多少の問題を抱えつつも、その解決に勤しみ、それらを何とかコントロールしようと努力する、そんなときを平時と言っていいのかもしれない。コントロールできないことが増えれば、不安は増し、心配は絶えない。平時において苦労している方が実りにつながり、努力する甲斐もあるのかもしれない。
米国の株式市場が乱高下している。FRB 米連邦準備理事会がインフレ退治のため、利上げを加速させ、政策を引き締めると、様々な憶測、予測が飛び交う。これに中国の長引くコロナ禍、ロシア問題、コントロールできない外乱がさらに心理を悪化させている。景気後退の懸念が日に日に高まっているという。
日米の金利差による円安の進展の懸念が払拭できていない。円が140円まで下落するようであれば、日本政府は一段の円安に歯止めをかけようと為替介入する可能性があると米銀のバンク・オブ・アメリカ(BofA)がみているとブルームバーグが報じる。
日本政府、1ドル=140円なら13兆円投じ円安進行阻止も-BofA - Bloomberg
日本銀行が円安によるプラスの経済効果を強調しているにもかかわらず、家計や中小企業など円安で打撃を受ける公算の大きいセクターは円安の恩恵にあずかるセクターよりもはるかに多いとも指摘した。(出所:ブルームバーグ)
円安で恩恵を授かる人がいる一方で、円安で苦しむ人々もいる。苦しみは不安を助長させ、不満につながるかもしれない。恩恵を授かる人がその不満解消に率先して努めればいいのだろうが、その効果はすぐに期待できそうにもない。
ブルームバーグによれば、BofAは2日時点で135円を超えるドル高・円安は見込んでいないという。円の下落ペースが鈍ることはあるのだろうか。
論語に学ぶ
篤く信じて学を好み、死を守りて道を善くし、危邦(きほう)には入らず、乱邦(らんぽう)には居(お)らず。天下 道有らば、則ち見(あら)われ、道無くんば則ち隠る。邦に道有りて、貧にして且つ賤(いや)しきは、恥なり。邦に道無くして、富み且つ貴きは、恥なり。(「泰伯第八」13)
「堅く人の道を信じ、学問を好み、たとい死に至ろうと節操を守って人の道を貫き、乱れようとしている国には入らず、乱れている国は去る。世の中が人の道を履(ふ)んでいるならば、そこで働き、人の道にはずれているならば退いて暮らす。国に人の道が行われているとき、貧賤であるのは恥である。国に人の道が行われていない危邦、乱邦であるとき、富貴であるのは恥である」と意味する。
「邦に道無くして、富み且つ貴きは、恥なり」と孔子は言いきる。この乱れた世界で、利益ばかりを考えることは賤しいということであろうか。そうであるのなら、日銀や政府の対応にはやはり疑問符がつく。
「死して後已む」、生命のあるうちは操守をかたくして日々精進する。しかし、自分の信じるところを守り、これを社会にひろめ、人民のためをはかるためには、身の処し方は十分慎重にして配慮することが必要だとするのである。(引用:「論語」桑原武夫)
一方、孔子が「道義が支配している国において貧賤なのは「恥なり」とまで言い切るのは注目である」と、桑原武夫は指摘する。
「欲望を肯定し、その充足が知識人にも当然許されるべきとする、現世的オプチミズムがはっきり出ている」という。
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今しばらくはこの状態が続くことになるのだろう。米国のインフレも、中国のコロナもまだ先は見通せそうにない。まずは週明け株価はどう動き、またプーチン大統領が何を発言するかにも依るのだろうか。いずれにせよ、きびしい時もやり過ごしていくしかない。すべてを時が解決することもある。
子 魯の大師に楽を語(つ)げて曰わく、楽は其れ知る可(べ)きなり。始め作(おこ)すや、翕如(きゅうじょ)たり。之を従(はな)って、純如(じゅんじょ)たり、皦如(きょうじょ)たり、繹如(えきじょ)たり。以て成る、と。(「八佾第三」23)
孔子が魯国の音楽長官に音楽とは何かを主張したという。「音楽とは、別に難しいものではない。演奏し始めると、音色が集合して調子が合う。そこで各音の調子を暢(の)ばすと、各音それぞれ本来の音色が大きく現われるが調和を保つ。さらには音声が明瞭となる。各音を連続させつないでゆく。こういう風にして完奏するのだ」。
音楽のように、それぞれの音色が調和する世界になって欲しいものだ。
「参考文書」
FOMC後に揺れた世界の金融市場、中国リスクにも警戒強まる - Bloomberg