「信頼を損なう事態を引き起こしたのは深く反省している」、「信頼回復が急務」、不正を行った企業のトップがそう語っています。また政治においては、裏金事件が発覚し、首相は不信を招いたと陳謝し、信頼回復に努めるといいます。
企業も企業なら、政治も政治です。自分たちの利益を優先させては、平気で、信頼を裏切っていたといいます。顧客、国民をまるで無視しているかのようです。腰を抜かすほどの驚きです。
煮え切らない釈明…辞任を表明した損保ジャパン親会社の桜田謙悟会長 ビッグモーター不正で顧客の信頼裏切る:東京新聞 TOKYO Web
それにしても、最悪の事態を招いたことに対する原因調査、自己分析が的を得ていないようです。それゆえ、再発防止策も甘々となって不完全なものになっていくのでしょう。これでは、不正が根絶することはなさそうです。いずれ形を変え、違う不正となってまた問題になりそうな気もします。
「仕事は自分のためにやるものではありません。自分以外の誰かのためになってはじめて仕事として世の中と折り合いがつくのです」というのは楠木健氏。自分のためにやることは趣味で、欲もまた同様といいます。
ごく当たり前のこと、常識だと思っていました。しかし、ここ最近の不正を見ていると、そうではなさそうです。
自分の欲を満足させるために、仕事で成果を出す。だから自分以外の誰かのため、他者、社会に役立つことをしなければならない。それが受け入れられれば報酬となり、そそれがいずれ給与などの形となって我が身に返ってくる。健全なこととは思いますが、我が強くなりすぎると、仕事がおろそかになって、誰かのためではなく、自己満足の仕事をするようになってしまう。そうならないようコントロール、自己を律する必要がある。
続く自民党内のゴタゴタ、騒動
自民党裏金事件が尾を引きずっています。党内の騒動が続いているようです。派閥を離反する議員も続出しているようです。
茂木派が解散検討 歴代首相輩出の名門派閥 麻生派は存続意向も [自民]:朝日新聞デジタル
何のための離反なのでしょうか。ただの権力闘争ではなく、それが国民のためへとつながっていくのでしょうか。自分たちの欲が先走って、国民を置いてけぼりにすることがあってはならないはずです。それでは仕事をしていることにはならず、給与泥棒のようなものです。
論語に学ぶ
利に放(よ)りて行えば、怨み多し。(「里仁第四」12)
利害打算だけで行動すると、他者から怨まれることが多くなると、孔子はいいました。
社会のために公利、公益を求めさえすればいいものを、私利私欲に走るから、怨みを買ってしまう。わかってはいるものの、上手に己を欲をコントロールできない。そうなるから、ろくな仕事ができない。仕事ができないからいつまで経っても満足のできる収入を得ることもできずに不満を募らせる。不満を募らせては私欲に走るからいつまでも経っても仕事が身につかない。もう悪循環で、ますます人から怨みを買うだけです。
自民党の政治改革はそんなものではないかと感じます。
仕事というのは自分以外の誰かの役に立つとか、ためになるという意味があって、はじめて仕事になる。「釣り」は趣味だけど、「漁師」は仕事ということです。やっぱり仕事は、お客さまが価値を感じなければ駄目で、しかも供給者はたくさんいるわけですから、相当余人をもって代え難い状態になっていないと駄目だと思うんです。それがスキルだけでは難しい.....(出所:Executive Foresight Online:日立)
こんなあたり前のことを忘れてはいないか心配になります。ついつい楽な方法に逃げては、ズルをしようとするから不正が起きるような気がします。
「参考文書」
楠木建×山口周『仕事ができるとはどういうことか』-その2 スキルのデフレ。 - Executive Foresight Online:日立