「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

テレビ朝日の社長辞任劇、見境のない公私混同ぶり

 

 テレビ朝日の亀山慶二代表取締役社長が辞任した。

 報道によれば、昨年8月以降、東京五輪番組スタッフが飲酒を伴う宴会後に負傷するなど、スポーツ局の社員による不祥事が連続して発覚したことについて、業務監査・検証委員会が調査した結果、スポーツ局統括でもある亀山氏とスポーツ局長との意思疎通の欠如、不適正な伝票処理による会社経費の私的利用などが発覚したという。

テレビ朝日・亀山慶二社長が辞任 会食・ゴルフなど経費の私的使用 : スポーツ報知

 スポーツ報知によれば、不適切な伝票処理以外にも、社長として不適切で業務遂行に支障をきたすおそれのある行為が確認され、取締役の善管注意義務に照らして問題視せざるを得ないものがあったという。

検証委員会は「放送事業という公益性の高い事業を営む当社社長には高い倫理観が求められる」とし、スポーツ局内の指揮命令系統を混乱させた行為のうえ、不適切な行為に及んだことは「スポーツ局内の規律を著しく弛緩させるものであって、続発したスポーツ局内での不祥事の遠因となった」と厳しく評価した。(出所:スポーツ報知)

 

 

論語に学ぶ

 定公問う、君臣を使い、臣君に事(つか)うること、之を如何、と。孔子対(こた)えて曰わく、君は臣を使うに礼を以てし、臣は君に事(つか)うるに忠を以てす、と。(「八佾第三」19)

「定公」、魯の君主で、孔子を大臣に抜擢したといわれる。

 その定公が、礼を失っていた臣下を憂いてこの問いを発したと解される。

  伊藤仁斎は、「君主として無礼だと臣下を失い、臣下に誠意がないと身が殺される」と読んでいるが、テレ朝の社長のことを言っているように感じてしまう。

 また、「君に事(つか)うるに礼を尽くせば、人以て諂(へつら)いと為す」(「八佾第三」18)という。

 孔子がこの言葉を発した当時は下克上の時代であって、魯の国では重臣らが横暴を働き、礼法が乱れ、崩壊過程に入っていたという。孔子はそうしたときにあっても、上下の秩序を尊び古来の礼法を完全履行することによって君臣の正しい関係を守ろうとした。ところが阿諛(あゆ:おべっかをつかうこと)と罵られたのは、それが古めかしく固苦しいと感じられたからというより、横暴を働く重臣一派派に属する連中が、政争の一手段として嫌がらせしたのだろうと桑原武夫は推測し、善意の行為も悪意の誹謗を免れないという。

 

 

 テレ朝で起きたことが現代社会の縮図のようなことではあって欲しくないが、はたしてどうなのだろうか。規範を守り、まずは率先して倫理を示すべき立場にある人が、率先して悪事を働くようでは会社ばかりでなく、国も衰退の一途をたどることになりかねない。