子貢君子を問う。子曰わく、先ず行なう。其の言や而(しか)る後に之に従う、と。(「為政第二」13)
(意味)
「子貢が君子とは何かとたずねた。孔子はこう教えた。「先ず実行だ。その説明は、実行の後でする」(そういう人が君子だ)と。」(論語 加地伸行)
「先ず其の言を行い、而して後にこれに従う」と読むのが一般的だが、加地は「先行、而後其言従之」と読む。
中国 明の時代、王陽明が陽明学を起こし、その中心思想のひとつに「知行合一」がある。この「先ず其の言を行い、而して後にこれに従う」が元になっているといわれる。
知行合一 知識と行為は一体であるということ。本当の知は実践を伴わなければならない。
「子貢」、 「言語には子貢」と評され、弁舌にすぐれた秀才といわれる。スマートでやや実直さに欠けるところがあったのかもしれないと桑原武夫はみる。
しかし、「賜や達なり」(「雍也第六」8)といって、孔子は子貢の見通しのよさも評価する。
「先ず其の言を行い」と、子貢にいったところからすると、この秀才には、ややもすれば、口先ばかりで行動をおろそかになるということがあったのだろうか。
子貢、姓は端木、名は賜、字は子貢。孔門十哲の一人と言われる。孔子より32歳年少。そればかりでなく、利殖の道にもたけ、孔門第一の金持になったという。
地球温暖化問題で大きなうねりが起こった。その背景に、劣悪していく環境を憂い、行動を起こしたひとりの少女がいた。スウェーデンのグレタ・トゥンベリ。16歳で、国連に登壇、窮状を訴えた。彼女がはじめた #FridayForFuture 活動が、世界各地に飛び火し、それが世界を動かしたのかもしれない。
「先ず其の言を行い、而して後にこれに従う」
気候変動に対する政府の無策への抗議として、登校を拒否、「気候のためのストライキ」と書かれたプラカードをもって、ひとりでストライキを始めた。それが「 #FridayForFuture」活動の始まりとなる。彼女もまた君子と呼べるのであろうか。
人は時として、発言しては後悔する。日頃思っていることがつい口に出てしまうのだろうか。それも知行合一の現れなのかもしれない。
王陽明は、「知っている以上は必ず行いに現れる」と主張し、真の知行とは「好き色を好むが如く、悪臭を悪むが如し」と説くという。
コロナ渦のゴールデンウイーク、関東地方の観光地には多くの人出があったという。
それもまた、知行合一の現れなのかもしれない。知、思考のコントロールが必要なのだろう。
(参考文献)