「台湾有事は絵空事ではない。野党の無責任な安全保障政策にはこれまで以上に厳しい目が注がれる」と日本経済新聞が主張し、野党各党が示す安保政策が政権交代可能な政党になりうるかの試金石となるといいます。
立憲民主党、「反撃能力」容認で検討 維新・国民に続き: 日本経済新聞
記事によれば、立憲民主党が、責任政党として現実的な政策を示す狙いから、相手のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」の容認を検討するといいます。
前のめりになる政府と与党が仕掛ける「反撃能力」を起点にして、論理展開、政策展開したら、相手の思う壺になってしまわないでしょうか。
「反撃能力」で真に抑止が可能なのか、また「反撃能力」を持つことの負の側面を十二分に検討すべきはずです。メディアを含め、みなが前のめりになったら取返しのつかないことになりかねません。
仮に相反する意見であったとしても、目指す方向を見失わず、その時々にあった最善の選択を取り得るよう議論を尽くし、互いの妥協点を見出さなけれならない問題なのでしょう。大切なことはぶれない理念、そして、議論して解決策を見出す姿勢にあると思われます。
平和を堅持する責任政党があって然るべきなような気がします。台湾有事論は絵空事だったに言えるようにしなければなりません。日本は地理的に不利な立場にあるのですから。
一方、「防衛力強化に道筋を付けた首相としてレガシー(政治的遺産)にしようとしている」、ある経済官庁幹部がその見ているとJIJI.comはいいます。首相官邸関係者は「決断力を示すことは内閣支持率の回復につながる」と期待を込めて語っているといいます。
「年内決着」明言、岸田首相にリスク 防衛財源、増税へ自民の反対強く:時事ドットコム
思い出してみれば、首相が防衛費などを2027年度にGDP 国内総生産比2%とする方針を伝え、首相の強い意向で、その財源の年内決着の指示があったといいます。
安倍晋三元首相は生前、国債発行で賄うべきだとの見解を示していた。同氏亡き後、安倍派は会長空席のまま主要幹部が主導権を争っており、「安倍氏の遺志に沿おうとしているのでは」(閣僚経験者)との見方もある。同意の取り付けへ安倍氏一人と話をつければよかったかつての状況と異なる。(出所:JIJI.com)
動機不純な防衛費増額議論のように見えます。真剣に国の未来を考えての議論になっているのでしょうか。よくよく注意深く議論していかねばならないのでしょう。
論語に学ぶ
君子に三畏(さんい)有り。天命を畏(おそ)れ、大人(たいじん)を畏れ、聖人の言を畏る。小人は天命を知らざれば、畏れず。大人に狎(な)れ、聖人の言を侮る。(「季氏第十六」8)
君子 教養人が畏れ慎むものに三つある。天命を畏れ、聖人を畏れ、「聖人」のことばを畏れる。小人 知識人は天命を理解しないのでそれを畏れない。狎れ狎れ(なれなれ)しく聖人を自分と同程度と思っている。また、「聖人」のことばを軽んじ侮っていると意味します。
天命なるものがあるとすれば、どんなことなのでしょうか。
「天命」、天のめぐりあわせ、東アジアの端に位置する弱小国日本は外囲の脅威に軍事で対抗するのが宿命なのでしょうか。それとも敗戦から学び得た智慧から、この地域の安定を目指す運命にあるのでしょうか。
司馬遼太郎の「坂の上の雲」では、明治期における若者たちの高揚感とともに戦争に突き進む当時の日本が描かれています。
当時の中国「清」は極東最大の大国として存在し、日本にとっては西洋列強と並ぶ脅威であったといいます。その清が朝鮮半島に駐留を目論み、これに危機感を抱いた日本政府が派兵し日清戦争に始まります。この時も清が朝鮮半島を支配下に置かれれば、日本は玄界灘を隔てるのみとなって、その脅威に向き合わなければならなくなるという危機感を作り出し、それが口実となったといわれます。
もうそんな時代ではないのでしょう。次の時代に向けて、新たな天命のもと前に進むときのような気がします。