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【ノーベル平和賞のゴルバチョフ氏逝く】日本では首相が謝罪、政治の混乱は収束するか

 

 ゴルビーこと、ミハイル・ゴルバチョフソビエト連邦大統領が亡くなられました。

 心よりご冥福をお祈りいたします。

 それまでタブーであった情報を公開し、政治、経済の改革を断行したのがゴルバチョフ氏でした。東欧諸国の民主化を容認し、やがて東西ドイツが統合され、冷戦が終結しました。その功績が評価され、90年にノーベル平和賞も受賞しました。

ゴルバチョフ元ソ連大統領死去、東西冷戦終結を主導 91歳 | ロイター

 しかし、ロシア国民の中にはゴルバチョフ氏のこうした功績を評価できず、逆に改革で引き起こされた混乱を許すことができないといいます。

 

 

 ロイターによれば、プーチン氏は2005年、ソ連崩壊は20世紀における「最大の地政学的悲劇」と表現したといいます。

入院中のゴルバチョフ氏を見舞った自由主義経済学者のルスラン・グリンベルグ氏は、ロシア国防省系メディア「ズベズダ」に対し「ゴルバチョフ氏はわれわれ全てに自由を与えてくれた。ただ、その自由をどうしたら良いのか、われわれには理解できなかった」と述べた。(出所:ロイター)

 それまでの緊張が解け、平和に近づくと評価する人たちがいる一方で、国の瓦解を嘆き、それによる混乱を嘆じる人たちもいるようです。

 価値観がひとつであれば、こうしたことが生じえないのでしょうが、現実の世界では決してそうありえないのでしょう。

論語に学ぶ

紫の朱を奪うを悪(にく)む。鄭声(ていせい)の雅楽を乱るを悪む。利口の邦家を覆すを悪む、と。

子曰わく、予 言うこと無からんと欲す、と。子貢(しこう)曰わく、子 如(も)し言わざれば、則(すなわ)ち小子(しょうし)何をか述べん、と。子曰わく、天 何をか言わん。四時(しじ)行なわれ、百物生ず。天 何をか言わん、と。(「陽貨第十七」16)

「間色の紫色が流行して、正色の朱色より増えているのをとがめ、官能的な鄭系の音楽が、優美な正統系の音楽よりも流行しているのを非難する。耳に心地よい邪道の弁舌が、国家を覆すのを憎む」と孔子がいったといいます。さらに「私はもう発言して教えることをやめようと思う」といったそうです。

 すると弟子の子貢が「先生がもし黙ってしまわれますならば、我々弟子たちは何を伝えてゆけばよろしいのですか」といったといいます。孔子は「天は何も指導していない。しかし、四季は自然とめぐるし諸物は生育しておる。天は何も教えていないのだ」といったそうです。

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「紫の朱を奪う」、ロシア国民はこんな心持だったのでしょうか。

 この章を語源とした「朱を奪う紫」をいうことばがあります。まがいものが本物にとってかわり、その地位を奪うことのたとえです。

 

 

 古代中国の自然哲学の思想に「五行説」があります。万物を構成する五つの要素は、互いに影響を与え合い、その生滅盛衰によって天地万物が変化し、循環するという考えです。

 この五行説の要素には相応する色があるといいます。朱(赤)は正色で、紫は朱と黒の中間色とされます。朱は火を意味し、黒は水を表すそうです。

 日本では、あの銃撃事件以来、政府・自民党が混乱しているようです。次々と明らかになることに驚き、倫理観のなさを憂い憤慨するということでしょうか。また、そうした世論に耳を傾けない政府の姿勢にも批判が集まったようです。

 首相は謝罪し、自民党は団体との関係を断ち切るといいます。だた反対の声が大きい国葬については姿勢を変えません。国会で説明するとのことですが、どうなることでしょうか。

 

 

 亡くなられた京セラの名誉会長だった稲盛和夫氏の功績を伝える報道が増えています。

「人間として何が正しいのか」、「人間として正しいことを貫く」、そんな哲学を元にして京セラを経営され、世界的な企業に育てたといいます。

追悼・稲盛和夫氏 京セラ名誉会長が語る「なぜ経営に哲学が必要か」:日経ビジネス電子版

「人間として正しいことを貫く」、経験知も浅かった若輩の青年経営者が頼ったのは、子どもの頃に両親や学校の先生から教えてもらった「やっていいこと、悪いこと」という基本的なプリミティブな倫理観だったといいます。

 また、稲盛氏は「会社経営がうまくいっていないとすれば、それは幹部が悪いのでもなければ、従業員が悪いのでもなく、ただ1つ、トップの考え方が間違っているからに他ならない」と話されていたといいます。

「経営者の哲学と会社の業績はパラレルの関係であり、経営を伸ばそうと思うならば、まずは経営者自身の心、精神性を高めなければならない」、つまり、「心を高める、経営を伸ばす」ということを説いていたそうです。

 企業経営も政治も同じではないでしょうか。

 政治が正しいことを貫こうとしないから、国が危うくなってしまうのかもしれません。もうそろそろ悪習を断ち、人として正しいことを貫いて頂きたい、そう願うばかりです。それが今、首相に求められているのではないでしょうか。