競争社会である以上、企業においては競合の情報を得ようとするのは当然のことなのかもしれません。現実、幾多の調査会社があり、また、コンサルティング会社もあって、情報提供することでビジネスが成立します。
現実か否かは別にして、不確実性の時代といわれるようになって、企業競争が激化しているのでしょうか。瑣末なことを大きくして、それをもとに競争を煽って、自らの商売にする動きがあっても不思議ではないような気もします。
コンサルティング大手のデロイトトーマツコンサルティングが、契約していたイオンの秘密情報を漏洩したといいます。それもこともあろうに漏洩先は競合のセブン&アイ・ホールディングスといいます。
デロイトトーマツコンサルティングは、この件について謝罪しました。
本事案は、当該コンサルティング業務において守秘義務に対する基本的認識の欠如ならびに社内ルールを逸脱した行為があり、その結果として、イオン社様とのコンサルティング契約におけるはに違反したことに起因するものでありました。(出所:デロイトトーマツ)
漏洩した機密情報はDX戦略に関するものだったそうで、「週刊ダイヤモンド2022年2月12日号『特集 セブン DX敗戦』」にも掲載されていたといいます。
【スクープ】セブン&アイが宿敵イオンのDX戦略をベタ褒め!?抵抗勢力「DX部門解体」の策略 | セブンDX敗戦 | ダイヤモンド・オンライン
ITmediaビジネスオンラインによれば、イオンは週刊ダイヤモンドへの秘密情報の掲載を受けて、デロイトトーマツコンサルティングに調査を申し入れたそうです。その結果、秘密情報を含むDX戦略に関する内部資料の一部を、イオンの了承なくセブン&アイHDの会議資料として提供していた事実が発覚したといいます。
コンサルティング会社としてあるまじき行為ではないでしょうか。これが、企業にとって最善のコンサルティングなのでしょうか。
論語に学ぶ
郷原(きょうげん)は徳の賊なり。(「陽貨第十七」11)
「郷原」は、 善良を装って、郷里の好評を得ようとする小人。 にせの道徳家。 偽君子。「原」には、へつらって寛大なこととの意味があり、「八方美人の者の言動は、道徳にとって害になる」と意味します。
委託元の好評を得たいばかりに、守秘義務があることを失念してしまったのでしょうか。デロイトトーマツが社内において、どのような情報管理を行っていたか、気になります。さすがに、セブンアンドアイもイオンも同じグループで業務を受託するようなことはないとは思いたいのですが。
弊社は本事案を真摯に反省し、全社一丸となって再発防止策としての情報管理体制の抜本的強化はもちろん、本事案の発生の原因となった風土と仕組み、またガバナンスについて改革を行ってまいります。(出所:デロイトトーマツ)
それにしても、少々驚く原因と再発防止策です。
国や企業に多くのコンサルティングやシンクタンクが蔓延っているように感じています。ある事象の調査を行ったり、それの結果をもとにした適正な助言を行うことは善いこともかもしれませんが、必要以上に傾斜していくと、弊害もあるのではないかと危惧します。みなが同じパターンで思考するようになって、多様な意見が存在しなくなりそうです。
コンサルティングの意見が常に最善ということはないのでしょう。データに依拠した意見かもしれませんが、あくまでも個人的見解のような気がします。まして、守るべきことを守れない人が主張することは信用に値するのでしょうか。
「参考文書」
イオンの秘密情報をセブン&アイに「会議資料として提供」 デロイトトーマツコンサルティングが謝罪:週刊ダイヤモンドにも掲載 - ITmedia ビジネスオンライン
デロイト トーマツ コンサルティングでのお客様情報の漏洩について