「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

進まぬDX、不足するIT人材、求められる成長

 

 夏の参院選が近づいてきたからでしょうか、政府は様々な政策を公表しているようです。目先を変え、何か新しいことを始めれば、変化のきっかけになるのかもしれません。「人への投資」、「IT人材の育成」、「ジョブ型雇用」など、色々なワードが発出され、それらに注目が集まります。国の指針に従っておけば無難です。乗り遅れたら一大事と、みなが右往左往しているように見えたりもします。

 日本の国力の低下が指摘され、多くの人が漠然とした将来不安を抱えるようになっているのだから、こうしたことで変容が生じ、国の活力につながっていけばいいのでしょう。ただ常に国が正解となる施策を用意し、最後まで伴走してくれることはないのでしょう。まずは企業が自ら変容を起こせるようになれるのか、その課題は永遠に続きそうな気もします。

 

 

 DXデジタルトランスフォーメーションが流行りになったので、IT人材をジョブ型雇用で採用しようとしてもそうは簡単に出来ません。そのためにはその前段階が必要なのです。

論語に学ぶ

蓋(けだ)し知らずして之を作る者有らん。我は是(こ)れ無きなり。多く聞きて其の善き者を択(えら)びて之に従う。多く見て之を識(しる)すは、知るの次なり。(「述而第七」27)

「本当に理解することなくして、新説を作り出す者がいる。しかし、私はそういうことはしない。まず可能な限り学んで、その内のこれぞというものを選び取り、それに従う。可能な限り多くの資料に当たり、それらを記憶するというのは、理解することの前段階なのである」と孔子は述べたそうです。

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 時流に逆らうべきではありませんが、やたら繰り出される新説に飛びつくのは如何なものかということなのかもしれません。今あるリソースを活用しつつ、時のながれに合わせ、対応し、力を養っていってもいいのではないでしょうか。

 かつて市場を席捲した任天堂の「ゲームボーイ」は、「最先端」の技術を使わずに開発されたといいます。

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むしろ、古い幅広い知識を組み合わせていた。1989年に発売された「ゲームボーイ」は、当時の「最先端」とは言い難かった。画面は白黒でカラーではなかったし、プロセッサー(演算処理装置)は70年代に最先端だったレベルだ。(出所:日経スタイル)

 

 

 しかし、それはユーザーにとっては、有益なものなったそうです。最先端の技術でなくても、ゲームボーイは長時間使え、壊れなかったといいます。さらに古い技術を使うことで、任天堂の社員は自分たちの持っている技術で新しいソフトウェア(ゲーム)を作ることができたとそうです。それによって、ユーザーは楽しめる幅も広がり、ゲームボーイは1億台を超える大ヒットとなったといいます。

 これは、必ずしも専門的な知識に特化することではなく、幅広い知識を応用することで成功できる典型例と日経スタイルは指摘します。この開発を指揮した任天堂横井軍平氏も1つのことに打ち込んでいたわけではなかったそうです。

 キャリアにおける寄り道も、無駄にならないのかもしれないといいます。

 

 

 孔子は「詩に興り、礼に立ち、楽に成る」(「泰伯第八」8)といいます。

 詩の朗誦から始め、それによって感動を覚え、礼法をもとに世の規範を身につけ、それを基盤として立ち、音楽にみられるような「調和」に従った均衡のとれた生き方、あり方が完成していくと意味します。

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 音楽は多様なそれぞれの楽器の専門家が集まり、その個性を活し美しい旋律が奏でられることでハーモニーが成立し、人々を感動させ、お客さまが喜びます。オーケストラが単一楽器で構成されることはないのでしょうし、それでは美しいハーモニー、調和は難しいのかもしれません。

 国がデジタル、デジタルというからといって、すべてをIT人材に委ねるようなことがあっては、ハーモニーは存在しないのかもしれません。専門家はある意味では専門家にすぎません。それなりに幅広い知識を有し、専門家を束ねることの人材が必要なこともあるのではないでしょうか。