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【首相秘書官の更迭劇】「多様性」とは何なのか、気になる首相の言動不一致と思考停止

 

 同性婚について差別発言した荒井首相秘書官が更迭されました。「多様性を尊重し包摂的な社会を実現していく内閣の考え方にはまったくそぐわない。言語道断だ」との理由を首相は説明したといいます。

岸田首相、荒井秘書官を更迭 同性婚巡り差別発言: 日本経済新聞

 その首相は1日の国会で、同性婚について言及し、「制度を改正するとなると、家族観や価値観、社会が変わってしまう課題」と述べていました。どうにも首相の言動が一致していないように感じてなりません。

 

 

 首相が述べる「多様性を尊重し包摂的な社会を実現」とは一体何を指すのでしょうか。

「多様性」「包摂的」という言葉をどういう意味で使っているのか気になります。

言葉

 その言葉の意味を知らないのに、人はなんとなくわかったような気になって、思考停止してしまうことがあるといいます。

たとえば、デジタルトランスフォーメーション(DX:ITによる変革)とかSDGs(持続可能な開発目標)とか言われて、実際は何も知らないのに、なんとなくわかったような気になってしまう。あるいは「それはフェイクニュースだ」と言うことで議論に勝った気になり、その先は何も考えない。考える道具として役立つ言葉が、思考停止の道具になってしまっています。(出所:PHPオンライン衆知)

DXやSDGsを正しく理解してるか? 「言葉ばかりに捉われる現代人」へ養老孟司の問い | PHPオンライン衆知|PHP研究所

 記事によれば、養老孟司氏は、「近年は軽々しい言葉があふれかえるようになり、その言葉だけに捉われていると、言葉で表されない大切なものを見逃してしまうことになりかねない」と述べています。

 首相も世相をくみ取り、「多様性を尊重し包摂的な社会を実現」とは言ったものの、言葉で表現されていない社会の実態を理解できずに、ただ言葉を使っているだけのようにも見えてしまいます。

 

 

論語に学ぶ

君子は其の知らざる所に於いては、蓋(けだ)し闕如(けつじょ)たり。名正しからざれば、則ち言順(げんじゅん)ならず。言順ならざれば、則ち事成らず、事成らざれば、則ち礼楽(れいがく)興(おこ)らず。礼楽興らざれば、則ち刑罰 中(あ)たらず。刑罰 中たらざれば、則ち民 手足を錯(お)く所無し。故に君子 之を名づくれば、必ず言う可し。之を言えば、必ず行う可し。君子は其の言に於いて、苟(いやしく)もする所 無きのみ、と。(「子路第十三」3)

 君子 教養人たる者は、自分が知らないことについては、知らないままにすることだ。名(文字、記号)が正しくなければ、言(言葉や論理)が妥当でない。言が妥当でないと、政治が達成されない。政治が達成されないと、礼楽(規範や道徳)が盛んとならなくなる。礼楽が盛んにならないと、むやみに処罰するばかりで行き過ぎとなり、刑罰が当を得なくなる。刑罰が当を得なくなると、民には不安でゆっくり手足を伸ばして安らかに暮らすことができなくなる。

 だからこそ、君子 教養人は、正しく名づければ、主張(言)の筋を通すことができ、それができると政治が機能し、道徳が守られ妥当な刑罰を行うことができるようになる。それ故、君子はその発言においては、軽はずみがあってはならないと意味します。

dsupplying.hatenadiary.jp

 「言葉を知らずしては、政治は成立せず、規範や道徳が乱れ、むやみに処罰ばかりとなって、国民みなが不安を感じるようになる」、首相にも知って欲しい孔子の言葉です。

 

 

追求

 野党も事態を重く受け止めたのでしょうか。国会でこの問題を追及するそうです。

首相秘書官の差別発言「包摂とほど遠い官邸の空気」 立憲・泉代表 [立憲] [岸田政権]:朝日新聞デジタル

首相には「包摂」や「多様性」が何を指すのか、明快に答弁してもらいたい。(出所:朝日新聞

 さて、首相はどんな答弁をするのでしょうか。