同性婚の法制化に関し、首相が国会で「極めて慎重に検討すべき課題だ」と述べ、否定的な考えを示したといいます。その理由として、「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題」と強調したそうです。
首相、同性婚に否定的な考え 「社会が変わってしまう」 | 共同通信
結婚の自由を願うLGBTなど性的少数者の求めに応じれば、固定観念を重視する層の反発を招きかねないとの認識があるようだと記事は指摘します。
首相の認識のズレに反発が強まっているといいます。立憲民主党の安住国会対策委員長は「すでに社会、世界の意識は変わっている。古い制度に固執するから社会がおかしくなっている」と批判しているといいます。実際、多くの自治体が同性パートナーシップを公証する制度をもっている現実もあるそうです。
保守
「伝統的な価値観を守る自分の姿勢を、自民党を支える保守層に説明しているつもりなら、相当ズレていると思わざるをえません」との批判の声もあります。
岸田首相、同性婚は「社会が変わってしまう」発言に「日本社会を30年逆行させる」識者が一刀両断 | Smart FLASH/スマフラ[光文社週刊誌]
伝統的なものを守って、新しい価値観を否定するのが保守政治ではないと記事は断じ、「本当の保守というのは、基本を守りながら、なにを維持して、なにを変えていくか常に考えていくもの」と指摘します。
英国の保守党では、女性首相を選出し、外国にルーツに持つインド系首相が誕生させているといいます。
首相が守ろうとする「家族観」や「価値観」、「社会」とは一体どういものなのでしょうか。カタチや形態、形式などは時代によって変化し続けるものです。それを墨守すれば、尚古主義となり、常に時代遅れになりかねません。
外遊に行ったらお土産を買うもので、それが『公務』だ、なんていう主張も、田中角栄元首相がやりはじめた1970年代の、海外になかなか行けない時代の発想です。それをいまでもやっているのは、慣例を守っているのではなく、進歩がないだけです。 (出所:Smart FLASH)
「尚古」とは、昔の文物・制度を貴び、昔は良い時代だったとあこがれることを指します。
日本の停滞ももしかしたら、古き良き時代に憧れるばかりで、しくみや秩序を今に適合するよう調整しないことにあるのかもしれません。
論語に学ぶ
論語においても、家族、家庭を最小コミュニティとして重んじ、そこから秩序なり、道徳が生まれるとします。
ただ論語においては家族のカタチがこうあるべきとの言葉はありません。子が、生を授けてくれた親に感謝し、「孝」を尽くせと説きます。
父母の年、知らざる可(べ)からず。一(ある)いは則ち以て喜び、一いは則ち以て懼(おそ)る。(「里仁第四」21)
父母の年齢は、覚えていなくてはなりません。長命だなと喜べるし、あるいは老いたなと気遣うこととなると意味します。
孔子自身は父を知らず、また幼くして母と分かれたとされています。それ故に、「孝子(こうし)」の真情を簡潔に表現しえるのではないかといいます。
こうした境遇にあった孔子が説く「孝」は、家族同様にカタチではなく、親を大切にしなさいといいます。そうすれば、自然に孝の形も整い、それが礼やモラルの礎になっていくといっているようです。
また、「論語」には男女の恋愛に対する記述はほとんどありません。それが自由な恋愛を認めているのかは不明ですが、いずれにせよ「仁」人間愛を重んじ、いかなる立場にある人にも 「仁」を尽くせと説きます。
守るべきは、カタチや形式ではないのでしょう。時代と共にカタチは形骸化したりします。また、歴史を振り返れば、こうしたカタチは時代と共に変化していること知ることもできます。これは孔子も指摘するところです。それ故だからなのでしょうか、学び、考えることの重要性を説いています。
「参考文書」
同性婚「社会変わってしまう」 首相発言に専門家「差別肯定と同じ」:朝日新聞デジタル