物価高の家計負担を緩和する所得減税などを盛り込んだ総額17兆円台前半規模の経済対策が閣議決定されました。首相は記者会見で内容を説明、「デフレ脱却の瀬戸際だ。今回のチャンスを逃せば難しくなる。確実に可処分所得を伸ばし、消費拡大につなげ、好循環を実現する」と述べました。
フラフラする発言内容を総括したというところでしょうか。背水の陣で挑むとの印象ですが、自らの発言でそうせざるを得なくなっただけなのに少々大袈裟なような気もします。
増税メガネと揶揄され、偽装減税、税金操作による選挙対策など様々な疑念がかけられていましたが、その解消にはなっていないようです。
専門家たちの評価もすこぶる悪いようです。「減税・給付金に大義はあるか」と指摘する専門家もいます。
「今回の総合経済対策は、以前からの政府の経済運営、財政政策が持っている問題点を、まとめて一気に露呈させたようにも感じられる。将来に大きな課題を残した経済対策となったのではないか」と厳しく評価しています。
今回の経済対策は、国民受けを狙って、総花的でバラマキ的な性格が見られる。春の骨太の方針では、コロナ下で増加してしまった歳出を、平時に戻す「正常化」が謳われた。しかし、今回の経済対策は、そうした方針を短期間で反故にするようにも見える。また、基金を多用することで、対策規模を大きくする狙いも感じられるが、国会、国民の監視が行き届きにくい基金の活用は、重要な国民の税金の無駄使いにつながりかねない。(出所:野村総合研究所)
「まず経済活性化という順番を理解してもらいたい」と首相はいいますが、いやらしい魂胆を見透かされたようです。危機的状況がさらにさらに悪化しかねない事態なのでしょうか。
論語に学ぶ
樊遅(はんち)知を問う。子曰わく、民の義を務め、鬼神を敬して之を遠ざくれば、知と謂(い)う可し、と。仁を問う。曰わく、仁とは、難きを先にし獲るを後にす。仁と謂う可し、と(「雍也第六」22)
出来の悪い弟子の樊遅が、「知」とは何ですかと質問した。孔子は「民としてあるべき規範を身につけるように努力し、鬼神に敬意は払うが密着しない。そうであれば「知」と言える」と答えます。樊遅は、さらに「仁」とは何ですかと質問します。孔子は「難きを先にし獲るを後にする」、それが「仁」と教え諭しました。
首相が、出来が悪くも勇士と称えられた樊遅にだぶります。
「知」「仁」の意味もわからないのかもしれません。それ故、支持率改善のため、自分の保身だけに無謀な「勇」を振り絞って、「自分が信じることを決断し、実行していく姿勢はこれからも大事にしたい」と語ってしまうのでしょうか。
「政権浮揚に向け自ら放った切り札で、岸田文雄首相が窮地に追い込まれつつある」、「足元の自民党内からも異論が相次ぐ。正面突破を図る構えの首相に対し、党内の視線は冷ややか」、そんな論調の報道も増えているようです。
「ぶれたら終わり」背水の岸田首相 減税策で孤立、にじむ「末期感」 [岸田政権] [自民]:朝日新聞デジタル
減税は首相がこだわっており、ベテランは「もう後には引けない」とこぼし、ある中堅議員は「首相が結果責任を取るしかない」と突き放した。(出所:時事ドットコム)
2025年に大阪夢洲で開催予定の大阪・関西万博の会場建設費について、政府が当初予定の1.9倍にあたる2350億円への増額案を受け入れる方針を表明したといいます。
政府、万博建設費1.9倍増受け入れ 2度目の増額で2350億円に:朝日新聞デジタル
コストカットなどには踏み込まず、実質的に「丸のみ」となった。(出所:朝日新聞)
止まらない暴走機関車になっていないでしょうか。こうして自ら政権浮揚のチャンスをつぶして、崖っぷちへと追い込まれていくように見えます。
「うまくいけば儲けもの」、へぼな投資家ような行動ではなく、もう少しコンサバ、保守的に考えて頂きたいものです。
「参考文書」
所得減税、岸田首相説得力欠く 自民に不満「結果責任取って」:時事ドットコム
立憲民主党・長妻昭政調会長、岸田首相の「消費税減税」発言に苦言 - 日本経済新聞
岸田首相記者会見 “増税メガネ”承知 解散・総選挙「考えていない」 | NHK | 物価高騰