ジョンソン英首相が、COP26が開催されているスコットランドのグラスゴーへの移動に鉄道を利用したそうです。それまでの移動にCO2排出の多い航空機を利用し、「偽善」と批判されていたことを受けてのことのようです。
批判をされ、行動を改めることはいいことなのでしょうが、なかなか国のリーダーとなると、出来そうで出来ないことなのかもしれません。
投票で納税を決めるイーロンマスク
米国では、テスラのイーロン・マスクCEOが、ツイッターで、保有株の10%を売却してでも納税すべきかと問うた結果、売却に賛成が多数だったため、50億ドル(約5700億円)相当のテスラ株を売却したといいます。
マスク氏、テスラ株を5700億円相当売却-ツイッター投票後 - Bloomberg
売却の目的はストックオプション行使に関連する納税義務を果たすことだったそうです。マスク氏の本音は定かではありませんが、有言実行はみごとです。
外見と中身は一致しないもの
「質 文に勝てば、則ち野(や)。文 質に勝てば、則ち史(し)。文質彬彬(びんびん)として、然る後に君子たり」と、論語「雍也第六」18にあります。
この章は、人において外形と内容とが常に平行でないと、立派な人物であるといえるもので無いという教訓であると渋沢栄一は言います。
いかに内心が高潔で立派な精神の人物でも、その外部に顕われるところが礼を欠き、外形が精神に合わないようであれば、その人は野蛮人に等しいもので、その質も余りもめたもので無い。これに反し、内心が野卑劣等で、汚陋の心事を蔵するに拘らず、外形ばかりはうまく繕って美しく見せかけ、精神が外形に負けてるようでも、決してほめるべき人物で無く、それは心にも無い美辞を連ねて書くことを職として暮らす支那の史官と同一である。よって、人は文も質も揃って平行した人物にならねばならないもので、そうあってこそ始めて人は君子と呼ばれるようになるものだといいます。
(参考:「実験論語処世談」 渋沢栄一記念財団)
「文」とは外形に属する威儀文辞の意で「彬々」は過不足無く、物の程よく揃つた態を形容した言葉であると解説しています。
常人は兎角、文か質かの一方に偏し易くなるものだと栄一はいいます。人が善事に励むを見てもこれをことごとく偽善者であると罵ったり、また吝嗇が悪いからと、金銭を湯水の如くに使って、これを金銭に淡白であると心得て誇ったりする如き人物になっても困るといいます。質に流れず文に走らず、文質彬々として過不及の無いのが則ち真の紳士というもので、これが君子であるのだといいます。
自分で思う自分と、他者の目に映る自分が異なることは往々にあることです。君子たるもの、常に内省し、思考と行動のバランスを考えるべきということでしょうか。
論語の教え
「子貢 問いて曰わく、孔文子何を以て之を文と謂うか、と。子曰わく、敏にして学を好み、下問(かもん)を恥じず。是を以て之を文と謂う」と、「公冶長第五」15にあります。
孔子は元来、その言によってその人を棄てず、その人によってその言を棄てずというよ知らないことを目下の者に問うことも恥とはしなかったうな、公平な立場から観察を何人に対しても行う人だったと栄一は指摘します。
この章に登場する孔圉(孔文子)が男女関係の上などで非難すべき点があっても、他にほめるべき長所があって、天性明敏の質なるに拘らず、学を好んで研鑚を怠らず、身は衛の大夫たる高位高官にありながら、謙遜をもって人言を聞き、虚心担懐なところがあったのを褒め称え、圉が文を好んだ長所を挙げ「文子」と諡したのは決して不当で無いと子貢へ答えたと、解説します。
「下問を恥じず」、知らないことを目下の者に問うことも恥とはしない。出来そうで出来ない心構えなのかもしれません。ジョンソン首相やイーロンマスク氏は、この心構えがあるのでしょうか。
瀬戸内寂聴さんが亡くなれました。享年99歳。
瀬戸内寂聴さん死去 作家・僧侶、99歳 文化勲章受章者|社会|地域のニュース|京都新聞
徳島市の神仏具商の次女に生まれ、東京女子大在学中に結婚。卒業後、夫の赴任先の北京に渡るが、夫の教え子と恋に落ち、3歳の娘を残して家を出た。離婚後、少女小説や童話で生計を立てる。(出所:京都新聞)
寂聴さんもまた「文子」ということだったのでしょうか。「孔文子」の章を読みそう感じます。ご冥福をお祈り申し上げます。