「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

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景気後退の懸念高まる米国、対策するテック企業、創業者がCEOに復帰した日本電産

 

 米国がインフレ退治によって景気後退するのではないかといわれています。早くも大手テック企業が新規採用のペースを落としたり、レイオフも始めているといいます。

アップルが来年の採用と支出を抑制へ、一部部門対象-関係者 - Bloomberg

 米国景気の今後が気になると同時に、大手テックがどんな変化を起こすのか気がかりにもなります。

 

 

 米アマゾンのジェフ・ベゾス氏が昨年7月、CEOを退任し、ベゾス氏の最側近の一人と目されたアンディ・ジャシー氏がアマゾンのトップに就任しました。ベゾス氏の文化や手法を引き継ぐと予想されていたといいますが、静かに社内改革に着手しているそうです。

 これまでに実店舗の書店を閉鎖し、いくつかの倉庫拡張計画を凍結、物流改革に手を付けているそうです。手を広げすぎたことによるコストを削減する必要に迫れていたそうです。どんな結果になっていくのでしょうか。後継者選定の良い先例になるのでしょうか。

 日本では、モーター大手の日本電産のCEOに、創業者の永守氏が三度返り咲いたそうです。

「決めたものは必ずやり抜く、どんなことがあってもやり抜く」という企業文化が崩れ去っていく姿を見て非常に危機感を覚えたと、永守3代目CEOは7月20日に行われた決算会見でCEOに復帰した理由を述べたそうです。

「崩れ去る企業文化に危機感」、日本電産の永守会長が明かしたCEO復帰のワケ | 日経クロステック(xTECH)

 日経XTECHによると、永守氏退任後、業績が悪化し、株価は低迷したといいます。そうした状況を眺めつつ、永守氏が危惧したのは「企業文化の継承」だったといいます。

 永守氏が創業以来築き上げてきた「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」「情熱、熱意、執念」「立てた計画は必ず達成する」という文化が崩れっていくことに危機感を感じたそうです。

 

 

論語の教え

質 文に勝てば、則ち野(や)。文 質に勝てば、則ち史(し)。文質彬彬(びんびん)として、然る後に君子たり。(「雍也第六」18)

「質」と「文」とを兼備して始めて君子ということができるとの意味です。「質」と「文」は人間文化にとって軽重をつけ難い重要な二つの構成要素だといいます。

 「質」とはもとであり、実質さらに素朴を意味し、「文」はあやであるから、技巧、飾りさらに礼楽であるといいます。「彬彬」とは古注にいう「相い伴ばする貌(かたち)」。「野」とは野人または田舎者的ということで、「史」はもと史官のこと、文書などをつかさどる役人だが、ここでは悪い意味でのインテリないし文化人を指すそうです。

dsupplying.hatenadiary.jp

 文化には強靭で素朴な生命力がなければならないが、それがそのままあらわれては露骨であり、野性的にすぎて泥臭い。それを人間化するためには、優雅な意味での人為が不可欠であると桑原武夫は指摘します。しかし、それが過度になり、そのためにもとが衰弱すれば形式主義の虚飾となり、悪い意味での文化主義に陥ることはいうまでもないともいいます。この二つを均等に兼ね備えることが、人間文化の具現者としての君子であるといいます。

 

 

 永守氏が伝えたい企業文化の本質はそれはそれでよいことなのでしょうが、それを伝える言葉が、利益偏重や成長重視のような本音が出てしまうと、少々野卑に聞こえるのかもしれません。高成長していた時期とは異なり、同じ論調では伝わらなくなっていることがあるのかもしれません。

「君子は文を以て友を会し、友を以て仁を輔(たす)く」(「顔淵第十二」24)といいます。

 永守氏がCEOに復帰することで降格となった関氏は、お目に適った人物だったのではないでしょうか。それともそれが間違いだったのでしょうか。

 CEOが変わることで企業文化は継承されるにしても、表現されるものは多少の変化があって然るべきではないでしょうか。また企業が文化を伝承しつつ、次のステップに上っていくためには準備とそのための多少の停滞は不可避のような気がします。2年という時間でそれを判断すべきであったのかどうか、多少疑問も残りますが、どうなのでしょうか。

 

「参考文書」

【新】CEO交代から1年、ジャシー体制で静かに進む大改革

「休むなどもってのほか」衝撃メールにア然…日本電産・永守会長の「復活」で社内は大混乱(井上 久男,週刊現代) | マネー現代 | 講談社