自動車の量産に必要な認証「型式指定」において、トヨタ自動車など自動車5社で虚偽データの提出や試験車両の不正加工などの不正行為があったといいます。
トヨタ豊田章男会長「認証の根底揺るがす行為」 不正巡り - 日本経済新聞
「認証不正」、あってはならないことです。トヨタでの不正と聞くとただ事とは思えません。
トヨタの豊田会長は、今回の問題を「正しい認証プロセスを踏まずに量産、販売してしまった」と説明、謝罪しました。本来、きちんと試験を行うべきところ、より厳しい開発試験データを申請に使うなどの不正があったといいます。
政府も企業も不正ばかりと感じます。ただ救いは、今回豊田会長が自ら非を認め、認証で不正が起こる理由について、認証に至るまでの手続きの長さや全工程を把握する担当者がいないことを挙げ、「完璧な会社ではない。間違いも起こる。問題が起こったらとにかく事実を確認して直す。それを繰り返すことが必要だ」と語っていました。
グループ内でおきた認証不正をきっかけに、法規認証をテーマとしたトヨタ生産方式、TPS自主研究会の活動を始めたそうです。認証に関わる業務の中で、特に不具合が多く発生している工程に着目し、「物と情報の流れ」を見える化し、それによって明らかになった仕事のしくみの課題に対し、具体的な改善活動に着手しているといいます。
「改善は無限、終わりはない」といいます。
改善が常に適正に行われ、仕事がシステムとして正しく機能していれば、不正など起きようはずもありません。トヨタほどの会社でも、まだ徹底できていない仕事もあるということでしょうか。
正すべきことがまだあるということは反面喜ばしいことでもあります。それだけ伸びしろがあるということでもあるのですから。
論語に学ぶ
苟(まこと)に仁に志さば、悪無きなり。(「里仁第四」4)
「仁」に志しても人間は「過挙(あやまち)」を犯すことはあるだろうが、ことさら悪事をすることはなくなると孔子は言いました。
「過ち」なのか「悪事」なのか、その境には「仁」があるということでしょうか。
江戸期の儒学者伊藤仁斎は、「仁に志せば心もちはゆったりとして人を慈しむことになるから、おのずと人から悪まれることがなくなる、世間は公平によく見ている」と解します。
「仁」、広くは人間愛を意味する言葉で、「仁」の実践においては名利を求めず、広く社会のために尽くすというのが孔子の考えです。人の道といってもいいのかもしれません。
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こうした教養を企業人、そして政治家みなが身につければ、姑息な手段、見え透いたうそなどもなくなり、不正は撲滅されていくような気がします。
「プロセスは複雑怪奇になっている」「全工程を把握する担当者がいない」とトヨタは今回の問題の原因をそう語っていました。他の企業、政治においても同じなのかもしれません。それゆえ、現代の複雑に入り組んだ問題への対処が困難になっているような気がします。
もう少しシステム的に捉えて対処できるのようになればいいのかもしれません。現状を整理して標準化できればシステム化が進み、不正が生じる余地を排除できそうです。
しかし、不正にしろ、正しい仕事にしろ、それは人が動くことに生じるものなのでしょう。それは、人間教育、そしてマネジメントが不可欠であることを示唆しているのでしょう。色々語られることの多い領域ですが、色々と手を出すあまりに実はおろそかになっているのかもしれません。そうでないと、このおかしな現状を説明できないような気もします。
「参考文書」
トヨタなど5社に立ち入り検査へ 国土交通省、認証不正巡り - 日本経済新聞
業界全体で横行する認証不正、なぜ? 国際競争激化で現場にひずみか | 毎日新聞
経済同友会・新浪剛史氏が求める政治責任とは 企業献金禁止は「棚上げ」 根本涼 - 日本経済新聞