「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

基本給を上げる米アマゾン、努力は報われることのない日本なのか

 

 米アマゾンドットコムが、事務職や技術職などを対象にした社員の基本給を年35万ドル(約4000万円)に引き上げるといいます。米国労働市場で需給が逼迫、採用競争力を高め、他社への人材流出に歯止めをかけるといいます。

 一方、日本では警備会社大手のALSOKの元社員が、顧客の売上金など約2900万円を着服したとして、業務上横領の疑いで逮捕されたといいます。

ALSOK元社員、数億円着服か 愛知県警、被害の全容調査 | 共同通信

 容疑者は、現金輸送などの請負契約を結ぶパチンコ店やスーパーといった顧客から回収した売上金を管理する資金管理部門の責任者を務めていたそうで、1年近くにわたって同様の犯行を繰り返し、計約数億円を横領していたとみられるそうです。

 現金輸送などを手がける大手警備会社の犯行に驚きます。責任者を務めた容疑者の動機は何だったのでしょうか。

 

 

論語に学ぶ

子 仲弓(ちゅうきゅう)に謂いて曰わく、犁牛(りぎゅう)の子も騂(あか)く且つ角あらば、用うる勿(なか)らんと欲すと雖(いえど)も、山川其れ諸(これ)を舎(す)てんや、と。(「雍也第六」6)

 「仲弓」、冉雍のあざなで、天子や大名になる資格があるとまで賞められた人物だが、出身が賤しいうえに、父親の行ないがよくなかったといわれます。

 孔子は人間を評価するのに、その出身によるべきではなく、本人の徳行と才能によらねばならないと考えていたので、「牛」にたとえて彼を評価したといいます。

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「犁牛」とは農耕用のまだら牛のこと。ふつう山川を祭るさいの犠牲としては特に飼育された赤牛が用いられるのだが、たとえつまらぬまだら牛の子であっても、その毛色が赤く、形の正しい角を持っていたならば、これを用うべきであって、もし人間がこの子牛を無視して犠牲に使うまいとしても、山川が捨てはしない、見捨てておくはずがない、といったのである。(引用:論語 桑原武夫

 孔子が仲弓の人柄のよさを指摘した章であるといわれています。人柄とは、ひととなりのことで、人の品格や性格のことをいいます。ひととなりが良ければ、上に立ち、人を指導できる立場に値するということなのでしょう。そして、そのひととなりは育むこともできるもののはずです。

孔子は、「もし暗君があくまで彼を採用しまいとしたら、山川(神々)のほうでほっておかない」といいます。実際、仲弓は魯の国の実力者の季氏の宰相を務めた人物で、当時のこと、出身も賤しく、ややもすれば、批判されがちな立場にあったので、それを孔子が擁護したのではないかといいます。

 

 

 そもそも責任ある立場には、専門的な知識はもちろんのこと、それに加え、人柄のよさも求められているのでしょう。ALSOKで起きた事件も、責任者にこうした資質があれば、防ぐことはできたのでしょうか。また、一方で、その職務に見合う報酬が用意されていれば、このような事件に発展することはなかったのでしょうか。

 米アマゾンにように、従業員の努力に報いるために、それ相応の報酬が支払われるようになればいいのでしょう。そうならなければ、ならないのでしょう。