられない」と専門家も語っています。
率直に語ることは大切なのでしょうが、それは包み隠さずに話すこととは違うような気がします。重大な案件においては、タイミングと言葉を選んで伝えることが重要なのでしょう。コミュニケーション、広報にも問題があるのかもしれません。
経営の怠慢
今回の不祥事は、トヨタほどの企業であっても多くの問題を抱えていることを浮き彫りにしています。「経営の怠慢」と指摘する人もいます。
トヨタ会長発言を「経営の怠慢」と切り捨てた理由、日本企業がDXでやるべきこと | 日経クロステック(xTECH)
安全性を担保する極めて重要な業務が正しくなされるよう統制し、状況を把握する仕組みが存在せず、経営者はそのことに問題意識すら持っていない。だからこそ、経営の怠慢と批判されてしかるべきなのだ。(出所:日経クロステック)
誰もが真面目に働いているにもかかわらず、納期などで追い込まれて不正に手を染めている。一方で、認証関連業務は標準化されておらず、属人的であるといいます。そこに現場での独自解釈の余地が生まれ、試験を効率化させて「不正」につながったのではないかといいます。トヨタの強みである「カイゼン」が「罪の意識」の希薄さを産み、不正の温床になってしまったということなのでしょうか。
日本企業は「勝手にやっている現場の集合体」である。お家芸のカイゼンも当然、勝手にやっている現場の部署単位に取り組みが進む。…(中略)… 要するに、全体最適なき部分最適の集合体である。(出所:日経クロステック)
あながち間違いでもないようにも感じます。全体をシステムとして捉えて上位概念によるコントロールが求められるということなのでしょう。こうなってくると組織論も避け得ず、やはり経営問題にもかかわるということでしょうか。悩ましい問題です。
論語に学ぶ
学びて思わざれば、則ち罔(くら)し。思いて学ばれば、則ち殆(まど)う。(「為政第二」15)
知識や情報をたくさん得ても思考しなければ、どうして活かせばいいのか分からない。逆に、思考するばかりで知識や情報がなければ、一方的になり独善的になってしまうと孔子はいいました。
改善・改革についても同じことがいえるのでしょう。基礎を知らなければ改善は出来ないし、最新の情報がなければ、時代に適合した最善の改善策を思いつくこともありません。結局、現場における改善には終わりはなく、経営においても同様で常に改革することが求められているのでしょう。
新車の販売が遅れるなど、今回の認証不正の影響が広がりそうです。この問題はどう収束していくのでしょうか。
トヨタ、新型クラウンの発売延期 不正問題受け、認証取得見送り | 共同通信
トヨタが主張するように認証制度の見直しが根本対策になるのかもしれませんが、その前にやらなければならないこともありそうです。
また豊田会長の去就も気になるところです。タイミングを見計らって経営責任をとって身を引くこともあっても良さそうな気がします。これだけの問題に発展しているのですからやはりガバナンスに問題があったと言わざるを得ないのでしょう。
日本のいたるところに不正がはびこるようになっているのも気になります。誠実さに欠け政治改革が行き詰まらせる自民党政治がその筆頭なのでしょうが。またもめごとが増えてきた小池都政もそうなのかもしれません。
真の改革が求められていそうです。「ガラガラポン」、一旦白紙に戻すためにも古い人たちが去り、新たな陣容で再スタート切るべきときなのかもしれません。変わらないこと、変えられないことにほんとうにうんざりです。
「参考文書」
トヨタ・豊田章男会長、信頼回復へ「院政も」 現場で改善主導 - 日本経済新聞
焦点:トヨタ会長に相次ぐ反対推奨、統治と認証不正 株主どう判断 | ロイター
トヨタ豊田会長の取締役選任賛成率71.93%、不正など受け大幅減 - Bloomberg