来年度の予算編成において、概算要求の段階で122兆円台という過去最大の数字が並びました。これだけの巨額な資金が投入されようとしている一方で、私たちの心にある「未来への不安」は、皮肉なほどに膨れ上がっています。
長射程ミサイル9733億円、給食費支援1649億円 最大予算案122兆円決定 - 日本経済新聞
ANNの世論調査によれば、中国との関係をはじめとする今後の情勢に不安を感じる人は6割を超えました。高市首相は「未来への不安を希望に変えたい」と繰り返しますが、その言葉が国民の実感に届いているとは言い難い状況です。なぜ、これほどの予算を積み上げても、私たちは安心できないのでしょうか。
安全保障という「共通の重圧」
日本が直面している安全保障上の緊張は、今や日常的なリスクとなりました。しかし、この地政学的な危機において、日本と驚くほど似た、しかし全く異なる対応を見せている国があります。フィンランドです。
オーロラにサンタクロース、観光立国フィンランドが直面する社会問題とは | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
フィンランドはロシアと1,300km以上の国境を接し、常に直接的な脅威にさらされています。日本と同じく防衛力強化を迫られ、出生率は日本以下の1.26(2023年)、失業率は約10%に達する局面もあります。条件だけを見れば、日本以上に「不安」であってもおかしくない国です。
しかし、フィンランドは8年連続で世界一幸福な国であり続けています。この決定的な差はどこにあるのでしょうか。
「成長」という呪縛、122兆円の空虚
日本の122兆円という予算の中身を見ると、その多くは過去の債務の返済や、既存のシステムの延命、そして防衛力の強化に割かれています。もちろん国防は重要です。しかし、国民にとっての不安の正体は、単に「外敵」だけではありません。
「もし職を失ったら」「もし病気になったら」「もし老後の資金が尽きたら」
こうした、生活の根底を支えるセーフティネットへの不信感こそが不安の根源です。政府が打ち出した「おこめ券」に59%もの反対が集まったのは、それが国民の抱える切実な将来不安に対し、あまりに場当たり的で「的外れ」な施策だと見透かされたからではないでしょうか。
フィンランドに学ぶ「成熟社会」の設計図
フィンランドが幸福なのは、経済成長率が高いからではありません。**「たとえ何が起きても、この社会システムは自分を見捨てない」**という強固な社会契約(セーフティネット)が存在するからです。
- 教育・医療の無償化: どんな状況下でも学びと健康が保障される。
- 失業=不幸ではない設計: 職を失っても生活が即座に崩壊しない手厚い保障。
- 対話による納得感: 負担は重くとも(日本以上の国民負担率)、それがどう自分たちに還元されるかの透明性が高い。
フィンランドは、無理な拡大(成長)を追うのではなく、限られたリソースを**「国民の安心というインフラ」に集中させる「成熟社会」**というビジョンを確立しています。
今こそ、国家ビジョンの転換を
日本が今、本当に必要としているのは、122兆円という「予算の額」でも、高市首相が語る抽象的な「希望」でもありません。
もはや安易な成長を追い求める時代は終わりました。人口が減り、地政学的リスクが常態化する中で私たちが目指すべきは、「成熟社会」への舵切りではないでしょうか。
それは、GDPの数字を競うのではなく、社会の「信頼」の密度を競うこと。 外部の脅威を増税の理由にするだけでなく、その負担に見合う「一生涯の安心」を国民と約束することです。
「たとえ何が起きても大丈夫だ」と思える社会。その信頼の再構築こそが、122兆円という巨額な予算を「死に金」にしない唯一の道ではないでしょうか。
論語でまとめ
賢を見ては斉(ひと)しからんことを思い、不賢を見ては内に自ら省みるなり。(「里仁第四」17)
賢い人を見たら、自分もそのようになろうと努め(同じレベルを目指し)、愚かな人を見たら、自分にも同じような欠点がないか、心の中で反省しなさいと孔子は言いました。
優れた人を羨んだり嫉妬したりするのではなく、目標(ロールモデル)として自分を高める努力をすればよいと孔子はいいます。また、他人の過ちをただ批判したり馬鹿にしたりするのではなく、それを「反面教師」として自分自身の振る舞いを正す材料にすべきともいいます。
直情径行を避け、日本はもっともっと賢くなるべきということなのかもしれません。
「参考文書」
経済安全保障で経済力を強化、日本を世界の真ん中に 小林鷹之自民党政調会長【ECONOSEC JAPAN 2025】:時事ドットコム


