兵庫県尼崎市が、市民46万人余りの個人情報が入ったUSBメモリーを紛失したと発表しました。驚くニュースです。尼崎市は大阪のITサービス会社に業務委託していたといいます。NHKによれば、USBメモリーを紛失したのは関係先の企業の従業員で、帰宅する途中で飲酒し、路上で寝てしまったといいます。
全市民46万人余の個人情報入ったUSBを紛失 兵庫 尼崎市が発表 | NHK
会見で会社の担当者は「市民のデータを運ぶ際に、具体的な手段について市から事前に許可を得ず、また、本来であれば電子記録媒体はセキュリティ便などを使用するべきところを、徹底していなかった。センシティブな情報は作業が終わったあとにその場で消去するというルールも守られていなかった」などと説明しました。(出所:NHK)
「チェックリストを作って確認していれば、今回の事態は防げたのではないか」と指摘する専門家の意見をNHKは紹介していますが、それ以前の問題のようにも感じてしまいます。このような管理しかできない企業に業務委託できたものかと、尼崎市の日々の業務に落胆すると同時に、業務委託を受けた企業の個人情報に対する自覚のなさに驚くばかりです。
広島では弁護士が「持続化給付金」などをだまし取って逮捕されたそうです。愕然とします。この国の規範意識、モラルが劣化が気がかりです。
国の宰相は、選挙戦で「節電ポイント」について言及し、「岸田ポイント」と揶揄されているといいます。野党も一斉に批判し、「やめた方がいいと思います。ポイント還元するなら、税の還付か現金給付してください。また、そもそも今政府がやるべきは、節電のお願いではなく、電力の安定供給の確保では」と、国民民主党の玉木代表が述べたといいます。
お国がポイント付与という手法をとるのは如何なのでしょうか。ポイントの財源は税金なのですから。そんな煩わしい方法に頼らなくても、直接的に語り、問題を根本的なところから対策していくべきなのでしょう。
論語に学ぶ
訟(うった)えを聴くは、吾猶人のごとし。必ずや訟え無から使(し)めんか。(「顔淵第十二」13)
「訴えを処理する能力は、私は他人と同じだ。訴えを起こすことが無いようにすること」と孔子はいいました。
非難されたり、批判されたり、それを処理するのなら、はなから批判されるようなことをせずにいれば済むことです。国が手段を選ばずに国民の関心を得ることばかり専念し、問題の解決は他者に丸投げしているかのように見えてしまうから、それを模倣する輩が増えるのかもしれません。
苟(いやし)くも其の身を正しくせば、政に従うに於いて何か有らん。其の身を正しくする能(あた)わずして、人を正すを如何せん。(「子路第十三」13)
「もし為政者自分自身を正しくしたならば、行政はたやすいものだ。自分自身を正しくすることができないで、人々をどのようにして正そうとするのか」。
単純なことのようですが、近頃の社会を見れば、極めて困難なことということなのかもしれません。
弟子の子貢が「政」を孔子に問いました。「食を足らし、兵を足らし、民 之を信ず」と孔子は答えます。すると、子貢は「必ず已(や)むを得ずして去らば、斯(こ)の三者に於いて、何をか先きにせん」と質問を続けます。孔子は「兵を去らん」といいます。さらに子貢は「必ず已むを得ずして去らば、斯の二者に於いて、何をか先きにせん」と聞きます。孔子は「食を去らん。古(いにしえ)自(よ)り皆死有り。民 信ずる無くんば立たず」といったそうです(「顔淵第十二」7)。
為政者の心構えを子貢が質問し、孔子は「民の生活の安定、十分な軍備、そして政権への信頼である」と答えます。すると子貢は「三者のうち、どうしても棄てなければならないとしましたならば、まずどれでしょうか」と質問し、孔子は「軍備だ」と答えます。子貢はさらに「では残った二者のうち、どうしても棄てなければならないときは、どれでしょうか」と質問します。孔子は「生活だ。古来、人間はいつか必ず死ぬ。もし為政者への信頼がなければ、国家も人も立ち行かないのだ」と教えました。
☆
今回の選挙の争点は、物価対策、安全保障、憲法改正などといいます。孔子の教えに従って考えて欲しいものです。そればかりでなく、「信」に値しない人たちが憲法論議などできるのでしょうか。優先順位を違えて欲しくないものです。
「参考文書」
持続化給付金など詐欺容疑で逮捕の弁護士 先月には懲戒処分 | NHK | 事件
政府の「節電ポイント」 野党が批判 論点の一つに [参院選2022] [立憲] [公明] [維新] [国民]:朝日新聞デジタル
岸田首相「節電ポイント」還元月数十円…ネット民「意味ある?」参院選公示で第一声― スポニチ Sponichi Annex 社会