「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

その職業でほんとうに自分でやりたいことを実現できるのかと、河野太郎氏が助言する理由

 

 この先、どうなることやらと思えば、漠然とした将来不安が頭をもたげます。強い指導者があって、未来が見通せるようになればいいのでしょうが、年長者は「最近の若い者は」と嘆くばかりです。これに対して、若い世代は先行く世代ばかりが優遇されていると不平を口にします。いつになっても変わることのない社会のようで、これぞと思う人物など存在しないようです。

 それに加えて、近頃では、物価は高騰するばかりで、実質賃金は低下し不安が募り、将来への期待が遠退きそうです。政府の経済対策で景気が上向けばよいのですが、効果があがらなければ、政治不信となってしまいます。

 

 

 脱ハンコやワクチン接種で成果を上げた異色の政治家河野太郎さんに新R25がインタビューし、「仕事人としてどんな力が優れているのだろうか」と、その疑問に切り込んでいます。

「だからトップを目指すんだよ」河野太郎の行動原理はたったひとつの“嫌い”に集約されていた|新R25 - シゴトも人生も、もっと楽しもう。

まずは最短距離を導き出して、直進。

ぶつかったら対処を考える。それでいいんじゃないですか。スタートするときに最初から遠回りを考えてたら、そんなの負け戦でしょう。

40代での立候補も、「経験」はリーダーに必須の条件じゃないと判断したから。

経験が足りないなら、詳しい人を呼べばいいだけのこと。自分がやろうと思ってることを実現しようと思ったら、そりゃ総理になるのが一番早い。(出所:新R25

急がば回れは結果論」、リーダーに必要なのは経験じゃないと河野氏はいいます。

論語に学ぶ

 弟子の子貢が孔子に「君子とは何か」とたずねました。すると、孔子は「先ず行なう。其の言や而(しか)る後に之に従う」(「為政第二」13)と言ったといいます。

先ず実行だ。その説明は実行の後でする」、そういう人が君子なのだと意味します。

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 経験を重ねれば、理解できることも増え、先を見通す力を養うことができ、「急がば回れ」といえるかもしれません。経験が浅ければ、やはり「まずは実行」ということなのかもしれません。

 

 

リーダーに必要なこと。それは「何をやりたいか」を明確に示せるかどうかと河野氏はそう述べたといいます。

「何をやりたいかが明確なことというか、どんな職業・立場を選んだとしても真ん中にくるべき要素だと思います」。(出所:新R25

「政治家になりたいから秘書にしてください」と言って、大学生が河野氏を訪ねてくるそうですが、河野氏はそうした人を採用しないといいます。

「職業・肩書き、それが目的になってる」といい、「自分はこういうことをやりたい」があって、それを成すための手段として、職業や肩書きはあるといいます。

 子曰わく、吾 十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。(「為政第二」4)

 不遇な境遇にあった孔子は十五歳になったとき独学を決意したといいます。その後、様々な職業を転々とし学び続け、三十歳になるころには博学者として独りで立つことができるようになったといいます。四十歳を迎えると、自分の学問に自信ができ、もう惑うことがなくなったそうです。五十歳のとき、魯国の政治を壟断していた季氏を打倒しようとするが果たせず、放浪の旅に出ます。それが天が自身に与えた使命と自覚したといいます。

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 思想家として歴史に名を残した孔子も、何も一直線にゴールに向かったとうことはなく、だいぶ苦労をしていたようです。うまくいかないことの方が多かったのではないでしょうか。

 

 

 河野氏は二度自民党総裁選に挑戦し、二度とも落選し、総理の職に就くことを叶えていません。それでも、自身がやりたいことを為すために、この先も総裁選に挑戦を続けていくのでしょうか。

君子は本を務む。本立ちて道生ず。孝弟は其れ仁の本為るか」(「学而第一」2)といいます。

 孔子の弟子有子の教えで、「君子は、人間としての根本の修養に努力する。なぜなら、根本が確立すると、生き方としての道がわかるからだ。父母に尽くし目上を敬うこと、すなわち孝悌が、「仁」すなわち人間愛という生き方の根本なのだ」と意味します。 

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 道義を説くことは、時として権力者たちからは反体制的と見られることもあるのではないでしょうか。それもまた現実なのかもしれません。

 その誤解を解くために有子が、自分たちは「仁」を求めるものである、その仁の基礎には家族道徳があり、自分たちはまず「孝悌」の涵養に尽力していると主張したというのです。

世間を観察すると、家族内で上位者に奉仕することを好む人間は、必ず政治的にも上位者に柔順で、反体制的にはならないものである、自分たちを誤解しないでもらいたい、という含みがあったのではないか。(出所:「論語桑原武夫

 

 

「君子は本を務む。本立ちて道生ず。孝弟は其れ仁の本為るか」。河野氏にもこうした智慧があるといいのかもしれません。長老たちから異端に見えてしまえば、反乱するのではないかとの危惧を抱かせるのかもしれません。

 一直線にゴールに向かうことは必要なことなのでしょうが、時として、回り道を選ぶことも必要なときがあるのでしょう。

 河野氏には頑張ってもらいたいものです。同じタイプの政治家ばかりではよい方向に転じることはありないのでしょうから。

 

「参考文書」